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G8 森林行動プログラム―背景文書

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G8森林行動プログラム-背景文書(仮訳)

 

目次

 

序論

 

 


 

  序論

  「G8森林行動プログラム」は、世界の森林を脅かしつづける圧力に対処し、持続可能な森林経営を実現する上で特に重要な5分野、すなわち(1)モニタリングと評価、(2)国家森林プログラム、(3)保護地域、(4)民間セクター、及び(5)違法伐採、に取り組むため1998年に開始された。最初の「G8森林行動プログラム実施進捗状況報告書」は、G8の外相が2000年7月13日に宮崎市で会した際に報告され、その際、本行動プログラムに関する最終報告書を提出するよう、G8の森林専門家に対し指示が出された。「G8森林行動プログラム-背景文書」と題する本文書は、主としてG8が共同で行った活動に言及し、持続的な森林経営に向け今後の課題をとりまとめた「G8森林行動プログラム-最終報告書」を補完するものである。「背景文書」は、上記5分野へ対処するため、G8各国が、独自に、二国間で、或いは共同で行った取組についてより詳細な情報を提供するものである。

 1.モニタリングと評価

  G8各国の持続可能な森林経営に向けた努力と今後の計画の多くは、森林の現況から火災の影響に至るまで、様々な状況を評価するための信頼できる手法に依存している。G8各国は、持続可能な森林経営のための基準・指標を開発・活用するとともに、リモートセンシングや地理情報システム(GIS)技術を利用し、違法伐採の予防と検知から長期計画に至るまで様々な活動の強化に努めてきた。

  温帯林等の保全と持続可能な経営の基準・指標に関する作業グループ(モントリオール・プロセス)に加盟しているG8各国は、各国毎の森林の現況を評価した国別報告書である「モントリオール・プロセス第1回森林レポート」を2003年に発表するため現在作業を進めている。これらの報告書は、貴重な基礎データを提供し、各国がそれらに照らし合わせて自国の森林の状態の変化、政策の転換の必要性及び森林経営への新しい取組方策の必要性を検討したり、基準・指標の実施のためのパイロットプログラムを開発する際役立つであろう。さらに、「欧州森林保護閣僚会合」に加盟しているG8各国は、自国の森林の状態をモニタリング・評価するため、持続可能な森林経営のための包括的な基準・指標を開発した(汎ヨーロッパ・プロセス)。評価結果は、国或いは汎ヨーロッパでの使用を視野に入れ、林業及び環境分野における国際プロセスや国際機関に貢献している。

  モントリオール・プロセス及び汎ヨーロッパプロセスに加盟しているG8各国は、森林は国際的な財産であり国家の資源であるとの認識の下、開発途上国の国別報告書の作成を支援している。また、基準・指標の作成及び実施のためのワークショップの開催や専門技術という形で支援を行っている。

  G8各国は、また、国際熱帯木材機関 (ITTO) との緊密な協力の下に基準・指標を開発し、熱帯木材生産者がこれらの基準・指標を改良、実施する際に支援を行った。G8各国が支援したその他のITTOの活動には、ITTOの基準・指標の実施進捗状況に関する報告書のフォーマットの作成、これらの基準・指標の監査体制確立のためのガイドラインの策定、生産国が自国の森林をモニタリング・評価するための能力向上を目的としたプロジェクトの承認と資金援助が含まれる。

  日本は、2001年11月、横浜において、持続可能な森林経営の進捗状況に関するモニタリング・評価・報告に関する国連森林フォーラム(UNFF)での議論の活性化を目的とした、国の主導によるUNFF貢献国際専門家会合を開催した。本会合は米国及び他の数カ国の協賛の下に開催され、UNFFにおけるモニタリング・評価・報告に関する協議の場を提供した。

  G8各国は、多国間の地球観測衛星委員会によって開始された「全球森林被覆観測」を連携して支援した。本計画は、米国航空宇宙局、米国の他の関連機関、カナダ航空宇宙局、ヨーロッパ共同研究センター、ヨーロッパ航空宇宙局及び日本の宇宙開発事業団の拠出により実施されている。G8各国はまた、衛星データに基づき、森林被覆率を予測した全面的な世界地図の作成を支援した。

  イタリアは、国連食糧農業機関(FAO)によるナイル川流域諸国への援助の一環である、衛星リモートセンシングによる東アフリカの土地利用図作成プロジェクトの主たる支援国であった。2000年に完了したこの計画は、信頼性のある土地利用図の作成と、リモートセンシング能力の強化により、東アフリカ諸国の天然資源開発と持続可能な経営に関する計画能力を強化している。

  FAOが実施する森林の評価に関する事業への積極的な参加に加え、ドイツは、世界資源研究所(WRI)が実施している、アマゾンなど世界の主な森林地域において、手つかずの森林や手つかずの可能性のある森林の詳細な地図の作成、及び入手可能な場合には、手つかずの森林内における伐採権付与地域や他の開発地域に関するデータ収集を目的としたグローバル・フォレスト・ウォッチ事業を支援している。

  日本は、リモートセンシング技術を活用し、ブータン、ミャンマー、ネパール、フィリピン及びベトナム等アジア地域の森林の状況を分析するプロジェクトを実施し、これらの国々における森林管理計画の森林分布図や森林簿の開発に貢献した。

  G8各国は、世界寒帯林分布図作成事業の第2フェーズ-データの統合と分析-の実施を支援し、シベリアの森林の持続可能な経営政策の開発を支援することを目的とした「欧州委員会-ロシア共同のSib TREES事業」(「衛星による熱帯生態系環境観測事業」)の一環として、2000年時点での森林被覆を表した新しい土地利用図を作成した。フランスはロシア共和国と協力し、シベリアの森林を評価・モニターするために、リモートセンシング技術を活用することを目的とした事業を開始した。さらに、ロシア共和国は、自国の森林地帯を対象とする独自の環境モニタリングシステムを構築中である。

  カナダは、詳細かつ活用可能な林層の写真を作成するためのコンピュータソフトと航空機を使用したリモートセンシングを組合わせた費用効率の良い技術を開発した。この新技術を活用すれば、樹木を樹種等の特徴ごとに自動的に分類し、より正確で迅速に樹木調査簿を作成し、伐採期に入った地域のより詳細な特定や、保護もしくは更新の必要な地域の検知が可能となる。これに次ぐ「森林の持続可能な開発のための地球観測事業」では、連邦、地方及び各地域のパートナーが協力し合い、カナダの森林の持続可能な開発を宇宙からモニターする予定である。

  衛星データと関連する地図作製技術は、世界の熱帯湿潤林調査簿作成や森林の減少状況のモニタリングのための技術開発を目的とした欧州委員会の「共同研究センターTREES事業」を推進するために活用された。TREES 事業の第2フェーズによって、京都議定書に定められている基準年の1990年からの熱帯湿潤林面積の変化を記録した統計的に信頼しうる数値が示された。G8各国は、世界の森林の調査簿や地図の作製及びモニタリングのための事業を支援した。G8各国は、また、衛星画像を使用し、アジア、西アフリカ及び中南米におけるマングローブ林面積の変化の地球規模の評価を行った。

  フランスは、航空写真から衛星画像への技術進歩や、標本抽出理論から派生した統計予測に代わり空間予測が可能となった結果、モニタリング・評価の分野において大きく進歩した。

  ドイツは、二度目の連邦森林調査に取り組んでおり、従来の調査項目に成長、伐採及び生態系に関する項目を追加し、包括的な森林状況モニタリング活動を実施するなど、従来の調査からより発展したものとなっている。日本は、森林資源のモニタリング・評価のために、モントリオールプロセスの基準・指標を考慮した新たな「森林資源モニタリング調査」を開始した。英国は、公有及び私有の林地の広範な調査である「林地・樹木の全国調査」を行い、環境特性や木材資源の評価を行った。英国は、また、自国の林産業界の健全性と活力に関する独立した報告書を作成した。ロシア共和国は、連邦政府及び地域の森林生態系モニタリング活動を強化するため、GISに基づいた方法を開発し、年次森林調査への適用を開始した。

  米国は、モントリオールプロセスの基準・指標に基づき、自国の森林の状態や経営の現状と傾向の総合的な全国評価を推進している。この評価は、米国林業界からの全国的なインプットを活用しつつ実施されており、結果は2003年に発表されることになっている。フランスは、「フランスの森林の持続可能な経営のための指標」の第二版を出版したが、それには総合的なデータを含み傾向がよく示されており、1995年の初版との比較が容易になっている。

  米国森林局は、FAOとの協力の下、南米数カ国の森林資源調査簿の開発・適合・実施、及びモニタリング活動を支援している。さらに、米国は、資源データを収集・管理するために、リモートセンシング技術とGIS技術の統合に特化した「リモートセンシング応用センター」を維持管理している。実施事業は、植生・地表図、変化の検知、焼失地域の回復、野生動物生育地のモデル化、法規の実行に関する調査及び資源調査など広範に渡っている。国際的には、米国は、ブラジルのアマゾンにおける火災の原因究明や、メキシコ、ロシア及びアフリカの森林資源調査簿やモニタリングデータ作成の為に、そのリモートセンシング技術を活用してきた。

  アマゾン川流域における「大規模生物圏-大気圏事業」もまたG8からの支援を受けている。この事業では、森林面積を含む土地利用の変化がどのようにアマゾン川流域の生物学的、化学的、物理的機能に影響するか研究している。この事業は、最終的には、この地域がどのように機能し、どうすれば最善の持続可能な利用に導くことができるか、世界中の研究者が理解するための助力となるであろう。

  G8各国は、さらに、燃焼中の火災及び焼失面積の地図作成を目的とした地球規模のネットワークである「世界火災ウェブ計画」を支援し、この活動に参加した。また、地球全体の火災のデータを解析・統合している地球火災モニタリングセンターの活動にも参加した。

  これら多くの努力にもかかわらず、世界の森林に関する我々の知識はまだ不十分であると認識している。G8は、効果的なモニタリング・評価・報告を大変重要視すると共に、これらの知識がさらにあらゆる人々のためになるよう連携を深めていきたいと考えている。

  こういった状況の中で新しい可能性が垣間見られるのが、2002年7月にグアテマラで開催予定の「第2回基準・指標会議」である。G8各国はこの会議を促進、支援する予定である。本会議の目的は以下の通りである。

  G8各国は、二国間、多国間の開発援助プログラムを通じ、各国政府、地方自治体、先住民や地域社会が森林の状態をモニタリング・評価する能力を強化するための支援を行っていく予定である。

 2.国家森林プログラム

  全てのG8諸国において国家森林プログラムの策定は十分進んでいるものの、G8にも課題は多く残されている。恐らく、地球規模の共通課題である持続可能な森林経営に向けた開発途上国の取組みへの支援はさらに重要な課題である。国家森林プログラムは、このような目的を達成するために最も有益な枠組みの一つである。

  G8は、国家森林プログラムを策定し、また改良していくことの重要性や、自らが国際的なリーダーとして行動することの重要性を認識しつつ、自国の国家森林プログラムを見直し、森林に関する政府間パネル及び森林に関する政府間フォーラムの行動提案(IPF/IFF行動提案)の実施進捗状況について評価を行った。

  フランス議会は、2001年7月に、国際的な森林政策対話からの勧告を考慮に入れて、新たな森林法を採択した。新たな森林法は満場一致で可決されたが、これはフランス議会においては珍しいことである。

  日本は、2001年に林業基本法を改正し、新たに「森林・林業基本法」を制定した。この法律は新たに「森林・林業基本計画」を策定することを規定している。本計画は、基本的な方針や目標とともに、それらを実現するために必要な施策を定めている。本計画は、日本の国家森林プログラムの根幹をなし、おおむね5年毎に変更することとなっており、本計画に即して立てられる「全国森林計画」や「地域森林計画」も5年毎に見直されることとなっている。また、日本政府は、持続可能な森林経営の基準・指標を政策立案に適用する「森林資源モニタリング調査」を開始した。

  カナダは、4回にわたり「国家森林戦略」を実施してきており、最新のものは「国家森林戦略(1998-2003)持続可能な森林:カナダの約束」である。これまでの各戦略によって、持続可能な森林経営がより簡潔に定義されるとともに、カナダによる取組への決意がより確かなものとなってきた。カナダの「国家森林戦略」の根幹には、独立した機関による中間評価と最終評価も含まれている。最新の戦略の第1回目の評価では、戦略は積極的に実施されているという結論が出された。

  ドイツは、1999年9月に、現行の森林政策の要素を連邦レベルの国家森林プログラムに統合することを目的として、政府及び森林に関心のある非政府組織が一堂に会し円卓討議を行うプロセスを開始した。最初の成果は、2000年秋に取りまとめられた「国家森林プログラム1999/2000」である。2001年の春には、様々な関係者が本プロセスを少なくとも今後2年間は継続することに合意した。

  ロシア連邦は、1997年から2000年の間に、「ロシアの森」及び「森林火災管理」を含む林業関連の4つの連邦プログラムを導入した。2001年12月には、ロシア政府は、「ロシアの生態環境と天然資源2001-2010」と題する新たな連邦プログラムを採択した。このプログラムの主要構成要素として森林サブプログラムが含まれている。ロシア政府はまた、健全な経済及び持続可能な開発に向けて健全で競争力のある木材産業を目指した、木材産業の再構築のための連邦プログラムも作成する予定である。

  英国は、森林経営責任をスコットランド、ウェールズ及び北アイルランドに委譲するともに、持続可能な森林経営戦略を改訂、改善した。

  米国は、国有林の持続可能な経営を強調するとともに、持続可能性に向けての方向性を示し、更にはモニタリングの重要性を確認する、新たな規定案を発表した。また、米国は、議論の更なる統合や、連携と協力の確認を目的として、モントリオール・プロセスの7つの基準に従って、「資源計画アセスメント2000」を実施した。

  欧州委員会は、欧州共同体の種々の森林関連政策や事業を通じて、IPF/IFF行動提案の実施状況に関する独立かつ詳細な分析を実施した。この分析は、提案の実施状況や残された課題の程度や、IPF/IFF行動提案の欧州共同体との関連性を明らかにしたものである。この結果は、UNFF第3回会合への報告書となるとともに、欧州委員会による森林関係政策や事業の開発の際重要な要素となる。

  G8各国の活動範囲は、自国に限定されているわけではない。G8各国は、開発途上国が各国のニーズに合った国家森林プログラムの策定を支援するため、緊密な協力を行っている。G8各国は、インドネシアで政変が続く中においても、世界銀行主導のインドネシア支援国会合と協力して、インドネシアの国家森林プログラムの概念への公約と、違法伐採対策や天然林の用途転換の禁止、林産業界の再構築、及び地方分権化を目的とした8項目から成る行動プログラムの策定の取組を支援している。

  G8各国は、ブラジル政府と市民社会を巻き込んだ取組として、ブラジル熱帯雨林保全パイロットプログラムを支援し続けている。このプログラムの目的は、ブラジルの開発目標に合致しつつ、森林の環境的便益を最大限に発揮することにある。

  イタリアは、世界銀行と協力して、アルバニアへの技術援助を行う林業プロジェクトに拠出した。このプロジェクトは、森林経営担当の政府部局を強化するとともに、当該部局が森林経営企業へ移行することを容易にするものである。本プロジェクトでは、プロジェクト評価に関する研修の実施、及びアルバニアにおける森林現況モニタリングシステムの構築も行っている。

  英国は、マラウイ及びウガンダにおける国家森林プログラムの策定・実施を支援するための長期事業を開始した。また、開発途上国における気候変動と森林に関連する2つの調査も実施した。

  フランスは、優良事例の実行可能性を示し、人材育成を図ることを目的としたコンゴ川流域プロジェクトに携わっている。現在、保全地域及び伐採地域において、持続可能な森林経営の実践に必要な基礎データのとりまとめが行われている。

  ドイツは、カンボジア、カメルーン、エクアドル、エチオピア、ホンジュラス、インドネシア、ウガンダ、ベトナム等多くの開発途上国において、国家森林プログラムの策定・実施を支援している。ドイツは、国家森林プログラムに関連した支援の中で、国家レベルでの資金戦略の策定に焦点を当てている。

  日本もまた、アジア地域(例えば、インドネシア、ラオス、ベトナム)における国家森林プログラムの策定・実施を支援するとともに、流域管理、劣化した土地や森林の回復など、多くの開発途上国において国家森林プログラムに関連した優先課題への取組を行っている。

  カナダの二国間援助プログラムも、米国に加え、国家森林プログラムに関連し、多くの開発途上国における優先課題に取り組んでいる。これらの優先課題には、森林火災管理、移入種及び流域管理が含まれている。

  G8各国はまた、ベトナムにおいて、環境、経済及び国民の福祉に貢献することを目的とした森林回復の取組も支援している。2001年には、国家森林プログラムの原則の適用に基づいて、「森林セクター支援プログラム」が策定された。本プログラムは、ベトナムの森林分野に対する国内外の支援の実施に係る政策、戦略及び原則を定めている。

  G8各国は、自国の国家森林プログラムの策定・実施のこれまでの進捗状況や、開発途上国による同様の取組への支援を誇りにできるが、今後は、それらプログラムの背景にある原則を発展・推進し続けていくことが重要となるであろう。

  特に、あらゆる森林の価値を森林経営に反映させるためには、持続可能な森林経営への国民参加が不可欠であることが、G8各国間では広く受け入れられている。政府、先住民、産業界、森林所有者、労働者、環境保護団体、研究者及びその他の利害関係者による議論は、環境的、経済的、社会的及び文化的な森林への要請間の均衡がとれた国家森林プログラムの策定に役立つであろう。

  世界中の森林を適切に経営していくためには、開発途上国における国家森林プログラム策定・実施過程へのG8の支援が、援助の取組と調和したものでなければならない。社会的条件を改善することによって、人々が、森林を単なる外貨獲得源ではなく、様々な恩恵をももたらすものとして評価するようになるであろう。

  国家森林プログラムを実施しようとしてきた国々のほぼ半数、特に外部からの資金援助に依存している開発途上国において、本プログラムに関する取組状況は停滞している。G8各国は、国連機関への加盟や、国連機関による支援、二国間協力を通じて、国レベルにおける国家森林プログラムの実施促進や、国際レベルにおける持続可能な森林経営の達成を支援するための政策開発及び資金調達を支援し、この問題に対処していく考えである。本問題に関連する主な取組例として、2002年1月に世界銀行に移管された「森林プログラム」(PROFOR)と、能力開発支援のためにFAOによって開始された「国家森林プログラム・ファシリティー」を挙げることができる。

 3.保護地域

  技術の進歩によって世界中の隣人がこれまで以上に一層身近に感じられるようになるにつれ、共有資源に対する関心も高まってきている。G8各国は、今までのように、自分達の行動が自国の国土と国民のみに影響を与えると考えることは出来ない。きれいな水や新鮮な空気、健全な森林は、単に一国の子供たちだけではなく、世界の子供たちへ引き継いでいくべきものであるということがますます明らかになってきている。このようなことから、世界の森林保護が、「G8森林行動プログラム」の主要な課題の一つとなったのである。さらに、G8各国は「書面上の公園」が存在するかもしれないことの危険性に対処する必要性を認識している。

  フランス、ドイツ、イタリア、英国等のG8各国は、欧州連合と共に、「森林生態系における生物及び景観の多様性の保全と向上に関する汎ヨーロッパ作業プログラム」の重要性に着目している。本プログラムの優先課題には、汎ヨーロッパ森林保護地域システム、ヨーロッパの森林保護地域の分類制度の改善、及び森林生物多様性に関する指標を含む汎ヨーロッパ持続可能な森林経営の指標の改善などが含まれる。

  G8の欧州各国は、更に、「ナチュラ2000」と呼ばれる欧州連合(EU)保護地域生態系ネットワークを創造した。欧州共同体内で、野生種やその生息地を保全するための主要な2つの手段となるEU令の「鳥」と「生息地」の下に、このナチュラ2000は、設置された。ナチュラ2000では、「特別保護地域」と「特別保全地域」を指定することとなっており、主に森林地帯から成る10~15%程度のEU領域をカバーする予定である。

  生物多様性保全のために保護されている地域は様々であるが、中でも森林が最も一般的な対象となっている。米国は、国有林内で道路を設置しない地域の保全に向けた取組に関する議論を行うとともに、その見直しを積極的に進めており、公園の回復のための10の最優先課題リストを作成したばかりである。G8諸国は、森林保護地域の数と規模を整理統合したり、あるいはイタリアのように大幅に拡大するために多大な努力をはらってきた。フランスは、既存の保護林及び森林保護地域に関するデータの収集を目的としたプロジェクトなど、森林保護地域に関する理解を深めるためのいくつかの研究プロジェクトを開始した。ドイツ地方政府は、森林生態系の保護やそれらが外部からの影響を受けずに発展することを目的として、天然林保護制度を確立した。ロシア連邦は、国の全ての自然地域を代表し、また環境的、科学的、歴史的、美学的、及びレクリエーション的観点から最も高い価値を有する森林地域を含む、国家的に重要な厳重保護地域ネットワークを拡大している。日本の国有林野事業では、保護林同士を結び、生態的ネットワークを形成する緑の回廊を設定し、森林生態系の保護・保全を強化している。

  G8諸国は、生物多様性条約、世界遺産条約、FAO、ITTO、UNFF等の国際機関と協力しつつ、世界中の森林保護地域の設定と経営を支援している。特に、世界の最貧国に対しては、債務再編を用いて森林保護地域の設定を促進することが、双方にとって最も有益な方法の一つとなっている。ドイツ-マダガスカル間の債務免除プログラムでは、マダガスカルは債務免除基金の一部を設置予定の生物多様性保全信託基金に充てることに合意した。この約束は、本信託基金へ追加的拠出を行うために、地球環境ファシリティー(GEF)への国からの拠出として宣言できるものである。

  G8各国は、ペルーとエクアドル、カメルーンとガボン、カンボジア、タイとラオス、及びインドネシアとマレイシアのような熱帯諸国における、国境にまたがる保護・保全地域の設定や管理を促進するITTOのプロジェクトを支援してきた。また、イタリアの主たる取組として、モロッコのタザ地方における参加型天然資源管理手法の適用が挙げられる。イタリアの開発協力局は、ペルーとボリビア、及び南アフリカ、モザンビークとジンバブエといったような複数国にまたがる公園において、共通する生態系を保護するための国境を越えた取組を支援してきた。

  米国は、世界中からの参加者が米国における保護地域管理手法を学ぶことができるよう、新しく「保護地域管理コース」を開始した。

  このような多大な努力にもかかわらず、森林が既に収入、燃料及び生計の糧となっている開発途上国において、森林保護地域をどのように設定し維持するかということは、G8各国にとって依然として大きな課題である。特に、重債務国や生物多様性保全への投資に対する見返りが最も大きい熱帯地域の国々に対して、G8各国は、債務再編・免除を将来的にも一つの手段として使用していくことになるであろう。森林保護地域の設定や、道路やダム、鉱山のような大規模社会資本の開発計画の立案に影響を与えるために、生物多様性保全の原則を利用するという面から、これら諸国に対する主要なドナー国であるG8各国は、絶好のポジションにある。

  G8諸国にとってその他の大きな課題は、森林地域が数カ国にまたがる国境周辺保護区の設定であろう。G8各国は、既に確認された世界142の国境周辺保護区の設定と管理を目的として、国際自然保護連盟(IUCN)や世界自然保護モニタリングセンターとの協力を今後とも継続していく考えである。G8各国にとって、国境周辺保護区は、地域の連携を促進すると同時に、持続可能な森林経営に向けた取組を推進する絶好の機会を与えるものである。

  国境周辺保護区の創設には、他のメリットもある。国境周辺保護区は通常、政治的・社会経済的に微妙な地域や、領土紛争や社会的紛争の中心に存在するが、そのことによってそのような地域が「平和公園」という概念の適用に理想的な候補地となりうるのである。イタリアは、他のG8各国同様、IUCN及びGEFとの協力の下に、紛争地域における「平和公園」の創設に積極的に取り組んでいる。

  森林生態系が保護地域の一部である場合の方が、容易かつ総合的に研究しやすいということが、既に明らかになっている。従って、G8諸国が、今後、自国だけでなく、現時点では保護地域の設置が不要と考えている開発途上国においても、森林や生物多様性を保護するための方法を模索していくことが不可欠である。

  生態学的、地理学的に代表的な森林保護地域を十分確保し、それらの地域が効果的に経営され、単にいわゆる「書面上の公園」とならないためには、更に努力が必要である。これらの地域への便益を最大限にするために、保護地域の設定や経営に地域住民がより深く関わることが重要である。

 4.民間セクター

  全ての利害関係者にとって最も良い方策を見つけるために、たとえ様々な関係者との広範な協議を行ったとしても、やはり政府が単独で行動するよりは、民間セクターと協力した方が有益であるということを認識することが重要である。民間セクターとは単に林産業界だけを指すものではない。G8森林行動プログラムにおいては、民間セクターは「森林所有者、森林産業、市民社会、非政府組織や地域社会に基盤を持つ組織及び先住民」と定義されている。このような様々なグループと協力することによって、意思決定事項が社会のあらゆる分野におけるあらゆる人々にとって最善のものとなるのである。

  G8各国は、民間グループの間での議論や、それらグループと政府の様々なレベル間における協議の促進を目的としたフォーラムへの参加を続けている。顕著な例として、米国のエール大学森林学部が事務局として支援し、持続可能な発展のための世界経済人会議とWRIが共同議長を務めている、持続可能な林産業ワーキンググループの下の「森林対話」を挙げることができる。世界中の環境保護団体、林産業界、学者及び労働者団体が、争いを軽減し、森林の価値に関する共通のビジョンを確立するために協力を行っている。ここでは、違法伐採や、森林認証、森林経営の強化などを取り上げている。

  もう一つの重要なフォーラムは、林産業界が国際的な林政に関する協議に一層関与することを可能とした「国際林産業円卓会議」である。カナダ、フランス、英国、米国等のG8各国は、それぞれの専門知識を協議の場に持ち寄っており、最近では、認証制度の相互認証という課題が議論の焦点となっている。

  森林を認証するという考え方は、しばしば議論の的となるものの、市場の現実になりつつあることは否定できない。消費者、特にヨーロッパと米国の消費者は、認証された林産物への関心を高めつつある。いくつかの認証制度がすでに開発され、多くの主要な林産物生産国において何らかの形で使用されている。認証が真の意味で森林の持続可能な利用を促進するためには、認証制度の開発及び実施段階において、民間セクターを関与させることが不可欠である。

  G8各国は、民間セクターによる森林の持続可能な利用を支援するため、開発途上地域における特定の二国間プロジェクトに関わってきた。一例として、イタリアによる、ペルーのマドレ・デ・ディオス川流域における取組が挙げられる。これは、先住民社会が、熱帯雨林の再生可能な資源に基づいた起業活動を見出し、その活動に従事することを促進しようとするものである。

  ドイツは、いくつかの開発途上国において認証プロセスを支援している。例えば、アマゾン地域における活動として、能力開発、認証基準の開発のための国家的取組への支援、購買者及び生産者グループの形成等を挙げることができる。

  日本は、中国国内において植林事業を進めている中国の民間団体等に対して日本の民間団体等が行う協力を支援するための基金を設立した。カナダと米国は、2002年4月に、世界中からの環境保護論者や、林産物業界、小売業者及びバイヤーの参加の下、責任ある林産物の貿易促進に関する共通の価値と機会を取り上げることを目的として、イベントを共催した。英国は、南アフリカにおいて、大規模な改革プロセスや、民間セクターと地域社会との間のパートナーシップの確立を通じて、国有人工林を新たな経営体に移行させる取組を支援している。

  G8諸国は、健全な林業界と健全な森林を保つためには、民間セクターとの協力を続ける必要があることを認識している。特に開発途上国における持続可能な森林経営へ資金援助を行う上で、民間セクターが果たす役割を明らかにすることは、依然として重要な課題となっている。

  G8各国はまた、コミュニティー・フォレストリーが大きく貢献していることを認識している。G8各国は、先進国、開発途上国双方における持続可能な開発という目的を達成する際、森林分野が重要な手段であることを際だたせるための方策検討の重要性に注目している。

  G8各国及び他の先進国において、森林における官民の活動を定義する上で重要な手段である森林経営計画の策定と実施に向け、かなりの進歩が見られた。国際熱帯林技術協会のような民間機関は、熱帯林の持続可能な経営や再生可能な資源としての熱帯材利用の促進に取り組んでいる。

  最近の民間投資の傾向は、世界の森林に明るい未来を約束している。金融市場は世界中の持続可能な森林経営を支援する様々な投資商品を開発してきている。投資に先立ち森林施業の方法に基づいて投資先の選別を行う投資信託会社や、オランダの銀行であるABN  AMROにより発表されたいわゆるグリーン投資ガイドライン、公正な貿易に対して高まりつつある支援は、開発途上国の消費者が、自国及び世界の持続可能な森林経営の促進に強い興味を持ち始めていることの証である。このような消費者の関心は、「社会的責任を伴う投資」として一般に知られており、開発途上国における持続可能な林業への投資につながりうるものである。

  さらに、投資や、年金基金、銀行、輸出信用機関の貸付に対する評価を曖昧にしていると、持続可能な森林経営に負の影響を与えうることを認識することも重要である。デュー・デリジェンスや持続可能な影響評価など、さらに特別な措置を開発し、それらの投資を持続可能な森林経営へ応用し、潜在的なリスクを最小限にすることが必要である。

  自主的な認証制度をさらに開発することは、持続的に経営された森林から生産される林産物の消費や、社会的に責任を伴う投資を促進し、産業の効率性向上に寄与するであろう。認証された森林の大半が先進国にあることから、開発途上国における森林認証への支援を強化する必要がある。これは、既存の認証制度の広がりを考えると難題と言えるが、すでにいくつかの民間グループとG8諸国が、全ての当事者との対話によって既に取組を開始している。認証制度の相互認証は、今後とも、促進されるべき取組である。

  しかしながら、G8各国が開発途上国における持続可能な森林経営を促進するにあたって考慮すべきことは、変化が伝統的な慣行へ与える潜在的な影響である。例えば、より生産性の高い林業技術の導入は雇用の減少につながり、政府や市民社会への新たな圧力になるかもしれない。変化の過程を調整する際には、このようなリスクに対処するとともに、森林施業に新たな付加価値を見出していくことが重要である。

  G8各国はまた、労働者にとって世界で最も危険な職業の一つである林業セクターにおける雇用の質と安全性の見直しを継続していかなければならない。国際林産・建設労働組合連盟の例に見られるような貢献は、労働者と彼らが依存している森林を守るために不可欠なプロセスである。

 5.違法伐採

  違法伐採問題は、G8各国にとっては自国内の最優先事項ではないが、開発途上国と協力して本問題に対処する義務を負っている。G8各国は、生産国と消費国双方の役割という両面からのアプローチを通じて、世界の違法伐採問題への対処に率先して取り組んでいる。

  2001年にバリで開催された画期的な会合「森林法の施行に関する東アジア閣僚会議」によって、政府、NGO及び民間セクターが一丸となって違法伐採への対処に取り組む方向が示された。

  生産国支援のための取組には、より徹底した法規の実行、制度及び立法改革、産業規制が含まれている。G8各国は、政治的、財政的及び技術的貢献を通じ、インドネシアの林業・農園省と協力して、インドネシアの森林資源の状況や、政府の政策を通じて持続可能性を達成する方策への理解を深めようとしてきた。

  G8各国は、カメルーン、ガーナ等において、法律遵守の奨励を目的とした立法・政策改革を進めてきた。また、インドネシアにおいては、違法伐採の監視及び規制のための能力開発に助力し、カンボジアやカメルーン等においては、森林犯罪追跡のための独自の監視・認証システムを開発した。

  ロシア連邦は、強力かつ持続的な木材産業を育成するための総合的な取組の一環として、木材資源供給力と利用をより詳細に評価するために、森林の利用・管理計画制度を改善しつつある。ロシア連邦はまた、違法伐採の防止促進を目的として、森林資源認証手続きとエコラベリングを導入しようとしている。

  消費国の取り組みには、エコラベリングと認証の推進や、政府調達政策の変更等がある。例えば、英国政府は、合法かつ持続可能な生産元から生産された木材を積極的に調達することを決定した。欧州共同体は、違法伐採及びそれに関連する貿易問題に対処し、森林法規違反や森林犯罪問題に取り組むための国際協力を推進するため、現在「欧州連合森林法規の実行、行政及び貿易に関する行動計画」を策定中である。日本は、人材育成、熱帯木材製品の貿易データの調査・分析等や、木材統計・情報システムの開発等ITTOによる違法伐採対策活動を支援してきた。G8もまた、2001年秋にドイツで開催された会合の結果に基づき、流通している木材とその産地の確定を目的とした分類学的、化学的及びDNA的フィンガープリント手法の開発の見通しを確定するための取組を支援している。

  恐らく、違法伐採に関するG8の最大の成果は、違法伐採問題を国際的な議論の場に持ち出したことであろう。その結果、違法伐採が紛争を誘発、維持する傾向があることや、環境劣化、貧困層や国家へ減益をもたらすことに対し、政治的・社会的関心がかなり集まるようになった。

  違法伐採対策の必要性に対して広範な関心や意見の一致はあるものの、これまでの努力を成功に導くためには、現在の勢いを維持していくことが重要である。本問題に対する政治的及び一般的な支持を維持し、また高めていくための最善の方法は、目に見える成果をあげ、G8が支援する違法伐採への取組の効果を示すことである。そのような結果を示すとともに、主要な輸出国、輸入国間の合意に向けて進捗を図るためには、生産国と消費国の双方が約束事項を実施していくことが必要であろう。

  本問題については、継続的な協力が不可欠である。欧州共同体、フランス、英国及び米国は、世界銀行と協力して、次回の「森林法規の実行、行政及び貿易に関する閣僚会議」を開催する予定であり、この会議は2003年初頭を目途にブラザビルで開催される見込みである。

  また、先進国は、熱帯諸国における違法伐採のみに焦点を当てることのないようにすることが重要である。温帯及び寒帯地域の国々は、自国においても法規実行上の問題をしばしば抱えていることから、国際的な議論の場において正当性を保とうとするならば、温帯及び寒帯地域での問題解決にも焦点を当てなければならない。北方諸国は、熱帯における違法伐採の深刻さを不用意に強調することによって、消費者にあらゆる熱帯木材の購買を思いとどまらせ、違反者だけではなく全ての生産者を不当に罰することになる危険を冒しているのである。

  G8による木材のDNA分析に関する研究は、最終的には盗伐者の逮捕及び盗伐防止にとって有効であることが明らかになるかもしれない。G8諸国の研究者は、特定の丸太からその切株を特定し、その木材が合法に伐採されたものであるかどうかを判断することが可能となるような方法を改良しつつあるところである。

  違法伐採問題に関して今後も対処すべき課題は以下の通りである。

  • 森林に生計を依存する共同体の関与
  • 一連の改革(経済、土地保有権、政策及び立法、慣習及び法規の実行)
  • 追跡調査及び加工・流通過程の管理
  • 二国間、地域間、地域内、及び多国間の取決め策定
  • 人材育成及び技術移転

 結論

  過去4年間にわたって、G8森林専門家は、協力して、持続可能な森林経営を目的とする他の地域的・国際的プロセスによる様々な活動を補完してきた。森林生態系、土地所有形態、統治・規制制度、及び援助・国際協力に関する状況に関して、G8各国の程度と性格は多様であり、そのことが、持続可能な森林経営の世界的な実施への理解を高めることに大きく貢献してきた。「G8森林行動プログラム-最終報告書」は、本行動計画の5つの優先分野におけるG8各国の実績とともに、G8各国が世界の森林が直面する課題に対して取組を継続するという決意を示している。

 

 

お問い合わせ先

森林整備部計画課海外林業協力室
代表:03-3502-8111(内線6146)
ダイヤルイン:03-3591-8449
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