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ホーム > 森林・林業白書 > 平成21年度 森林・林業白書(平成22年4月27日公表) > 平成21年度 森林・林業白書 全文(HTML版) > 第1部 第I章 第2節 林業の生産性向上の取組(3)


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第1部 第I章 第2節 林業の生産性向上の取組(3)

(3) 素材生産 

素材生産は、森林から丸太を生産する林業の作業である。丸太という大きな重量物を取り扱うことから、生産性の向上のためには、立木の伐倒(伐木)、木寄(きよ)せ、枝払(えだはらい)・玉切(たまぎり)(造材)、林道沿いの土場への運搬(集材)という工程に応じて開発されている林業機械を有効に活用していくことが鍵となる(*14)。


(*14)主な高性能林業機械について本章末尾のコラムを参照。なお、本稿では、生産性の向上の観点から高性能林業機械を取り上げるが、高性能林業機械の活用は、生産性向上のみならず、労働負荷の軽減や労働安全の確保という面からも重要である。



(林業機械の保有状況等)

我が国における高性能林業機械の導入は昭和60年代に始まり、平成20(2008)年現在、約3,800台が保有されている。内訳をみると、プロセッサが約3割を占めており、プロセッサ同様に造材作業に使用されることの多いハーべスタと合わせると両者で約5割となる。このほか、フォワーダが3割弱、スイングヤーダが1割強を占めている(図Ⅰ-9)。高性能林業機械の稼働率は、徐々に向上し、プロセッサ・ハーベスタで約60%、フォワーダで約50%となっている。なお、チェーンソーや集材機をはじめとする在来型の林業機械は減少している。



(現状と課題)

素材生産のうち、高性能林業機械を作業工程の一部にでも用いた素材生産の生産性は、平成20(2008)年度現在、主伐で5.26㎥/人日、間伐で4.35㎥/人日と全体平均を若干上回る水準となっている。また生産費は、主伐では約5,162円/㎥と全体平均を1,200円/㎥ほど下回っているものの、間伐では、償却費・間接費がかさむことから、約9,144円/㎥と、全体平均を200円/㎥ほど下回る水準にとどまっている(表Ⅰ-3)。

なお、平成20(2008)年度の我が国の素材生産量のうち、高性能林業機械を用いて生産されたものは3分の1程度となっている。

このように、素材生産については、高性能林業機械の保有台数は増加しているものの、その成果は必ずしも十分ではなく、素材生産の生産性の向上や生産費の縮減が課題となっている。



(生産性・生産費の目標)

林野庁の低コスト作業システム構築事業では、高い生産性と低廉な生産費を実現している欧州等の諸外国の状況を勘案し、高性能林業機械を用いた作業システムによる素材生産について、伐採からトラック積込地点までの生産性を10㎥/人日以上、生産費を定性間伐(定性的な点状間伐)で5,000円/㎥以下、列状間伐で3,500円/㎥以下にすることを目標としている。

この10㎥/人日という生産性は、特定の作業現場において一時的に達成されるべき目標ではなく、作業現場間の林業機械の移動等の段取りも含めて年間を通じた平均値として達成されるべき目標値である。したがって、4人のオペレータで運用される作業システムであれば、1年間の稼働日数を220日とした場合、8,800㎥程度が事業量のおおまかな目安となる。


(生産性向上に向けた作業システムの改善)

高性能林業機械を活用した素材生産の生産性(間伐)を個別の林業事業体に着目してみると、10㎥/人日を大きく超える生産性を達成している林業事業体が既に存在している一方で、数㎥/人日程度という生産性にとどまる林業事業体も存在している状況にある(表Ⅰ-4)。

もとより、素材生産の生産性は、地形・地質等の地況や、樹種・蓄積・樹高・直径等の林況、路網の整備状況等の諸条件の影響を大きく受けるものではあるが、高性能林業機械そのものの性能に大きな差がない中、実際の生産性に極端な差が存在していることは、高性能林業機械を単に導入するだけでは必ずしも生産性が向上するものではなく、その使い方が重要であることを示唆している。

実際、高性能林業機械を導入したにも関わらず、充分な生産性の向上が図れなかった林業事業体の中には、高い生産性を実現している先進的な林業事業体の指導を仰ぎ、作業システムの運用を改善することにより、生産性の大幅な向上に成功した林業事業体もみられるところであり、高性能林業機械の組合せや運用等の使い方に工夫の余地は大きいと考えられる。

ここでは、これまでの高性能林業機械の導入実績を踏まえつつ、その組合せや運用のあり方等について記述する。


事例I-4 作業システムの運用改善

公開視察会の状況

鹿児島県の素材生産業者であるU社では、伐採(チェーンソー)→木寄せ(グラップル)→造材(ハーベスタ)→積込(グラップル)→集材(フォワーダ)という作業システムで素材生産を行っていたが、生産性が十分には向上しなかった。このため、先進林業事業体の指導を仰ぎ、作業システムの運用の改善に取り組んだ。

この取組の中で、ある工程が完了してから次の工程に着手するという直列的な作業を、連携をとりながら全工程を同時に実施する並列的な作業に改めることにより、生産性が3.0㎥/人日から7.3㎥/人日へと大幅に向上することが実証された。今後、並列的な作業システムを積極的に実施することとしている。

 


事例I-5 我が国における主な作業システム 

高性能林業機械を用いた作業システムは、傾斜と路網密度により、車両系作業システムと架線系作業システムに大別される。我が国における主な作業システムは次のとおりである。

(1)車両系の作業システム

路網から伐倒木を機械で直接取る作業システムである。機械で木寄せできる範囲は路網の両脇20数m(伐倒木の長さとベースマシンのアームの長さの合計)であるため、高密度の路網が必要となる。我が国の育成林の傾斜分布に照らして、我が国で導入できる範囲が最も広い作業システムである。ハーべスタやグラップルの使い方により、次のような作業システムがみられる。

車両系の作業システム

路網からアームが届く範囲の立木はハーベスタで伐倒・木寄せ・造材する。それ以外の立木はチェーンソーで伐倒後にハーベスタで木寄せ・造材する。京都府の日吉町森林組合では、定期的な間伐の場合、生産性は9~14m²/人となっている。



車両系の作業システム

立木をチェーンソーで伐倒した後、プロセッサ(又はハーベスタ)で木寄せ・造材し、フォワーダで集材する。飛騨市森林組合では、列状間伐を一部組み合わせた定期的な間伐の場合、生産性は7~10m²/人日となっている。



車両系の作業システム

生産性の高いプロセッサを造材に専念させるために木寄せ専用のグラップルを組み入れた作業システムである。兵庫県の素材生産業者Yでは、列状の間伐の場合、生産性は10㎥/人日超となっている。



(2)架線系の作業システム

架線系の作業システム

集材にスイングヤーダを組み入れた作業システムである。路網から70~100m程度以内の範囲が採算ベースで効率的な集材が可能であるといわれており、高密路網の開設ができない急傾斜地を中心に多数の導入事例がみられる。なお、多くの場合、フォワーダで2回目の集材を行っているが、本来は直接トラックに積み込んで運材するのが望ましい。三重県の中勢森林組合では、列状間伐の場合、生産性は5~9㎥/人日となっている。

(3)その他の作業システム

路網周辺はグラップルで木寄せし、その範囲外はスイングヤーダで集材するなど、複合的な作業システムが存在する。タワーヤーダやスキッダを用いた作業システムもみられるが、事例は限られている。

(参考) 欧州における主な作業システム

(1)車両系の作業システム

車両系の作業システム

伐木から集材までのすべての工程を機械で処理する作業システムである。工程が簡素であり、2名のオペレータで運用可能なことなどから、生産性の向上を図りやすい。
我が国では、林業機械が乗り入れ可能な緩傾斜地が限られていることや、林内の走行性の高いベースマシンが普及していないことから、ほとんど導入されていない。


(2)架線系の作業システム

架線系の作業システム

ドイツやオーストリアの急傾斜地で導入されている作業システムである。タワーヤーダーにはプロセッサが装備されていおり、1名のオペレータで集材・造材が可能となっている。このため、チェーンソーによる伐倒を含め、3名のオペレータで作業システムの運用が可能となっている。


(高性能林業機械の組合せ) 

① 基本的な考え方

高性能林業機械を活用して高い生産性を実現していくためには、高性能林業機械を適切に配置した作業システムが前提となる。作業システムには様々な形態が想定されるが、工程数が少なく、単純な組合せで、少人数で運用可能な作業システムが基本となる。

② 車両系作業システムと架線系作業システム

車両系作業システムと架線系作業システムを比較すると、我が国のこれまでの実績では生産性・生産費の点で車両系が優れている。また、後述する我が国の傾斜分布(表Ⅰ-7)を勘案すると、我が国の育成林の相当部分で車両系に必要な高密度の路網の整備が可能であることから、高性能林業機械の導入に当たっては車両系をまず検討し、路網の開設が困難な場合等に架線系の選択することが望ましい。

しかし、高性能林業機械の導入事例の中には、高密路網が整備されているにもかかわらずスイングヤーダを用いたり、高密路網が未整備のままグラップル(ウインチ付き)による木寄せを行うなど、導入の合理性や作業効率の観点から課題のある事例があり、各地域の地況・林況や路網の状況に適合した作業システムの選択が求められる。

我が国では、架線系作業システムとしてスイングヤーダが使用されることが多いが、スイングヤーダは、実用的な架線長が70m程度にとどまることに加え、簡易とはいえ架線の架設・撤去の手間を要する。このため、一部の林業事業体では、生産性の更なる向上を目指し、スイングヤーダによる集材からグラップルによる木寄せへと変更を検討する動きもみられる。

先に述べたとおり、欧州の林業先進国であるオーストリア等は、架線系作業システムとしてタワーヤーダを用いて高い生産性を実現している。我が国においては、これまでに数百台のタワーヤーダが導入されたものの、本格的な利用には至っていない。これは、タワーヤーダが走行可能な林道が十分には整備されていなかったことや、走行が可能であっても控え索(*15)の設置ができないなどタワーヤーダの運用が困難であったためと考えられる。しかし、育成林の3割程度は架線系作業システムでの対応を必要とする急傾斜地であること、森林の成長に伴い大径化する材を簡易な索張りで搬出することは困難であることから、我が国の地形や林分に適合したタワーヤーダの開発・普及が課題となっている。

なお、在来型の架線集材を用いた作業システムについては、プロセッサ等の高性能林業機械を併用することにより一定程度の生産性の向上は見込まれるものの、10㎥/人日や20㎥/人日といった高い生産性を達成することは極めて困難である。特段の事情がない限り、路網の整備を図り、高性能林業機械を主体とする作業システムへの切り替えを検討することが求められる。

事例I-6 ロングリーチグラップルを使用した木寄せ

スーパーロングリーチグラップルを用いた木寄せ

岐阜県の素材生産業者であるK社は、平成18(2006)年度から高性能林業機械を活用した効率的な間伐を実施してきたが、スイングヤーダやウインチ付きグラップルといったワイヤー掛けでの木寄せでは生産性の向上に限界があった。このため、アーム長20mのロングリーチグラップルを用いて、様々な条件下で試験的な運用を行った。この結果、幅員3.5m以上の路網が必要であること、通常のグラップルを併用する必要があること等の制約はあるものの、素材生産の生産性を7㎥/人日から11.8㎥/人日に向上させることができた。今後、欧州製の林業機械等も試用して、生産性の飛躍的な向上に取り組んでいくこととしている。


(*15)タワーヤーダのタワーの転倒防止のために設置されるワイヤーロープ



③ 高性能林業機械のサイズ

高性能林業機械のサイズは様々であるが、「0.45サイズ」と「0.25サイズ」の機械が多く使われている(表Ⅰ-5)。0.45サイズの機械は、0.25サイズの機械に比べて処理能力は高いものの、幅員の広い路網が整備されていることが導入の前提となるほか、十分な事業量や販売先を確保することも必要となる。他方、0.25サイズの機械は、小型・安価で導入しやすい一方、森林の成長に伴い長尺・大径の材が増加した際に対応が困難になる可能性もある。

高性能林業機械の導入に当たっては、林内路網の幅員、取り扱う材の大きさ、想定される事業量等を勘案して機械のサイズを決定することが重要である。なお、0.25サイズでありながら0.45サイズ並のパワーを有する機種も開発されており、路網幅員の狭い作業現場で大径材を取り扱う場合等に有力な選択肢になると考えられる。



④ 高性能林業機械等の処理能力

高性能林業機械等の処理能力は異なっており(表Ⅰ-6)、作業システム全体の生産性は処理能力が最も低い工程の影響を大きく受ける。

例えば、0.45サイズのプロセッサに3トン積等の小型フォワーダを組み合わせている事例がみられるが、この場合、プロセッサの処理能力に比べフォワーダの処理能力が低いことから、これに引きずられる形で作業システム全体の生産性が頭打ちとなる。また、スイングヤーダ・プロセッサ・フォワーダを各1台組み合わせた場合には、プロセッサの処理能力がスイングヤーダ・フォワーダに比べ突出していることから、作業システム全体の生産性の向上を図ることは容易ではないと考えられる。

このようなことから、高性能林業機械の導入に当たっては、処理能力のバランスを十分に考慮することが重要である。



⑤ 機種の選定

高性能林業機械は、サイズの大小のほか、プロセッサの材の送り機構や、グラップルのヘッドの固定の有無、フォワーダのダンプ機構の有無等、様々な仕様の違いがあり、その性能・操作性は機種により大きく異なる。例えば、プロセッサの造材能力は材の硬軟に大きく影響され、スギの枝は落とせても、ヒノキやカラマツの枝には対応できない場合がある。

高性能林業機械の導入には高額の投資が必要であり、安易な導入が経営に過度の負担となることのないよう、レンタルやデモ機で性能や操作性を事前に確かめ、生産性や事業規模を試算するなど、慎重に機種を選定することが重要である。


(作業システムの運用)

① 基本的な考え方

高性能林業機械を適切に組み合わせた作業システムであっても、単に高性能林業機械を動かすだけでは生産性の向上は困難である。作業システム全体の生産性の向上のためには、各工程の処理速度を早めるとともに、工程間の連携を円滑なものすることなどにより、森林から土場まで丸太がよどみなく流れるようにすることが基本となる。

② 各工程の生産性の向上

各工程の処理速度は、オペレータの操作の巧拙に大きく影響される。ある素材生産業者のプロセッサのオペレータは、材の送りを自動ではなく手動で行うことにより測長に要する時間を短縮する、材の測長をしながらアームを旋回させる、玉切の際に丸太が動いてチェーンソーのバーが戻らなくなることを防ぐためにバーを戻すタイミングを早めるなど工夫を凝らした機械操作により、高い生産性を実現している。他方、生産性が上がらない林業事業体の中には、オペレータの機械操作が未熟な事例もみられるところである。高性能林業機械を導入した際にはオペレータの操作技術の向上をまず図り、各工程の生産性を十分に高めることが必要である。

事例I-7 機械操作の習熟の違いと作業時間の関係

熟練者(左)と初心者(右)のグラップルの軌跡

森林総合研究所及び森林技術総合研修所林業機械化センターは、グラップルで丸太を車両に積み込む作業について、習熟度の異なるオペレータによる作業を比較した。

この結果、作業時間は初心者で31分、熟練者で約14分となった。この差の原因を分析したところ、熟練者の操作には、①作業機を無駄の無い必要最小限の範囲内で動かしている、②複数の操作を同時に行っている、③丸太の重心を見極めて掴むことにより丸太の挙動が安定しているなどの特徴があることが明らかとなった。

今後、オペレータを支援するための具体的手法について検討することとしている。

③ 複数の工程の同時稼働

各工程で高い生産性を実現しても、ある工程が完了してから次の工程に着手するという直列的な作業の進め方では、作業システム全体の生産性の向上は困難であり、各工程を同時並行的に稼働させることが必要である。このことは、高性能林業機械の稼働率を高める観点からも重要である。

ただし、先に述べたとおり高性能林業機械等の処理能力は異なっていることから、処理能力のバランスを考慮して機種を選定したとしても、工程ごとの処理に遅速が生じることが多い。このため、作業システム全体の生産性の向上のためには、工程間の処理速度を均衡させていく工夫が必要である。なお、この際には、作業システムの中で最も高価な高性能林業機械の稼働率を優先的に高めるという視点が求められる。

例えば、グラップル・プロセッサ・フォワーダから構成される作業システムの場合、最も高価なプロセッサの造材の速度が比較的安価なグラップルでの木寄せの速度やフォワーダでの集材速度より早い。このため、プロセッサの稼働率が高まるよう、グラップルやフォワーダの工程の改善について検討することになる。グラップルでの木寄せについては、グラップルのアームの範囲外の伐倒木をウインチで地曳する例があるが、これに要する手間や時間を勘案し、集材範囲を狭めることが検討されよう。また、フォワーダでの集材については、集材距離が生産性に大きく影響することから、走行距離が最適な範囲となるよう土場の配置や路網ルート等を工夫することが有効である。

④ 工程間の連携の円滑化

工程ごとの処理速度が均衡しても、工程間の連携がかみ合わなければ生産性の向上は望めない。材の受渡しの際に次工程の作業を実施しやすくなるように配慮することや、各工程の作業が前後の工程の作業の遅速に影響されないよう工程間に一定の貯木スペースを設けることが有効である。

事例I-8 工程間の連携の円滑化

路網の谷側に木寄せされた伐倒木の造材

群馬県の素材生産業者であるK社は、素材生産に当たり、伐採しやすいように路網を開設する、グラップルで木寄せしやすいように路網に対して斜め方向に伐採する、プロセッサで造材しやすいように材の根元側をプロセッサ側に向けて路網の谷側に木寄せする、フォワーダに積み込みやすい位置に造材済みの材を置くなど、工程間の連携の円滑化に努めており、列状間伐の場合、8〜13㎥/人日の生産性を実現している。

⑤ オペレータの配置と多能工化

生産性の向上を図る際には、最小限の人数で作業システムを運用することも重要である。オペレータを各工程に固定的に配置するのではなく、例えば、フォワーダとグラップルのオペレータを兼務させる、各工程の作業の進ちょくに応じてオペレータの配置を変えることなどにより、それまでと同じ量をより少ない人数で生産できれば、その分、生産性が上がることになる。ただし、各工程間の連携を取りつつ、このようなオペレータの柔軟な配置を可能とするためには、工程管理ができる人材や複数の機械を操作できるオペレータの育成が前提となる。

⑥ 継続的な取組の必要性

高い生産性は一朝一夕に実現できるものではなく、作業システムの運用を最適化していく継続的な取組が必要である。

このためには、作業日報等の分析により各工程の作業量や待ち時間を把握することがまず必要となる。特に待ち時間については、機械の稼働時間の測定事例の中には1日の半分以上が待ち時間という事例もみられるほどであり、1分1秒単位での計測が求められる。その上で、最も処理速度の遅い工程を把握し、その原因を分析し、改善を講じていくという一連のプロセスを繰り返していくことが重要である。

事例I-9 生産性向上に向けた継続的な取組

ビデオ撮影による作業時間の調査

愛媛県久万(くま)広域森林組合では、機械の稼働時間や30分ごとの作業内容等をオペレータに記録させるとともに、作業の様子を抽出的にビデオで撮影し、これらのデータの分析に基づき、作業路開設や素材生産等の生産性向上等に努めている。

これまでの取組では、伐倒を担当する作業員に他の工程を兼務させることにより、オペレータを1名減らすことが可能となった。このような取組の結果、生産性が3.0㎥/人日から7.2㎥/人日に向上するなどの成果を得ている。

⑦ その他

素材生産の効率化が図られた場合、一日に数十㎥の丸太が生産されることになる。この場合、これらの丸太が滞留すると素材生産が滞ることとなるため、土場のスペースを十分に確保するとともに、土場から工場等への運材を確実に実施することが必要である。



(事業量の確保等)

高性能林業機械は高価であり、減価償却費や維持修繕費といた固定費が相応に高額となる(*16)。このため、高性能林業機械の導入を生産費の縮減につなげていくためには、稼働日数(時間)を増やすことにより、稼働時間・事業量当たりの固定費の低減を図っていくことが不可欠である。この点、オーストリア等においては、林業機械の稼働時間は年間1,500~2,000時間が通例であり、中には交代制勤務により年間3,000時間という稼働時間を確保している事例もある。これに対し、我が国の高性能林業機械の稼働時間は最長でも年間1,000時間程度と見込まれ、年間数日の稼働という事例もみられる。このため、施業の集約化等により、稼働日数の裏付けとなる十分な事業量を確保していくことが必要である。

なお、事業量が十分に確保されても、作業現場が小規模では、現場間の移動に手間・経費を要し、生産性向上・生産費縮減にはつながらない。作業現場の団地化を図り、1か所当たりの面積を増やすことが必要である(*17)。


事例I-10 開発の進む高性能林業機械

1 大径木対応型ハーべスタヘッド2 クローラ式運材トラック3 バイオマス対応型フォワーダ

 




(*16)0.45サイズのプロセッサ・グラップル・フォワーダの3点を約4,000万円で購入し、これを5年で償却すると、年間約800万円の減価償却費を要することとなる。

(*17)例えば、ある林業事業体では、最低の事業面積を5ha程度としている。



(高性能林業機械の開発等)

素材生産の生産性向上の取組は、当面は、我が国で現在普及している高性能林業機械を用いた作業システムが前提となる。

我が国の高性能林業機械は、クローラタイプ(*18)の建設機械をベースマシンとしているが、これは、普及台数が多いため価格が比較的安く、修理等のサービス網が充実しているなどの点では有利である一方、林内の走行性が悪い、走行速度が遅いなどの点で不利となっている。特にフォワーダについては、間伐箇所の奥地化に伴い集材距離が長くなる場合など、速度や積載量の制約から生産性向上の足かせとなることが多い。

このため、我が国の森林や地形等の条件に適応した高性能林業機械の開発・改良と、これらを組み入れた効率的な作業システムの構築が喫緊の課題となっている。

林野庁では、①人工林の高齢級化に伴って増加が見込まれる大径木に対応したハーベスタヘッドや、これを稼働できるパワーを有しつつ幅の狭い路網を走行可能な小型のベースマシンの開発、②地形条件・林分条件等の地域特性に対応した機械の開発・改良、③木材生産とも連携した低コスト・効率的なバイオマス収集・運搬システムに必要な機械の開発を行っている。また、国内外の先進的な林業機械や木質資源の新たな利用に対応した林業機械等を導入するとともに、我が国の作業条件を踏まえて改良することにより、作業効率を飛躍的に向上させた新作業システムを開発・実証することとしている。

また、民間企業においても、林内路網での走行性能や木材の積載性を高めた一部ホイールタイプ(*19)のフォワーダの開発が進められている。

なお、林野庁では、高性能林業機械等の適切な維持・管理・利用の拡大を図るため、機種ごとの標準的な功程や維持・修理経費等をまとめた性能表の整備等も進めている。


(*18)無限軌道、覆帯

(*19)車輪


お問い合わせ先

林政部企画課
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219
FAX:03-3593-9564

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