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ホーム > 森林・林業白書 > 平成22年度 森林・林業白書(平成23年4月26日公表) > 平成22年度 森林・林業白書 全文(HTML版) > 第1部 第IV章 第2節 林業の再生に向けた取組(1)


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第1部 第IV章 第2節 林業の再生に向けた取組(1)


我が国では、「森林・林業再生プラン」に基づき、林業の再生に向けて、施業の集約化や路網の整備、人材の育成等に集中的に取り組むこととしている(*9)(事例IV−4)。以下では、林業の再生に向けたこれらの取組について記述する。

事例IV-4 「森林・林業再生プラン」の実践に向けた取組

鶴居村森林組合(北海道鶴居村)では、持続的な森林経営と間伐等の生産性向上に向けて、欧州のフォレスターから森林づくり、道づくり等の助言を受けながら、地域にあった作業システムの実践に取り組んでいる。同組合では、200ha程度の団地において、健全で形質の良い木を選んで質の高い大径材を育てる「将来の木施業」に取り組むとともに、効率的な木材生産に資する路網の整備、先進的な林業機械(ウインチ付きトラクタ)による集造材等、「森林・林業再生プラン」の目指す姿を先行的に実践している。


(*9)「森林・林業再生プラン」については、トピックス(2-3ページ)を参照。



(1)効率的で安定的な林業経営の確立

(ア)生産性の向上が不可欠 

林業の再生を図るためには、国際商品である木材の価格が大きく上昇することは期待できない中、生産性の向上を図ることが不可欠である。我が国における素材生産の生産性は、平成20(2008)年度現在、主伐で4.00m3/人日、間伐で3.45m3/人日にとどまり、高い生産性を実現している欧州諸国とは大きな差がある。

しかしながら、一部の素材生産業者等では、欧州並みの高い生産性を既に実現しており、また、人工林の高齢級化に伴い、直径・蓄積の増加が見込まれ、そのことが生産性の向上に寄与することを踏まえれば、今後、我が国においても林業の生産性の向上を図っていく余地は大きいと考えられる。

林業の生産性の向上に当たっては、施業の集約化によって、一括した効率的な施業の実施を確保するとともに、路網の整備と機械化の促進によって、作業の効率性を高めることが必要である(*10)。


(*10)林業の生産性の向上については、「平成22年版森林・林業白書」(第I章)を参照。



(イ)森林施業の集約化 

(森林施業の集約化を推進)

林業の生産性向上を図るためには、路網と高性能林業機械を活用した効率的な作業システムを導入することが不可欠である。しかしながら、我が国の私有林の零細な所有規模では、個々の森林所有者が単独で効率的な施業を実施することは難しい状況にある。

このため、隣接する複数の所有者の森林を取りまとめて、意欲と能力のある林業事業体等が路網作設や間伐等の森林施業を一括して受託する「施業の集約化」を推進することが求められている。

施業の集約化によって、作業箇所がまとまることから、丈夫で簡易な路網の作設や高性能林業機械による効率的な作業が可能となり、木材生産コストが低減することが期待できる。


(提案型集約化施業を普及・定着させるために) 

「提案型集約化施業」とは、森林所有者等から施業を依頼されるのを待つのではなく、林業事業体から森林所有者に対して、森林の現況を示した写真や施業の方針、施業を実施するのに必要な経費や木材の販売額など事業を実施した場合の収支を明らかにしたデータ(森林施業提案書)を提示して、森林所有者の施業に対する関心を高め、施業を取りまとめて受託する取組である(図IV−26)。

提案型集約化施業の実施に当たって、林業事業体は、(1)地域の森林所有者に対する説明会の開催等により、森林施業の方針を明確に示すこと、(2)間伐等の施業に必要な経費等を森林所有者に説明し合意を得ること、(3)長期施業受委託等の管理契約を締結することが求められる。

このような取組の積み重ねを通じて、林業事業体は、森林所有者との信頼関係を構築して、長期的な事業量を確保することが期待できる。


(不在村森林所有者への働きかけ) 

施業集約化の推進に当たっては、不在村者保有森林の存在により、効率的な施業の実施が難しくなる例もみられる。2005年農林業センサスによると、森林の所在地と異なる市町村に居住する不在村者の保有する森林面積は、私有林面積の24%を占めており、そのうちの約4割は当該都道府県外に居住する者の保有となっている。今後、森林所有者の高齢化等に伴い、不在村者保有森林が更に増加することも予想される。

このため、全国森林組合連合会では、東京、大阪、名古屋の三大都市圏や都道府県庁所在地等で「ふるさと森林会議(相談会)」を開催して、地元の森林組合から不在村森林所有者に対して森林施業の実施を働きかけている。また、ダイレクトメールの送付や山林相続手続等の業務を手掛ける司法書士との連携によって、不在村森林所有者等に対する森林施業実施の働きかけを行っている。


(施業集約化には情報収集が必要) 

施業の集約化を進めるに当たっては、森林所有者の特定や境界の明確化、森林現況に関する詳細な情報の収集等を行うことが大前提となる。

しかしながら、不在村者の増加や森林所有者の高齢化、森林の相続等により、森林に関する情報が不明確になる傾向にある。

このため、林野庁では、境界や所有者が不明で整備が進まない森林において、市町村や地域住民等が行う境界の明確化活動に対して支援を行っている。また、平成23(2011)年度から導入する「森林管理・環境保全直接支払制度」においても、境界の明確化を含めた施業集約化に不可欠な活動に対する支援を行うこととしている。

また、平成22(2010)年5月には、「国土調査事業十箇年計画」が定められ、今後10年間で、林地における地籍調査(*11)実施面積の割合を42%から50%とすることとされた。今後、林野庁と国土交通省が連携して、林地における地籍整備の促進を図ることとしている。


(*11)主に市町村が主体となって、一筆ごとの土地の所有者、地番、地目を調査し、境界の位置と面積を測量する調査。



(「森林・林業再生プラン」に基づき施業の集約化を促進) 

平成21(2009)年12月に策定された「森林・林業再生プラン(*12)」では、森林・林業の再生を確実なものとするため、意欲のある森林所有者等への経営の集中化の促進等の制度面での改革や、路網・作業システムを普及するための補助要件の見直し等の補助金・予算の見直しについて検討を行うこととされた。

平成22(2010)年11月に報告された「森林・林業再生プラン」推進に当たっての具体的な対策に関する最終とりまとめ「森林・林業再生に向けた改革の姿」では、まとまりをもった施業を実施するため、意欲と能力を有する者が、森林経営の受託等を通じて、面的なまとまりを持って路網・集約化に関する事項を含む計画を作成する制度を創設するとともに、面的なまとまりをもって計画的な森林施業を行う者に直接支援を行う制度を導入すること等が提言された。

これを受けて、林野庁では、森林施業計画制度の見直しを検討するとともに、平成23(2011)年度から、面的まとまりをもって計画的な森林施業を行う者に対して、搬出間伐等の森林施業とこれと一体となった森林作業道の開設を直接支援する「森林管理・環境保全直接支払制度」を導入することとしている。同制度では、施業集約化の促進に必要となる施業提案書の作成や森林所有者の合意形成等の活動にも支援することとしている。また、森林施業計画制度の見直し等、法整備を含めた制度面での整備も検討している(図IV−27)。



(*12)「森林・林業再生プラン」については、トピックス(2-3ページ)を参照。



(ウ)路網の整備 

(我が国の路網整備は不十分)

路網は、造林、保育、素材生産等の施業を効率的に行うためのネットワークであり、林業の最も重要な生産基盤である。また、路網は、作業現場へのアクセスの改善や災害時の緊急搬送等により、林業の労働条件の向上等にも寄与するものである。しかしながら、我が国においては、地形が急峻であること等により、路網の整備が十分には進んでおらず、林内路網密度は約17m/haとなっている。

農林水産省の「森林資源の循環利用に関する意識・意向調査」によると、林業者(*13)に路網整備の目標を聞いたところ、「50〜100m/ha程度の路網密度を目指したい」と回答した者の割合が30%と最も高く、これに「車両系集材システムに適した100m/ha以上の路網密度を目指したい」(26%)と「架線系集材システムに適した30〜50m/ha程度の路網密度を目指したい」(12%)を併せると、路網整備の意向を持つ者は約6割を占めた。

所有山林面積別にみると、所有山林面積が大きくなるにつれて路網を整備したい意向を持つ者の割合が高くなっている。特に、100ha以上500ha未満の森林所有者では、「車両系集材システムに適した100m/ha以上の路網密度を目指したい」と回答した者が39%を占め、他の階層よりも高い割合となっている(図IV−28)。



(*13)脚注5参照。



(丈夫で簡易な路網整備を推進) 

平成21(2009)年12月に策定された「森林・林業再生プラン(*14)」では、森林の整備や木材生産の効率化に必要な路網と林業機械を組み合わせた作業システムの導入に向けて、路網・作業システムについて検討を行うこととされた。

平成22(2010)年11月に報告された「森林・林業再生に向けた改革の姿」では、路網の種類について、一般車両の走行を想定する「林道」、10トン積みトラック等の林業用車両の走行を想定する「林業専用道」、フォワーダ等の林業機械の走行を想定する「森林作業道」の3区分に整理して、それぞれの役割を明確化するとともに、路網開設等に必要な人材の育成や路網整備の加速化に向けた支援を行うことを提言している。

これを受けて、林野庁では、平成22(2010)年度に、新たに区分された「林業専用道」、「森林作業道」の作設指針を作成した。今後は、林業専用道と森林作業道に重点をおいて路網の整備を推進することとしている。


(*14)「森林・林業再生プラン」については、トピックス(2-3ページ)を参照。



(エ)機械化の促進 

素材生産の生産性向上には、立木の伐倒(伐木)、木寄せ、枝払・玉切(造材)、林道沿いの土場への運搬(集材)という各工程に応じて、林業機械を有効に活用することが鍵となる。

我が国では昭和60年代(1980年代半ば)に高性能林業機械の導入が始まり、平成21(2009)年現在、プロセッサ、ハーベスタ、フォワーダを中心に約4,200台が保有されている。

保有台数の内訳をみると、プロセッサが約3割を占め、プロセッサと同様に造材作業に使用されることの多いハーベスタと併せると両者で約5割となる。このほか、フォワーダが3割弱、スイングヤーダが1割強を占めている(図IV−29)。

高性能林業機械を活用して高い生産性を実現するためには、工程数が少なく、単純で、少人数で運用可能な組合せとなるよう、高性能林業機械を適切に組み合わせて配置することが重要である。

作業システム全体の生産性の向上を図るためには、各工程の処理速度を早めるとともに、工程間の連携を円滑なものにすること等により、森林から土場まで丸太がよどみなく流れるようにすることが基本となる。高い生産性は一朝一夕に実現できるものではなく、作業システムの運用を最適化していく継続的な取組が必要である。

また、我が国の森林や地形等の条件に適応した高性能林業機械の開発・改良と、これらを組み入れた効率的な作業システムの構築が喫緊の課題となっている。林野庁では、大径木に対応したハーベスタヘッド等の開発や、国内外の先進的な林業機械や木質資源の新たな利用に対応した林業機械等の導入・改良等を実施している(事例IV−5)。

事例IV-5 新たなフォワーダの開発

建設機械製造業者のI社では、平成22(2010)年に、ホイール(車輪)とクローラ(無限軌道)を組み合わせた新たなタイプのフォワーダを開発した。我が国の林道では、降雨等で地表が水分を含んだ場合、ホイールのみでは、ぬかるみにはまりやすい。また、建設機械をもとにしたフォワーダでは、速度が遅く、材を積んだときのバランスが悪い。このため、新たなフォワーダでは、前輪をホイールとして走行抵抗を軽減し走行性を高め、後部は軟弱地盤に対応するため、接地圧の低いクローラを採用した。
 フォワーダの運転台と荷台を分けたことで、積載した材の重心がクローラの中央部に掛かり、安定した状態での走行が可能となった。また、フォワーダ自体を前後で折れ曲がる構造にしたことにより、カーブでの小回り性能が高まった。


お問い合わせ先

林政部企画課
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219
FAX:03-3593-9564

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