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ホーム > 森林・林業白書 > 平成22年度 森林・林業白書(平成23年4月26日公表) > 平成22年度 森林・林業白書 全文(HTML版) > 第1部 第III章 第2節 国土保全の推進(3)


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第1部 第III章 第2節 国土保全の推進(3)

(3)森林被害対策の推進

(ア)松くい虫被害 

「松くい虫被害」は、マツノマダラカミキリにより運ばれた体長約1mmの「マツノザイセンチュウ」がマツ類の樹体内に侵入することによりマツ類が枯死する現象であり、樹木の伝染病(マツ材線虫病)である。

松くい虫被害は、明治38(1905)年ごろ長崎で発生したものが我が国における最初の記録とされている。全国の松くい虫被害量(材積)は、昭和54(1979)年度の243万m3をピークに減少傾向にある。平成21(2009)年度には約59万m3とピーク時の4分の1程度まで減少しているが、年によって被害は変動し、依然として我が国の森林病害虫被害の中では最大の被害となっている。近年では、高緯度、高標高地域など従来被害がなかったマツ林で新たな被害が発生している。特に、東北地方は、全国の被害の割合の2割程度を占めており、被害発生地域の北上がみられる(図III-15)。

平成22(2010)年1月には、青森県で初めて松くい虫被害の発生が確認され、28年ぶりに新たな都府県での発生となった。平成22(2010)年4月現在、被害の発生地域は、北海道を除く全国46都府県のマツ林となっている。

林野庁では、松くい虫被害の拡大を防止するため、「森林病害虫等防除法」(昭和25(1950)年施行)に基づき、都府県と連携しながら、公益的機能の高い保全すべきマツ林等を対象として、薬剤散布や樹幹注入等の「予防対策」や被害木の伐倒くん蒸等の「駆除対策」を実施している。また、それ以外のマツ林等では、広葉樹等への樹種転換による保護樹林帯の造成等の対策を実施している。被害の先端地域である東北地方では、林野庁と秋田県、青森県が協力して、防除帯の設置や監視活動の強化等の防除対策に全力で取り組んでいる。


(イ)「ナラ枯れ」被害 

「ナラ枯れ」は、カシノナガキクイムシがナラ・カシ類等の幹にせん入して、体に付着した「ナラ菌(学名:Raffaelea quercivora(ラファエレア・クエルキボーラ))」を樹体内に多量に持ち込むことにより、ナラ・カシ類の樹木が集団的に枯死する現象であり、樹木の伝染病である(図III-16)。

文献で確認できる最古のナラ枯れ被害は、昭和初頭(1930年代)の宮崎県と鹿児島県での被害である。全国のナラ枯れ被害量は、平成14(2002)年度以降、特に増加しており、平成21(2009)年度は材積で23万m3となっている(図III-17)。最近のナラ枯れ被害は、本州の日本海側を中心に発生している。平成22(2010)年度には、東京都(八丈島、御蔵島、三宅島)、青森県、岩手県、群馬県、静岡県の5都県で新たな被害が発生したほか、奈良県では10年ぶりに発生し、被害地域は29都府県にまで拡大している。

ナラ枯れの防除では、被害の発生を迅速に把握し、初期段階で防除を行うことが重要である。林野庁では、被害の拡大を防止するため、被害木の薬剤によるくん蒸・焼却によるカシノナガキクイムシの駆除、健全木への粘着剤の塗布やビニールシート被覆によるカシノナガキクイムシの侵入予防等の対策を推進している。平成22(2010)年度からは、新たに、殺菌剤の樹幹注入による予防対策を導入している。

また、独立行政法人森林総合研究所等では、新たな防除技術である「おとり木トラップ法(*14)」の開発や総合的な被害防止マニュアルの作成に取り組んでいる(事例III-8)。

カシノナガキクイムシと「ナラ枯れ」の被害木 カシノナガキクイムシ 「ナラ枯れ」の被害木

事例III-8 「おとり木」と「おとり丸太」によるカシノナガキクイムシの誘引技術

山形県では、「おとり木」と「おとり丸太」を用いてカシノナガキクイムシを誘引する防除試験を実施した。
 防除試験では、ナラ枯れ被害が比較的少ない地域のナラの林分0.1haにおいて、林内に生育する30〜40本のナラを対象に殺菌剤の樹幹注入を施し、そのうちの約1割を「おとり木(樹幹にドリルで穴を開けてカイロモンを発生させ、フェロモン剤を装着した木)」としてカシノナガキクイムシを誘引した。その結果、当該林分に、約4万匹のカシノナガキクイムシが誘引された。被害の少ない地域の場合、おとり木設置林分の周辺では、本方法を施用せず放置した場合と比較して、ナラの枯死本数を9割程度軽減できることが明らかになった。
 また、健全なナラ類の丸太を大量集積して、フェロモン剤を装着した「おとり丸太」は、1m3当たり2万匹を誘引することができ、効率的に誘引する手法になるものと考えられた。
 今後、多様な現場での実証試験による技術の確立により、「おとり木」と「おとり丸太」を活用した面的防除への展開が期待される。


(*14)あらかじめ殺菌剤を樹幹注入して、ナラ菌及びカシノナガキクイムシの餌となる酵母類の繁殖を抑制したナラに、合成フェロモンによりカシノナガキクイムシを誘引する方法。従来の予防手法と比較して、面的な予防が可能となる。



(ウ)野生鳥獣被害対策の推進 

近年、野生鳥獣の生息域の拡大等を背景として、シカ、クマ等の野生鳥獣による森林被害が新たな地域で発生する傾向にあり、全国で年間約5〜7千haの被害が報告されている。被害面積のうちシカによる枝葉や樹皮への食害が約7割、クマによる剥皮被害が約1割を占めている(図III-18)。

シカは、北海道から沖縄まで全国に生息しており、林内以外に、林縁、伐採跡地等を餌場としている。シカの密度が著しく高い地域の森林では、シカの食害によって、シカの口が届く高さ約2m以下の枝葉や下層植生がほとんど消失し、都市公園のような景観を呈している場合がある(*15)。このような森林被害は、食害による下層植生等の喪失、踏み付けによる土壌流出等により、生物多様性の保全を始めとした森林の有する多面的機能に影響を与える可能性もある。

シカによる被害については、全国約1万4千か所で実施している森林資源モニタリング調査の結果でみると、シカの生息が確認されたプロット数、被害が確認されたプロット数ともに、大きく増加している(図III-19)。

また、クマは、主要な餌となる堅果類(ミズナラ等のドングリやブナの実)の凶作等により餌が不足した場合には、行動圏を拡大して、農地や集落に出没することが知られている(*16)。平成22(2010)年度には、堅果類の凶作地域等において、クマの人里への出没による人身被害が145件(2月末時点暫定値)発生した(*17)。これは、平成19(2007)年度から平成21(2009)年度の年間被害件数(平均50件)を大きく上回る件数である。さらに、近年、クマによる森林被害(クマ剥ぎ)が増加傾向にある。

このような中、野生鳥獣による森林被害への対策として、森林整備と一体的な防護柵やテープ巻き等の被害防止施設の設置やシカ等の個体数の調整(捕獲)を中心とする対策がとられている(事例III-9)。また、捕獲鳥獣の肉等を食材として利活用する取組が全国的に広がっている(事例III-10)。

一方、野生鳥獣捕獲の担い手である狩猟者は、年々減少するとともに高齢化が進行していることから、狩猟者の育成・確保が課題となっている。

このほか、被害対策のため、新たな防除技術の開発・普及、捕獲技術者の養成、緩衝帯の設置、関係者の連携による一体的な被害防止施設の設置、地域の特性に応じた広葉樹林の育成等が行われている。

事例III-9 エゾシカ被害の対策に「囲いワナ」を活用する取組

北海道の民有林と国有林では、エゾシカ被害への対策として「囲いワナ」を活用する取組が進んでいる。
 釧路市の財団法人前田一歩園財団では、平成16(2004)年から、阿寒国立公園内に所有する森林において、エゾシカによる剥皮被害や稚樹の食害対策として、フェンスで囲んだ区画に餌でエゾシカを誘い込む「囲いワナ」を活用している。同財団では、餌不足となる冬季に、てんさいの絞りかす(ビートパルプ)を餌に使ってエゾシカを囲いワナに誘導し、作業員が誘導状況を監視カメラで確認後、「囲いワナ」の扉を閉めてエゾシカを捕獲している。捕獲されたエゾシカは、食用等として有効利用されている。
 また、北海道森林管理局では、北海道白糠町において、エゾシカ被害増加への対策として、個体数調整やエゾシカ肉の有効利用について検討を行った。検討結果を踏まえて、平成21(2009)年度には、「囲いワナ」を導入して37頭のエゾシカを捕獲した。さらに、捕獲した個体の食肉としての有効利用を図るため、食肉加工業者、地元市町村、学識経験者、養鹿事業者等との連絡調整体制を整備している。

事例III-10 イノシシやシカの肉を食材として利用する取組

熊本県山都町の県立矢部高校の生徒は、平成19(2007)年度から、捕獲されたイノシシやシカの肉、有機米の栽培に使用されていたアイガモの肉を使った「猪鹿鳥カレー」の開発に取り組んでいる。同カレーは、肉の臭みを消して柔らかさを出す工夫や独自のスパイスの開発を経て、「ボタンカレー」(イノシシ肉)、「天使のカレー」(シカ肉)、「カモンカレー」(アイガモ肉)と名付けられた。
 同校では、平成21(2009)年度に「猪鹿鳥カレー」をイベントに出品し、その収益を活用して同町の町有林にクヌギを植栽した。今後も野生鳥獣対策と森林整備に貢献するため、収益を活用した植林活動に取り組むこととしている。


(*15)農林水産省「野生鳥獣被害防止マニュアル ─イノシシ、シカ、サル(実践編)─」平成19(2007)年3月

(*16)環境省自然環境局「クマ類出没対応マニュアル」平成19(2007)年3月

(*17)環境省ホームページ「野生鳥獣に係る各種情報 捕獲数及び被害等の状況」



(エ)林野火災と森林国営保険 

(林野火災は長期的に減少傾向)

林野火災の発生件数は、短期的な増減はあるものの、長期的には減少傾向で推移している。平成21(2009)年における林野火災の発生件数は2,084件で、焼損面積は1,064haであった(図III-20)。

一般に、林野火災は冬から春に集中して発生しており、原因のほとんどは不注意な火の取扱いなど人為的なものである。このため、入山者が増加する春を中心として、防火意識を高める啓発活動が行われている。


(森林国営保険の加入率は漸減傾向) 

森林国営保険は、「森林国営保険法」(昭和12(1937)年施行)に基づき、政府が保険者となり、森林所有者を被保険者として、火災、気象災、噴火災により森林に発生した損害をてん補する保険事業である。森林国営保険は、林業にとって不可避の火災や自然現象による災害に対するセーフティネットとして重要な役割を果たしている。

平成16(2004)年度には、台風による風倒木被害等が多発したことから、平成17(2005)年から平成19(2007)年の保険金支払額は平年の10倍以上となった。

森林国営保険への加入率は漸減傾向にあり、平成21(2009)年度末現在、13.3%である(図III―21)。林野庁では、加入促進のため、森林国営保険が林業経営の安定化に果たす役割を広く周知するとともに、森林所有者が活用しやすい保険とするため、保険金支払の迅速化や事務の効率化を進めている。

なお、平成22(2010)年10月に、行政刷新会議が実施した「事業仕分け」においては、森林保険特別会計については、「廃止(国以外の主体へ移管)」、「早急に、移管する主体を検討。それまでの間、暫定的に区分経理を維持」、積立金の取扱いについては、「積立金の水準を見直し、現在の保険料水準に反映」と評価された。林野庁では、これを踏まえ、具体的な検討を進めることとしている。


お問い合わせ先

林政部企画課
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219
FAX:03-3593-9564

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