北限のブナの取組
近年、地球規模での環境問題が深刻化する中、地球温暖化の防止や森林の保全など、生物多様性の保全に対する考えが広まり、当署で実施している北限のブナ林復元させることによる生物多様性の取組について平成22年度の活動について紹介します。 |
プロジェクトの概要等
- 北限のブナ林として管理している黒松内町の歌才植物群落保護林や、島牧村のブナ林木遺伝資源保護林を保全している一方、過去の伐採等を受けたブナ林が林相の改変を受け、ブナの分布が狭められていることから、天然更新などの促進を行いブナ優勢で健全性の高い森林に誘導することで、生物多様性の保全に貢献することを目的とした「北限のブナ復元プロジェクト」を平成19年度より行っています。
- このプロジェクトエリアは、黒松内4,008ヘクタール、寿都1,875ヘクタール、島牧32,933ヘクタールを復元事業地として設定し、各エリア毎の優良なブナ林を目標林として設定しました。
- 復元事業地の調査は、ササ優占箇所や人工林などの林況に応じて、地表処理などの施業を行い、施業地と未施業地に固定調査区を設定しています。
- この固定調査区は、平成19~21年の3年間で、林況のみならず希少野生動物を含む野生生物の生息状況を含めた調査を行うことで、生物多様性の検討を行うための基礎調査としています。
- また、エリア内のブナの遺伝子分析を解析するなど、生物多様性に必要な調査を実施し、平成19~21年の各年毎の調査報告書を作成し、今年度は、地表処理を行った8.21ヘクタールの刈り出しを行い現況の経過観察や現地勉強会等を行い、今後も施業の検討を続けながら、生物多様性の検証を行い「北限のブナ復元」手法の基礎となる取組を行っていきます。

北海道大学の保全学習にて黒松内地区にける地表処理を実施した箇所でブナの更新状況を確認しています。

地表処理後にブナの天然更新が見られた箇所です。
プロジェクト連携事業の取組
- ブナ北限の里「くろまつない」は、黒松内町民を主体とした「黒松内岳ブナ林再生プロジェクト」委員会を設置しブナ林再生活動を平成19年から行っています。
- 毎年、ブナの天然木から種子採取や種子のまき付け、山引き苗の移植など、ブナの苗木作りのほか、復元のためのブナ植樹やブナの観察会など、ボランティアによる活動を実施しており重要な活動拠点となっています。
- 毎年行っているブナの種子採取に当たっては、遺伝的特性にも配慮し当該地区周辺で豊作など考慮した母樹の選定など、ブナ林復元手法の検討を重ねており、今後も「北限のブナ復元プロジェクト」と連携した活動が必要と考えています。

「黒松内岳ブナ林再生プロジェクト」実行委員会にて6月にブナの種まきを実施しました。

「黒松内岳ブナ林再生プロジェクト」で行った「植樹体験とブナウォッチ」体験ツアーで歌才ブナ林での「ブナウオッチング」の状況。

黒松内岳周辺で行うブナの種子採取状況です。
「森づくり講座」
2月9日(第1回目)
- 2月9日に後志森林管理署と黒松内岳ブナ林再生プロジェクト実行委員会が共催し、一般町民の方を対象とした「森づくり講座」を開催しました。
- 参加者約30名は、講師、内田健一さんによる山の見方、調査方法など現地実習を行いながら、「木を植えない森づくり」をテーマに、森の機能を高める学習を行うことで、森林の保育を学びながら森の重要性を再認識したところです。

森づくりのためには、森林の現況を調べる必要があり、標準的な林分を見つけ区画を設定しています。

森林の蓄積を簡易的に調査するレラスコープ(スリット板)づくりを実施しました。

実際にレラスコープ(スリット板)を利用して森林の蓄積を調査しました。

積雪を考慮して樹木の測定を行いました。
3月2日(第2回目)
- 第2回目の森づくり講座は、森を手入れするには、木に光を与えるために、人の手による伐採が重要なります、5グループ毎に分かれ、どのように伐採すると樹木が健康になるかなどの説明を受け、5グループに分かれ伐採木の選木作業を行いました。
- 林分はカラマツの造林地で、ミズナラ・シラカンバ・ブナなどの広葉樹が多く進入した林況で、それぞれのグループが思い思いの林分を見立てるための選木作業になりました。
- その後、グループ毎の結果発表、ブナ主体の広葉樹の山を育てる選木・樹幹の配置を考慮した選木・木材生産のため成績のいい立木を育てるための選木など、様々な「森づくり」のための意見交換ができました。
- その後、実際の森の手入れの方法については、手のこを利用して実際に立木を伐採する体験をしました。

樹幹の配置を見ながら、選木理由をグループ毎に発表しているところです。

伐採の方法を実際に体験し、切り口からの樹種の特徴の説明を受けているところです。

好評であった刃物の取扱については、林業と刃物の歴史から、地方で使用する刃物特徴などをプラスした内容で、刃物の安全な取扱方法についての説明がありました。
- 今回の「森づくり講座」は、それぞれが「森づくり」のためにどんなことをするのか、実際に体験できたことはとても有意義でした。
- 最後に講師から、「山づくりはデザインである」との説明があり、皆が森の色を思い浮かべながら、森林における多様性を再認識し、今後のブナ林再生事業に向けての参考となる講義内容となりました。
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