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ホーム > 森林・林業白書 > 平成23年度 森林・林業白書(平成24年4月27日公表) > 平成23年度 森林・林業白書 全文(HTML版) > 第1部 第I章 第3節 復旧・復興に向けた森林・林業・木材産業の取組(2)


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第1部 第I章 第3節 復旧・復興に向けた森林・林業・木材産業の取組(2)

(ウ)エネルギー安定供給に向けた木質バイオマスの活用

(a)これまでの動き 

(電力供給力が低下)

東日本大震災では、東京電力福島第一原子力発電所での事故や、地震・津波による火力発電所、水力発電所、変電所、送電設備等の被災により、関東地方を中心に、電力の供給が大きく不足する事態が生じた。このため、平成23(2011)年3月14日から、関東地方と東北地方において、一定地域ごとに電力供給を順次停止・再開する「計画停電」が実施された。

また、同7月からは「電気事業法」に基づく電気の使用制限(*81)が実施された。この使用制限では、東京電力、東北電力等と直接需給契約を締結している大口需要家(契約電力500kW 以上)を対象として、同7月1日から、前年の同期間・時間帯における使用最大電力の値(1時間単位)から15%削減した値を使用電力の上限とすることとされた。

これらの措置と自主的な節電の取組により、平成23(2011)年の夏期には、不測の大規模停電の発生は回避された。しかしながら、定期検査に入った各地の原子力発電所が再起動しなかったことから、それ以降も、電力供給力は低下した状態に置かれた。

このような中、同7月に、政府が策定した「東日本大震災からの復興の基本方針」では、震災からの復興に当たって、バイオマスを含む再生可能エネルギーの導入促進を図ることとされた。平成23(2011)年8月には、電気事業者に対して、再生可能エネルギー源を用いて発電された電気を一定の期間・価格で買い取ることを義務付ける「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」が成立した(*82)。



(*81)電力需給緊急対策本部「夏期の電力需給対策について」(平成23(2011)年5月13日)

(*82)「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」については、第V章(164ページ)参照。



(大量の災害廃棄物が発生) 

今回の震災では、地震と津波により、多くの建築物や構造物が破壊され、木くずやコンクリートくず、金属くず等の災害廃棄物(がれき)が大量に発生した。災害廃棄物の発生量は、岩手県、宮城県及び福島県の3県合計で、約2,250万トンに達すると推計されている。このうち、600万トン以上が宮城県石巻市(いしのまきし)で発生している(図I-14)。

これらの災害廃棄物のうち、木質系災害廃棄物の割合は40〜75%で、ボード原料として再利用できる木質系災害廃棄物の潜在量は55〜105万トン、製紙原料等に利用可能な流木等も含めると再利用可能な量は合計約300万トンとする推計もある(*83)。

これらの災害廃棄物の処理については、環境省が平成23(2011)年5月に「東日本大震災に係る災害廃棄物の処理方針(マスタープラン)」を策定した。同方針では、生活環境に支障が生じ得る災害廃棄物は同8月末までに、それ以外は平成24(2012)年3月末までに、仮置場に移動した上、廃棄物の特性に応じて、中間処理・最終処分を行うこととされた。

木質系災害廃棄物については、木質ボードやボイラー燃料、発電等に利用することが期待できるとされた。

これを受けて、林野庁では、平成23(2011)年度第1次補正予算により、がれき処理円滑化のため、木材加工・流通施設への木材破砕機の導入に対する支援を行い、岩手県、宮城県、山形県及び福島県の計9か所において、木材破砕機が導入された。

また、平成23(2011)年7月には、宮城県石巻市(いしのまきし)の木材加工工場で、木質系災害廃棄物の受入れが始まり、パーティクルボードの原料又はボイラーの燃料として利用されることとなった。また、同市の製紙工場でも、同8月から、ボイラーの燃料として、がれきの受入れを開始した。

さらに、山形県村山市(むらやまし)等被災県以外に所在するバイオマス発電所等でも、発電用燃料等として、がれきの受入れが進められている(*84)。



(*83)特定非営利活動法人全国木材資源リサイクル協会連合会 (2011) 東日本大震災における災害木くず運用の提案(平成23年6月).

(*84)平成23(2011)年8月17日付け朝日新聞29面、同8月18日付け日本農業新聞15面。



(木質系災害廃棄物のエネルギー利用を推進) 

林野庁では、平成23(2011)年6月に、震災復興や電力の安定供給の観点から、木質系災害廃棄物の活用と森林資源を活かしたエネルギー供給体制の構築について検討を行うため、「木質バイオマスのエネルギー利用に関する検討会」を開催した。同検討会は、木質バイオマスのエネルギー利用に取り組む企業・団体等を委員として、木質バイオマス等を活用した発電や熱供給の現状と課題やエネルギー源の多様化と地域における熱電併給システムの在り方について意見交換を行った。

また、林野庁では、平成23(2011)年度第2次補正予算により、木質系災害廃棄物等のエネルギー利用への活用可能性に関する調査を実施している。同調査では、青森県、岩手県、宮城県及び福島県において、木質系災害廃棄物等の利用可能量、地域における木質バイオマスエネルギーへの代替可能量及び地域のニーズ等を把握して、地域のニーズに応じた熱電併給システム等を提案することとしている。

加えて、第3次補正予算では、被災地において木質系災害廃棄物や未利用間伐材等を活用する木質バイオマス発電施設や熱供給施設等の整備に対して支援を行うこととしている。


(b)分析 

(海水に浸かった木材の利用には注意が必要)

今回の震災により沿岸部で発生した木質系災害廃棄物の多くは、津波により、海水に浸かっているものと考えられる。海水の塩分濃度は3%強程度(塩素濃度は1.9%程度)であり(*85)、海水を吸収した木材の塩分濃度は最大で8%程度に達すると考えられる(*86)。海水に浸かった木材を燃焼させた場合には、燃焼機器の損傷や有害物質の発生を招くおそれがあることが指摘されている。特に、塩分を含む木くず等を800℃以下で焼却すると、ダイオキシン類が発生するおそれが高いと言われている(*87)。このため、海水に浸かった木材を一般燃料に使用する場合には、塩素濃度を0.4%以下、木質ペレットに使用する場合には、0.05%以下とすることが一般に求められる(*88)。

海水に浸かった木材の脱塩を行うためには、降雨にさらすことが有効であることが知られている。例えば、小径木については、屋外に放置することにより、20mm程度の降雨4回で、塩分濃度を1%(*89)以下まで低減させることができたとの報告がある(*90)。このような木材では、塩分のほとんどが、樹皮から1cm以内の辺材部分に存在することが知られている(*91)。

また、木材チップを堆積して保管すると、微生物の活動により熱とメタンガスが発生して、自然発火する可能性がある。屋外で可燃性廃棄物を保管する場合、自然発火の誘発を防ぐためには、高さ5m以下、一山当たりの設置面積200m2以下、山と山との間の距離2m以上を確保することが必要であることが知られている(*92)。

このため、「東日本大震災に係る災害廃棄物の処理方針(マスタープラン)」では、海水に浸かった木質系災害廃棄物の利用を図るためには、木くずの形状や塩分等の不純物等に関する条件について受入側と事前に調整を行った上で、未加工の状態で降雨により塩分を除去しつつ、需要に応じて利用することが一案として考えられると指摘している。



(*85)国立環境研究所震災対応ネットワーク (2011a) 塩分を含んだ廃棄物の処理方法について(第三報)(平成23(2011)年3月30日).

(*86)斎藤直人 (2005) 林産試だより, 2005年3月号: 4-6.

(*87)国立環境研究所震災対応ネットワーク (2011b) 塩分を含んだ廃棄物の処理方法について(第二報)(平成23(2011)年3月27日).

(*88)斎藤直人ほか (2011) 林産試験場報, No.540: 1-6.

(*89)塩素濃度で0.6%程度。

(*90)斎藤直人ほか (2010) 海岸流木のリサイクルに向けたシステム提案(漂着ごみ問題解決に関する研究). 平成19〜21年度循環型社会形成推進科学研究費補助金 総合研究報告書概要.

(*91)斎藤直人ほか (2011)

(*92)国立環境研究所震災対応ネットワーク (2011b)



(木質バイオマスのエネルギー利用には熱利用が重要)

木質バイオマスの有するエネルギーを有効に活用して、事業の収益性を高めるためには、既存のエネルギー変換システムと比べて、エネルギー変換効率に遜色のない燃焼技術を採用することが重要である。

木質バイオマスのエネルギー変換効率は、「熱利用」のみの場合と熱と電力の両方を供給する「熱電併給」の場合、75%程度とみられている。一方、発電のみの場合は高くても25%程度とする報告があり(図I-15)(*93)、石炭火力発電所における通常のエネルギー変換効率である40%程度(*94)と比べて低いことが知られている。

したがって、木質バイオマスのエネルギー利用に当たっては、熱利用又は熱電併給を基本とするとともに、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」(*95)等により発電利用を進める場合にも、燃焼によって発生する熱を有効に活用することが重要である。



(*93)Manomet Center for Conservation Sciences (2010) Biomass Sustainability and Carbon Policy Study. NCI-2010-03.

(*94)資源エネルギー庁 (2004) エネルギー白書(2004年版): 52.

(*95)「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」については、第V章(164ページ)参照。



(欧州では「地域熱供給」に木質バイオマスを多用) 

欧州諸国では、燃焼プラントから複数の建物に配管を通し、蒸気(又は温水)を送って暖房等を行う「地域熱供給」に、木質バイオマスが多用されている。

例えば、スウェーデンでは、1991年に炭素税が導入され、地域熱供給用の化石燃料には二酸化炭素や硫黄の排出量に応じて高額の税が課せられたが、木質バイオマス燃料には、これらの税は課されなかった。このため、木質バイオマス燃料は地域熱供給用の最も安い燃料となり、その後、木質バイオマス燃料による地域暖房システムが急速に普及した(*96)。

スウェーデンにおける2009年の地域熱供給部門のエネルギー消費量は52TWh(*97)で、エネルギー消費量全体(376TWh)の約14%を占める。地域熱供給部門のエネルギー消費量のうち、42.2TWhはバイオ燃料等によって供給されており、このうち、木質燃料は27.7TWhで約66%を占めている。これらの木質燃料の多くは、林地残材、工場残材又は低質材である(*98)。

また、オーストリアにおいても、全世帯の約2割が地域熱供給を利用している。同国では、国内1,550か所の地域熱供給プラントで、小径木や製材工場から出る残廃材をチップに破砕して燃焼し、各世帯に配管されたパイプを通じて蒸気や温水を供給している(*99)。



(*96)Bengt Johansson (2000) Economic Instrument in Practice 1: Carbon Tax in Sweden: Innovation and the Environment (OECD Proceedings).

(*97)「T(テラ)」は、1012のこと。

(*98)Swedish Energy Agency (2010) Energy in Sweden 2010: 50,102.

(*99)熊崎実 (2011) 林業経済, 64(4): 7-12.



(我が国では木質バイオマスによる地域熱供給は低位)

これに対して、我が国では、「熱供給事業法」に基づき、主に都市部の全国142地区で、廃棄物や廃熱等を熱源とする地域熱供給事業が実施され、年間約2.5万TJの熱を販売しているが(*100)、同事業における木質バイオマスの利用はほとんど進んでいない。

しかしながら、我が国でも、集中的な熱需要が見込まれ、低コストで配管を敷設できる市街地であって、周辺地域に木質バイオマスを十分に確保できる森林が所在する場合には、木質バイオマスによる地域熱供給を実施できる可能性があると考えられる(*101)。この際、原料調達と熱供給の範囲が広がると、木質バイオマスの収集・運搬コストが上昇し、輸送による熱の損失も増加することから、小規模分散型の熱供給システムとすることが重要である(*102)(事例I-7)。

事例I-7 木質バイオマスによる地域熱供給 

山形県最上町(もがみまち)では、保健医療福祉の総合施設である「もがみウェルネスプラザ」において、間伐材の熱利用に取り組んでいる。
同町では、平成18(2006)年度から19(2007)年度にかけて、同施設の重油ボイラーを550kWと700kWの木質チップボイラーに交換して、施設内の福祉センター、病院、健康センター、老人保健施設、園芸ハウスに、暖房、冷房、温水を供給している(ただし、重油ボイラーはバックアップとして存置)。
燃料となるチップは、町内の林業事業体と製材業者により設立された木材チップ会社が町内の民有林から間伐材を搬出してチップ化したものを供給している。同社には、町内の国有林からも端材が安定的に供給されている。
同施設では、木質チップボイラーの導入により、平成21(2009)年度には、重油使用量が平成11(1999)〜17(2005)年度における平均の半分となり、年間約1,800万円の経費を削減することができた。

資料:高橋昭彦 (2010)「バイオエネルギー地域システム化実験事業」成果報告会(平成22(2010)年7月28日)発表資料.



(*100)一般社団法人熱供給事業協会ホームページ(http://www.jdhc.or.jp/)より。

(*101)熊崎実 (2011)

(*102)国立国会図書館 (2006) 木質バイオマスのエネルギー利用. ISSUE BRIEF, No.510: 9.



(c)課題 

以上の分析を踏まえると、今後、被災地及びその周辺において、エネルギー安定供給に向けた木質バイオマスの活用を進めるためには、以下の課題に取り組むことが必要である。

(1)木質系災害廃棄物の利用に向けた情報把握

今回の震災による廃棄物は極めて大量であることから、極力、埋立処分等に回す量を減らすことが必要である。このため、木質系災害廃棄物は、可能な限り、木質ボードの原料やボイラーの燃料等に利活用することが求められている。しかしながら、現時点では、どれだけの木質系災害廃棄物を利用できるかについて、十分な情報が把握されていない。

現在、林野庁では、平成23(2011)年度第2次補正予算により、木質系災害廃棄物等のエネルギー利用への活用可能性に関する調査を実施している。今後、同調査等により、早急に木質系災害廃棄物の利用可能量等に関する情報を把握する必要がある。

(2)木質バイオマスによる熱電併給等の新たなまちづくりへの位置付け

木質系災害廃棄物や未利用間伐材等の木質バイオマスの利用に当たっては、エネルギー変換効率の優れた熱利用又は熱電併給を基本とするとともに、発電に利用する場合にも、燃焼によって発生する熱の有効利用を進めることが重要である。

熱利用推進のためには、地域における木質バイオマスの供給可能量を考慮した上で、熱需要を取りまとめ、各市町村の復興計画等の中で、木質バイオマスによる熱供給システムの位置付けを明確にすることが必要である。その上で、温水配管等のインフラ整備により、新たなまちづくりと一体となって、計画的に事業を推進することが必要である。

また、被災地におけるモデル的な熱電併給の取組成果を踏まえて、全国に同様の取組が普及していくことが期待される。

(3)がれき処理終了後に向けた木質バイオマスの安定供給体制の整備

我が国では、収集・運搬コストの問題から、間伐材の多くが未利用となっており、未利用間伐材等の発生量は年間約2,000万m3と推計されている。

今後、当面は、木質系災害廃棄物の活用を前提として、被災地における木質バイオマスのエネルギー利用を進めるものの、廃棄物の処理が終了した後は、燃料を未利用間伐材等にスムーズに移行させていく必要がある。

このため、「森林・林業基本計画」を踏まえて、地域における未利用間伐材等の発生量を把握した上で、施業の集約化、路網の整備、林業機械の導入等により、未利用間伐材等の安定的な供給体制を確立することが必要である。


お問い合わせ先

林政部企画課年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219
FAX:03-3593-9564

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