知床の自然環境の特徴
知床の自然環境の主な特徴
- 知床は世界で最も低緯度の季節海氷域であり、海氷に特徴づけられる海洋生態系と陸上生態系が連続することによって複合生態系を形成しており、海洋生態系と陸生態系の相互関係を示している。
- 海岸から約1.600mの山頂部までの間には、人手の入っていない多様な植生が連続して存在しており、豊富な餌資源と多様な環境を背景として、ヒグマは世界的にも高密度で生息している。
- 知床は、北方系と南方系の両系の種が混在するなど、地理的位置と多様な自然環境を背景として特異な種構成、分布がみられるほか、シマフクロウ、オオワシ、オジロワシなどの国際的希少種の重要な繁殖地や越冬地となっており、これらの種の存続に不可欠な地域となっている。
自然遺産登録への経緯
知床世界自然遺産登録への経緯
平成15年
- 3~5月「世界自然遺産候補地に関する検討会」の開催
- 5月26日に「知床」 「小笠原諸島」 「琉球諸島」の3地域を世界自然遺産の候補地として選定。
- 10月環境省と林野庁において、上記3地域の検討を行った結果、平成16年2月までに推薦書提出を目指す地域として「知床」を選定。
- 10~12月「管理計画」の策定
- 関係行政機関(環境省、林野庁、北海道等)、地元自治体(斜里町及び羅臼町)、地元関係団体を構成メンバーとする「知床世界遺産候補地地域連絡会議」を設置。
- 12月15日に開催された第4回知床世界遺産候補地地域連絡会議において管理計画(案)をとりまとめ。
平成16年
- 1月世界遺産条約関係省庁連絡会議において、知床の推薦を 政府として決定。推薦書をユネスコ世界遺産センターへ提出 。
- 7月世界遺産委員会の諮問機関(IUCN)による現地調査
平成17年
- 5月IUCNよりユネスコに対し「知床は世界自然遺産に登録することが適当」と勧告 。
- 7月10~17日第29回世界遺産委員会(於:南アフリカ(ダーバン))知床の自然遺産登録が決定
*IUCN : 国際自然保護連合。1948年にユネスコやフランス政府、スイス自然保護連盟などの呼びかけで、各国政府、民間の自然保護団体が参加して発足した自然環境保全に関する非政府国際機関。自然遺産の評価、調査の面で世界遺産委員会に協力している。
IUCNとは、International Union for Conservation of Nature and Natural Resourcesの略。
自然遺産の登録基準
世界自然遺産の登録基準
下表のクライテリア(評価基準)の1つ以上に合致すること
- 世界的に見て類まれな価値を有していること
- 法的措置等により、評価される価値の保護・保全が十分に担保されていること
- 管理計画を有すること等
クライテリア(評価基準)
地形・地質
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過去の生命の歴史や地球の歴史の証拠となるような、重要な地形・地質等がよくあらわれている地域
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生態系
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現在も進行中の生物の進化や生物群集の見本となるような、極めて特徴のある生態系を有する地域
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自然景観
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ひときわすぐれた自然美をもった自然現象や景観を有する地域
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生物多様性
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絶滅危惧種の生息地や、生物多様性の保全上最も重要な生物が生息・生育する地域
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クライテリア(評価基準)
知床のクライテリア(評価基準)との関係
IUCN報告書より
生態系
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知床は北半球で最も低緯度に位置する季節海氷域であり、季節海氷の形成による影響を大きく受け、特異な生態系の生産性が見られるとともに、海洋生態系と陸上生態系の相互関係の顕著な見本である。
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生物多様性
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- 知床は多くの海洋性及び陸上性の種にとって特に重要であり、これらの中にはシマフクロウ、シレトコスミレなど多くの希少種が含まれている。
- 知床は多くのサケ科魚類、トドや鯨類などの海棲哺乳類にとって世界的に重要である。
- 知床は世界的に希少な海鳥類の生息地として重要であるとともに、渡り鳥類にとって世界的に重要な地域である。
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政府は「生態系」「生物多様性」「自然景観」の分野が該当すると推薦したが、IUCN報告では「自然景観」は合致しないとされた。
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