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ホーム > 森林・林業白書 > 平成23年度 森林・林業白書(平成24年4月27日公表) > 平成23年度 森林・林業白書 全文(HTML版) > 第1部 第I章 第3節 復旧・復興に向けた森林・林業・木材産業の取組(2)


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第1部 第I章 第3節 復旧・復興に向けた森林・林業・木材産業の取組(2)

(2)復興へ向けた森林・林業・木材産業の貢献

東日本大震災を受けて、森林・林業・木材産業には、自らの復旧に取り組むのみならず、復興全般に対して積極的に貢献することが求められている。

以下では、森林・林業・木材産業の復興に向けた貢献として、「減災」の考え方に基づく海岸防災林の復旧・再生、新たなまちづくりに向けた木材の活用、エネルギー安定供給に向けた木質バイオマスの活用の3点を取り上げ、これまでの動きを概観した上で、分析を行い、今後の課題を明らかにする。


(ア)「減災」の考え方に基づく海岸防災林の復旧・再生

(a)これまでの動き 

(海岸林の造成は17世紀に始まる)

我が国は、周囲を海で囲まれた島国であり、海岸線の全長は約3.4万kmに及ぶ。各地の海岸では砂丘が発達し、季節風による強風・飛砂・潮害等の被害が頻発してきた。このため、先人たちは、海岸の砂地を安定させて、被害を防ぐため、クロマツ林を主体とする海岸林を造成してきた(図I-5)。

我が国では、9世紀ごろから、強風や飛砂を防止するため自生森林の保全や植栽が始まり、17世紀以降になると、各地で積極的な海岸林の造林が行われるようになった(*27)。

明治時代以降は、明治30(1897)年に成立した「森林法」によって保安林制度が設立され、各地で積極的に海岸防災林の保全・整備が進められるようになった。昭和7(1932)年度からは、海岸砂防林造成事業が始まり(*28)、砂丘地に堆砂垣を設置して人工砂丘を造成し、飛砂を抑制しながら、後方から植栽を進める方法が採用されるようになった(*29)。特に、昭和8(1933)年の昭和三陸地震による津波では、農林省山林局(当時)が津波による被害状況の調査を行って、防潮林の効果を確認しており(*30)、以後、防潮林の造成が積極的に推進されたと言われている(*31)。

戦後は、昭和23(1948)年度から治山事業の一環として海岸砂地造林が始まった。昭和29(1954)年には「保安林整備臨時措置法」が成立し、以後、「保安林整備計画」に基づき、飛砂防備保安林など、海岸防災林としての機能を有する保安林の整備が進展した。また、昭和28(1953)年に成立した「海岸砂地地帯農業振興臨時措置法(*32)」により、砂丘開発の一環として、海岸砂地への造林が進められた(*33)。高度経済成長期以降は、砂丘地の開発利用や海岸侵食の進行、松くい虫による被害の発生等により、海岸防災林の保全と機能強化が課題となった。このため、各地で防潮護岸や土塁等の治山施設の整備や松くい虫被害対策が行われるようになった(*34)。



(*27)東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討会 (2012) 今後における海岸防災林の再生について: 1.

(*28)社団法人日本治山治水協会 (1973) 治山事業六十年史: 103.

(*29)村井宏他編 (1992) 日本の海岸林: 2-7.

(*30)農林省山林局 (1934) 三陸地方防潮林造成調査報告書(昭和9(1934)年3月).

(*31)河合英二 (2005) しんりんほぜん, No.56: 17-20.

(*32)海岸砂地地帯に対し、潮風又は飛砂に因る災害の防止のための造林事業及び農業生産の基礎条件の整備に関する事業を速やかに、かつ総合的に実施することによって、当該地帯の保全と農業生産力の向上を図り、もって農業経営の安定と農民生活の改善を期することを目的とする法律(昭和28年法律第12号)。昭和46(1971)年に廃止。

(*33)村井宏他編 (1992): 10-11.

(*34)村井宏他編 (1992): 13.



(機能の高い海岸防災林は保安林に指定) 

海岸防災林は、潮害の防備、飛砂・風害の防備等の災害防止機能を有しており、地域の生活環境の保全に重要な役割を果たしている。特に、これらの機能を高度に発揮する森林は、「飛砂防備保安林」、「防風保安林」、「潮害防備保安林」及び「防霧保安林」に指定されている。

「飛砂防備保安林」は、風衝を防いで飛砂の発生を防止するとともに、飛砂を捕捉・堆積して内陸部への侵入を阻止する森林である。「防風保安林」は、風速を緩和して暴風・潮風・風食等を防ぎ、沿岸地域の植物等の損傷と生理的障害を防止・軽減する森林である。「潮害防備保安林」は、樹幹によって侵入する波のエネルギーを抑え、津波・高潮の被害を軽減するとともに、強風時の空気中の海塩粒子を捕捉したり、風速の緩和により潮害・潮風害を防止する森林である。「防霧保安林」は、霧の移動阻止と霧粒子の捕捉によって内陸部の生活環境を保護する森林である(*35)。



(*35)各保安林の面積については、第III章(87ページ)参照。



(東日本大震災により大きな被害)

東日本大震災では、岩手県宮古市(みやこし)の検潮所で8.5m以上の津波を観測するなど、青森県から千葉県までの太平洋沿岸部で高い津波が観測された。津波の遡上高は、地形の影響を受けて、三陸海岸の小規模な谷では20mを超え、松島湾等の内湾や仙台平野等の平野部においても10m程度に及んだ(*36)。

これらの津波により、海岸防災林は大きな被害を受けた。青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県及び千葉県の6県の海岸林について、空中写真等を用いて流出・水没・倒伏状況を判読した結果、浸水被害は3,660haで、被害率区分「75%以上」が約3割、「25〜75%」が約2割強となり、かつてない甚大な被害となっている(図I-6)。このうち、海岸防災林については、253か所が被害を受け、被害面積は約1,718haとなっている(図I-7)(*37)。

海岸防災林の被害状況 被災前の高田松原(岩手県陸前高田市) 被災後の状況


(*36)東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討会 (2012): 4.

(*37)林野庁調べ。



(b)分析 

(「海岸防災林の再生に関する検討会」を開催)

林野庁では、平成23(2011)年5月から、海岸防災林の被災状況を把握するとともに、海岸防災林の効果を検証し、復旧方法の検討等を行うことを目的として、学識経験者等からなる「東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討会」(以下「検討会」という。)を開催した。同検討会では、第1回の検討会を宮城県庁で開催した後、合計5回の検討会を開催して、平成24(2012)年2月に、「今後における海岸防災林の再生について」(以下「報告書」という。)を取りまとめた。

報告書では、海岸防災林の被災状況と津波に対する効果を整理した上で、海岸防災林は、津波自体を完全に抑止することはできないものの、津波エネルギーの減衰効果や漂流物の捕捉効果等被害の軽減効果がみられることから、まちづくりの観点において多重防御の一つとして位置付けることができるとした。海岸防災林の再生の方向性としては、主に林帯幅が狭い箇所や施設のみの被災箇所では、「原形復旧」又は「施設の改良」、主に林帯幅が確保できる箇所では、「林帯幅の確保」又は「海岸防災林全体の機能向上」の4パターンを提示した(図I-8)。さらに、海岸防災林の再生に当たっては、被災箇所ごとに、被災状況や地域の実情、さらには地域の生態系保全の必要性等を踏まえて、再生方法を決定することが必要であることを指摘した(*38)。



(*38)東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討会 (2012): 10-11.



(海岸防災林には津波被害軽減効果あり) 

海岸防災林は、飛砂、潮害、風害の防備等の災害防止機能を有し、津波に対しては、過去の事例調査等から、「津波エネルギーの減衰効果」、「漂流物の捕捉効果」、「波にさらわれた人が掴まる対象となる効果」及び「強風による砂丘の移動を防いで海岸に高い地形を保ち、海水の侵入を阻止する効果」を有することが知られている。

「津波エネルギーの減衰効果」は、津波が林帯内を通過する際、樹木群の抵抗によって、津波の波力を減衰して流速やエネルギーを低下させ、津波の破壊力を弱める効果である。今回の検討会では、幹折れ等の樹木の被害が生じない前提で、津波高6.5m等一定の条件の下、津波の流体力の減衰効果に関するシミュレーションを実施した。その結果、林帯幅の広さに応じて、津波エネルギーの減衰効果等が発揮され、林帯幅が200m以上の海岸防災林が存在する場合には、流体力が3割程度減少するとの結果が得られた(図I-9)。

「漂流物の捕捉効果」は、樹木が漂流物の移動を阻止し、移動によって生ずる二次被害を軽減又は防止する効果である。過去の津波災害でも、海岸防災林が木造船の移動を阻止して、後方の中学校に衝突して破壊するのを防いだ例等が知られている。

「波にさらわれた人が掴まる対象となる効果」とは、波にさらわれた人がすがりついたり、ひっかかる対象となる効果である。過去の津波災害でも、海岸防災林の樹木に掴まることにより、引き波にさわられずに済んだため、命が助かったという体験談が報告されている(*39)。

「強風による砂丘の移動を防いで海岸に高い地形を保ち、海水の侵入を阻止する効果」とは、強風による砂丘の移動を防いで、海岸に高い地形を保つことにより、砂丘が津波に対する障壁となって海水の侵入を阻止する効果である。過去の津波においても、10m前後の津波に襲われたものの、10m前後の砂丘により、津波に直撃された集落がなかった事例が知られている(*40)。

このほか、海岸防災林には、防災効果以外に、憩いの場の提供や白砂青松等望ましい景観を創出する保健休養機能等の効果も期待することができる(*41)。



(*39)原田賢治 (2003) 林業技術, No.741: 12-15.

(*40)東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討会 (2012):6月9日; 林野庁 (2004) 海岸防災機能の高度発揮のための管理システムに関する調査報告書(平成16年3月): 29-30.

(*41)東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討会 (2012):11.



(東日本大震災でも津波被害軽減効果を発揮)

これまで、海岸防災林による津波被害軽減効果は、明治29(1896)年の明治三陸地震、昭和8(1933)年の昭和三陸地震、昭和21(1946)年の南海地震、昭和35(1960)年のチリ地震、昭和58(1983)年の日本海中部地震等の際に確認されてきた(*42)。

今回の東日本大震災における津波では、壊滅的な被害を受けた海岸防災林も多いが、報告書では、津波エネルギーの減衰効果や漂流物の捕捉効果、到達時間の遅延効果が確認された事例が報告されている。

例えば、青森県八戸市(はちのへし)では、津波により20隻を超える船が漂流して海岸防災林をなぎ倒したが、全て林帯で捕捉され、背後の住宅地への侵入を阻止するとともに、背後の住宅地は3m以上浸水したものの流出しなかった。また、宮城県仙台市若林区(わかばやしく)では、9mを超える津波に襲われ、海岸防災林に甚大な被害が発生したが、林帯の背後にあった住宅は原形をとどめて残存した。さらに、茨城県北茨城市(きたいばらきし)や大洗町(おおあらいまち)では、それぞれ6m、4.5mの津波に襲われたが、人工砂丘等により津波が減衰されたため、人家等への直接的な被害が軽減された(*43)。

今回の津波被害を受けて、検討会では、海岸防災林の有無による津波被害軽減効果の違いを確かめるため、青森県八戸市市川町(はちのへしいちかわまち)の海岸防災林を対象とする数値シミュレーションを行った。その結果、海岸防災林の存在により、津波の内陸への到達時間が遅くなることが確認された(「到達時間の遅延効果」)(図I-10)(*44)。

このように、東日本大震災の津波では、海岸防災林は、津波自体を完全に抑止することはできなかったものの、津波エネルギーの減衰効果、漂流物の捕捉効果、さらには到達時間の遅延効果等、被害の軽減効果を発揮したと考えられる。



(*42)東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討会 (2012):7月8日; 林野庁 (2004): 4-28.

(*43)東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討会 (2012): 8-9.

(*44)東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討会 (2011a) 津波に対する海岸防災林の効果検証事例(第2回会合−資料2).



(根返り等による被害が発生)

報告書では、被災した海岸防災林の調査で、地盤高が低く地下水位が高い場所では、樹木の根が地中深くに伸びず、根の緊縛力が弱かったことから、根返りし、流木化したものが多数存在することが確認されたと報告されている。

場所によっては、根の緊縛力が強く根返りはしなかったものの、津波の流体力に耐えられずに、幹折れして、流失したものが多数存在することも報告されている(*45)。



(*45)東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討会 (2012): 6.



(苗木供給体制の強化が必要)

海岸防災林の再生に当たっては、多くの苗木を植栽することが必要である。今回の津波により被災した海岸防災林のほとんどは、クロマツ又はアカマツ林であり、その再生には、1,000万本以上の苗木の追加的な供給が必要になると見込まれる(*46)。

平成21(2009)年度におけるマツの苗木生産量は、全国でクロマツ90万本程度、アカマツ70万本程度であった。これに対して、報告書では、全国における最大年間生産可能量を、採種可能量から、クロマツで400万本程度、アカマツで720万本程度と試算している(*47)。

苗木生産には、2〜3年を要することから、海岸 防災林の再生に必要となる苗木の需要量を把握した上で、それに見合った数量の苗木生産量を確保する必要がある。また、アカマツやクロマツは、松くい虫の被害を受ける可能性があることから、抵抗性マツの採用を検討する必要もある(*48)。

さらに、多様な森づくりや生物多様性の保全が求められる中、マツ類のみならず、広葉樹の植栽も考慮することが求められている。しかしながら、広葉樹の苗木生産量は、岩手県、宮城県及び福島県の3県で、庭木等を含めて年間約70万本と少ない状況にある(*49)。



(*46)被害率区分ごとの被害面積等から林野庁が試算。

(*47)東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討会 (2012): 20.

(*48)東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討会 (2012): 20.

(*49)東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討会 (2011b) 今後における海岸防災林の再生について(中間報告案)参考資料(第3回会合−資料2): 43.



(c)課題 

以上の分析を踏まえ、報告書では、今後、「減災」の考え方に基づき、被災箇所ごとに地域の実情等を踏まえながら、以下の点に留意して、海岸防災林の復旧・再生を検討していく必要があると指摘している(*50)。



(*50)東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討会 (2012): 12-20.



(1)地域の復興計画等との整合

現在、被災各県及び各市町村では、政府による復興方針を踏まえて、復興計画等の策定が進められている。政府の復興方針では、災害に強い地域づくりの施策として、「沿岸部の復興にあたり防災林も活用する」旨明記されている。

海岸防災林は、津波エネルギーの減衰効果、漂流物の捕捉効果、到達時間の遅延効果等により、津波被害を軽減することが期待できることから、海岸防災林の効果や役割等について、地域住民の十分な理解を得る必要がある。その上で、海岸防災林の再生について、地域の復興計画等との整合を図る必要がある。


(2)津波被害軽減効果を発揮できる林帯の配置

今回、幹折れ等の樹木の被害が生じない前提で、津波高6.5m等の一定条件の下で実施したシミュレーションでは、林帯幅の広さに応じて津波エネルギー減衰効果等が発揮され、林帯幅が200mの海岸防砂林が存在する場合には、流体力が3割程度減少する結果となった。

したがって、飛砂・風害の防備等の災害防止機能に加えて、津波に対する被害軽減効果も考慮して海岸防災林を復旧・再生するためには、広い林帯幅とすることが望ましい。


(3)根系の発達を促す生育基盤の造成

今回の津波では、地盤高が低く地下水位が高い箇所では、樹木の根が伸びず、根の緊縛力が弱かったことから、根返りし流木化したものが多数確認された。

樹木の根系の健全な成長を確保して根返りしにくい林帯を造成するためには、盛土を実施して、地下水位等から2〜3m程度の地盤高さを確保することが望ましい。特に、陸側林縁部では、漂流物の捕捉や流木化した樹木の抑止のため、十分な盛土の高さを確保することが望ましい。


(4)林帯を保護する人工盛土の造成

従来から、海岸防災林の海側には、風や飛砂等から背後の林帯を保護するため、人工盛土が造成されてきた。この人工盛土は、津波エネルギーの減衰にも効果があると考えられる。

人工盛土の造成に当たっては、十分な土地が確保できるか等の条件を踏まえながら、箇所ごとに津波エネルギーの減衰を考慮した高さを検討するとともに、市街地等の保全対象との関係等を考慮して、単独又は千鳥格子状の配置についても検討することが望ましい。


(5)災害廃棄物由来の再生資材の利用

東日本大震災では、大量に発生した災害廃棄物の処理が復興に当たっての課題となっている。このため、海岸林の復旧・再生に当たり、災害廃棄物を適切に処理した再生資材等を盛土材として利用することが望ましい。

利用に当たっては、周辺環境への影響が生じないように必要な措置を講ずるとともに、地域住民の十分な理解を得る必要がある。


(6)津波減衰効果の高い森林の構成

これまでの研究成果等から、根系が発達して太く頑丈な幹を持つ樹木は津波の被害を受けにくいこと、幹だけでなく枝・葉も津波エネルギーの減衰効果を有し、枝下高が低い方が減衰効果を期待できること等の知見が得られている。したがって、これらの知見や地域の実情を踏まえて、津波軽減効果の高い森林の構成を検討することが望ましい。

また、植栽樹種については、海岸の最前線は飛砂・潮風等に十分耐え得る樹種から、陸側は防風効果を高めるために十分な樹高を持つ樹種から選定する必要がある。さらに、多様な森づくりや生物多様性の保全の観点から、植栽地の状況を見極めつつ、広葉樹の植栽等についても考慮することが望ましい。


(7)緑化体制の整備

今後、被災した海岸防災林の再生を進めるためには、1,000万本以上の苗木の追加的な供給を確保する必要がある。

その際には、海岸防災林の再生の進度や植栽地の環境に適した苗木の需要量を把握した上で、それに見合った苗木生産量を確保する必要がある。また、抵抗性マツ苗木の生産にも取り組む必要がある。

さらに、広葉樹については、植栽予定地に従来自生する樹種で、できる限り植栽地の生育環境に近い地域で採取した種子から生産できる体制を整えることが望ましい。

植栽やその後の保育は、防災意識の向上や地域の復興のシンボル的な活動となり得ることから、地域住民や地域の緑化団体等の参画についても、積極的に検討する必要がある。

さらに、NPOや企業等からも海岸防災林の再生に関心が示されていることから、民間団体等との継続的な連携も積極的に検討する必要がある(事例I-2、3、4)。

なお、検討会では、これらの留意すべき事項を踏まえた海岸防災林再生の将来イメージを示している(図I-11)。海岸防災林は長い年月をかけて先人たちが造成してきたものである。今後も、継続的な取組により、海岸防災林の再生を図り、次代に引き継いでいく必要がある。

事例I-2 市民参加による海岸防災林の復旧 

青森県では、東日本大震災の津波により、三沢市(みさわし)から八戸市(はちのへし)にかけての太平洋岸約31kmの区域内で、海岸防災林に大きな被害が発生した。
青森県では、「東北の元気、日本の元気を青森から」のテーマの下、震災からの復興に向けた動きを内外にアピールして誘客を図るとともに、海岸防災林の重要性を広く普及するため、平成23(2011)年7月に、旅客鉄道会社及び旅行会社と連携して、津波の猛威から人家等を守った海岸防災林にクロマツを植える植樹体験を組み込んだツアーを3回実施した。
同ツアーには、首都圏等から計500名以上が参加して、津波により被災した八戸市市川(はちのへしいちかわ)地区の海岸防災林で、約1,600本のクロマツの苗木を植栽した。

事例I-3 高田松原における「奇跡の一本松」の後継樹育成 

「軌跡の一本松」の後継樹育成 高田松原に唯一残った「奇跡の一本松」 「奇跡の一本松」から育成されたクローン苗

岩手県陸前高田市(りくぜんたかたし)の高田松原は、広田湾に面する2kmの砂浜に約7万本のアカマツ・クロマツが生育する松原であった。この松原は、寛文7(1667)年に菅野杢之助(かんのもくのすけ)がクロマツを植栽したことに始まり、地域の防災林として管理・保全されてきた。しかしながら、平成23(2011)年3月の東日本大震災の津波により、約7万本のマツは、ただ1本を残して、全て流亡してしまった。残された一本は、樹高28m、胸高直径87cm、樹齢200年以上のアカマツで、「奇跡の一本松」と呼ばれ、陸前高田市(りくぜんたかたし)の復興のシンボルとなった。その後、関係団体の連携により、「奇跡の一本松」の保存活動が進められたが、根腐れの進行により、同10月に保存活動は打ち切られた。
独立行政法人森林総合研究所林木育種センター東北育種場では、関係機関の協力を得て、同4月に、「林木遺伝子銀行110番注」により、「奇跡の一本松」から穂木を採取して接ぎ木を行い、4本の苗木の育成に成功した。4本の苗木は、3年程度かけて高さ50cm程度に育てられた後、高田松原に里帰りする予定となっている。

注:独立行政法人森林総合研究所林木育種センターが、天然記念物や巨樹、名木等の樹木の所有者等からの要請を受けて、挿し木や接ぎ木などにより、当該樹木の後継クローン苗木の増殖を行う取組。

事例I-4 シンポジウム「海岸林を考える」を開催 

日本海岸林学会では、今回の震災を契機として、海岸林の重要性を再認識し、その再生の在り方を考えることを目的として、平成23(2011)年6月に、東京都江東区(こうとうく)で「国際森林年記念シンポジウム海岸林を考える」を開催した。
同シンポジウムでは、海岸林の研究者、海岸林の保全活動に取り組む団体、行政の担当者等から話題提供が行われた。パネルディスカッションでは、海岸林の再生に当たっては、機能の強化を図るとともに、地域の復興のグランドデザインに位置付けることが重要である等の意見が出された。
最後に、主催者側より、「速やかで息の長い取組の必要性を認識して頂き、美しい海岸林の再生のための支援をお願いしたい」旨呼びかけが行われ、会場からの拍手とともに閉会した。


お問い合わせ先

林政部企画課年次報告班
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