English

このサイトの使い方

サイトマップ

ホーム > 森林・林業白書 > 平成22年度 森林・林業白書(平成23年4月26日公表) > 平成22年度 森林・林業白書 全文(HTML版) > 第1部 第IV章 第3節 山村の活性化(2)


ここから本文です。

第1部 第IV章 第3節 山村の活性化(2)

(2)山村の活性化を目指して

(山村には独自の魅力あり) 

過疎化・高齢化等の課題を抱える山村社会は、見方を変えれば、都市のような過密状態がなく、生活空間にゆとりがある場所であるともいえる。

また、生活環境基盤が都市部ほど整備されていない山村の環境は、都市部で忙しく働く現代人にとっては、自給自足生活や循環型社会の実践の場として、また、時間に追われずに生活できる「スローライフ」の場として魅力があるとも考えられる。

さらに、山村には豊富な森林資源や水資源、美しい景観のほか、食文化を始めとする伝統・文化、生活の知恵・技等、有形・無形の地域資源が数多く残されている。このような固有資源を有する山村は、都市住民が豊かな自然や伝統文化にふれあう場として、また、心身を癒す場として活用することができる(事例IV−6、7)。

事例IV-6 人形浄瑠璃を柱とした山村振興の取組

鳥取県東南部に位置する智頭町は、面積の9割以上が山林で、人口約9千人弱の小さな町である。同町は、昔から「智頭杉」で知られた林業を中心に生計を立てていたが、戦後の産業基盤の変化から、人口減少・高齢化が進行している。
 同町にある新田集落では、幕末から明治初期に娯楽として始まった「新田人形浄瑠璃芝居」の上演・伝承が行われている。この芝居は、3人1組で1体の木偶人形を操るものであり、近年、女性も加わり、集落全員で伝統芸能を受け継いでいる。
 このような中、同集落では、全戸が加入する全国初の「集落丸ごとNPO」を立ち上げた。同集落では、集落が一丸となって、「交流と文化」を軸に、人形浄瑠璃を柱とした山村振興の取組を行っている。

事例IV-7 「からむし織体験制度」を通じた山村振興の取組

福島県西部に位置する昭和村は、周囲を山に囲まれており、伝統織物の上布の原料となる「からむし原麻」を栽培生産している本州唯一の村である。「からむし原麻」の栽培は、室町時代から約600年の歴史を有するが、近年の安価な化学繊維の発達や着物産業の衰退等により、村での雇用の場が縮小し、若者の村外への流出及び高齢化が急速に進んだ。
 そこで、同村では、平成6(1994)年から毎年、からむし織に興味のある若者を全国から募集し、約1年間かけてからむしの栽培から織りまで一連の作業工程を体験する「からむし織体験制度」を発足させた。この制度によって同村を訪れた女性のうち、21名が研修終了後も村に残って定住し、村内の男性と結婚するなどしており、からむし織の担い手として、山村の振興に貢献している。


(都市との交流により山村を活性化) 

平成19(2007)年に内閣府が実施した「森林と生活に関する世論調査」によると、「緑豊かな農山村に一定期間滞在し休暇を過ごしてみたいと思う」と回答した者の割合は76%であり、特に大都市を中心としてその割合が高くなっている(図IV−40)。また、「過ごしてみたい」と回答した者に対して、森林や農山村で行いたいことを尋ねたところ、「森林浴により気分転換する」、「野鳥観察や渓流釣りなど自然とのふれあい体験をする」、「森や湖、農山村の家並みなど魅力的な景観を楽しむ」とする回答が多くみられた。

このような意識の高まりを背景として、近年、都市住民が休暇等を利用して山村に滞在し、農林業・木工体験、森林浴、山村地域の伝統文化の体験等を行う、「山村と都市との交流」が各地で進められている(事例IV−8)。

都市住民のニーズに応えて都市と山村が交流を図ることは、都市住民にとっては、健康でゆとりある生活の実現や、山村や森林・林業に対する理解の深化に役立っている。

山村留学、修学旅行、体験学習等により、子どもたちが山村に滞在し、豊かな自然や文化を体験することは、未来を担う子どもたちの「生きる力」を育むことにつながる。

また、山村住民にとっては、特用林産物や農産物の販売による収入機会の増大や、宿泊施設や販売施設等への雇用による就業機会の増大につながるのみならず、自らが生活する地域を再認識する絶好の機会ともなり得るものである。

事例IV-8 都市との交流を通じた森林再生

東京農業大学では、平成13(2001)年より、多摩川源流の山梨県小菅村と連携した森林再生事業に取り組んでいる。平成18(2006)年度からは、取組の範囲を更に下流域へと広げ、多摩川流域の大学や住民、企業等を含めた幅広い連携によって構成される「多摩川源流大学」を創設した(同年、大学と小菅村が連携協定を締結)。
 同大学では、主に学生に対し、森林再生や農業、景観保全、文化保全に関わるカリキュラムを設置し、講義及び体験実習を行っている。体験実習では、小菅村の住民を講師として招き(住民講師)、森林の保育作業や遊歩道の整備、農作業など様々なフィールドワークを通じて住民講師とコミュニケーションを図ることで、住民講師から直接、地域で育まれた「知恵」や「技」等を教わっている。また、これらのカリキュラムの一部は、社会人プログラムとしても提供され、学生以外の都市住民も小菅村に訪れるようになっている。
 さらに、平成22(2010)年には、小菅村にこれらの活動の受入れ先となるNPOが設立され、大学と協力しながら、学生と住民による森林や耕作放棄地の再生、間伐材の教材利用、農業生産物の学校給食での利用、大学と企業の協働で育成された苗木の販売等が行われている。これらの活動により、人口約800人の小菅村に年間約1,500人が訪れて学ぶなど、都市と農村との交流が活発化して、地域のコミュニティ活動の活発化やUIターン者の増加にもつながっている。


(山村への定住が重要) 

山村における集落機能の維持・活性化を図るためには、都市と山村の交流等を契機として、若者や都市住民を中心とするUJIターン(*18)者を山村への定住につなげることが重要である。このため、山村における生活環境施設の整備、NPOや地域住民の連携による都市住民等との体験・交流活動が進められている。


(*18)「UJIターン」とは、大都市圏の居住者が地方に移住する動きの総称のこと。Uターンは出身地に戻る形態、Jターンは出身地の近くの地方都市に移住する形態、Iターンは出身地以外の地方へ移住する形態を指す。



(就業機会の確保が重要) 

山村が活力を維持していくためには、若者やUJIターン者の定住を可能とするような魅力ある就業の場を確保・創出することが重要な課題の一つである。

このためには、地域の基幹産業である林業・木材産業を振興するとともに、木質バイオマス等の未利用資源の活用、森林体験等の事業化など森林資源を活用した新たなビジネスの創出等を通じて、多様な就業機会の確保を図ることが必要である。また、きのこや山菜・木炭等の特用林産物は、その生産額が林業産出額の約半数を占め、山村地域の重要な収入源、就業機会の確保等の役割を果たしていることから、特用林産物の生産振興を図ることも重要である。


(「山村再生支援センター」による支援) 

山村の再生には、企業や大学など都市の関係者の理解と協力が大きな力となる。とりわけ、企業等が森林資源を始めとする山村の資源を持続的に利用することは、山村の活性化に大きく貢献する。

このような観点から、平成21(2009)年4月に、山村と企業、山村と都市とを結び、森林資源の新たな活用を目指す取組を支援する「山村再生支援センター」が創設された。同センターでは、(1)木質燃料の利用や間伐等の森林整備によるCO2の排出削減・吸収量のクレジット化・販売(クレジットの創出・販売分野)、(2)木質バイオマスを燃料として使用する企業等への安定供給(木質バイオマスの安定供給分野)、(3)新技術の導入による未利用森林資源を活用したニュービジネスの事業化(新素材・新エネルギーの事業化分野)、(4)森林・山村の癒しの効果の教育・健康面での活用(教育・健康に着目した取組分野)の4分野、さらに、平成22(2010)年度からは、(5)消費者等の理解の促進を加えた5分野において、山村と都市・企業とのマッチングを行うなど、山村と都市の協働による取組を支援してきた。同センターでは、2年間で283件の支援を行ってきた(事例IV−9、10)。

今後は、同センターが行ってきた実績を踏まえ、各地で民間企業によるCSR(企業の社会的責任)活動等により、山村再生に対する支援が広がることが期待される。

事例IV-9 企業の社会貢献活動を通じた山村活性化への貢献

複写機等販売大手のC社では、社会貢献活動の一環として、山村再生支援センターの仲介により、オフセット・クレジット制度での森林吸収によるクレジットを活用したカーボン・オフセットを行った。
 同社では、三重県大台町のJ-VERで複合機の製造段階で発生するCO2排出量約100トン、岩手県釜石地方森林組合のJ-VERでトナー・インクカートリッジ回収輸送時に発生するCO2排出量約250トンをオフセットするなどの取組を行った。
 また同社では、全国10か所でNPOと連携して従業員等が、森林整備や棚田の保全活動等を地域住民とともに実施しており、山村住民と企業とが相互理解を深めながら活動を育んでいる。

事例IV-10 「山村に学ぶ」理系大学の新たな取組

東京工科大学では、学生に自然体験や社会体験を積ませ、コミュニケーション能力の向上と創造的な人材の育成を図るため、山村でのボランティア活動を単位として認定している。>
 学生は、ボランティア活動として、一週間、白神山地における自然再生、最上川流域や宮城県丸森町における森林整備や炭焼き等に取り組んだ。また、佐渡島では、トキの野生復帰を支える活動によって、山村側の人手不足に対して支援を行った。>
 これら東京工科大学の学生約100名による1週間のボランティア活動が展開されたことで、山村側には、森林整備の促進、祭等の文化の復興、交流人口の増加による経済効果等が生まれている。>
 同大学の取組に当たっては、山村再生支援センターが、大学側と山村側の希望に対する調和を図ったプログラム開発や両者のマッチングを支援した。


(「六次産業化法」の公布) 

農林水産省では、山村を含む農山漁村の活性化のため、地域の第一次産業と第二次・第三次産業(加工・販売等)に係る事業の融合等により、地域ビジネスの展開と新たな業態の創出を行う取組(六次産業化)を進めている。平成22(2010)年12月には、「地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律(六次産業化法)」が公布された。農林水産省では、今後、同法に基づき、農林漁業者による加工・販売等への進出や地域の農林水産物の利用の促進に取り組む方針である。


お問い合わせ先

林政部企画課
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219
FAX:03-3593-9564

ページトップへ


アクセス・地図