知床森林生態系保全センターブログ(2018年8月)
8月24日(金曜日)平成30年度第1回知床世界自然遺産地域科学委員会
8月24日(金曜日)目梨郡羅臼町において、平成30年度第1回知床世界自然遺産地域科学委員会を開催しました。
(※)科学委員会とは:知床世界自然遺産地域の管理を行っていく上で必要な助言を学識経験者から得るための委員会
今回の科学委員会では、各ワーキンググループ等の検討状況や、第41回世界遺産委員会決議の対応、長期モニタリング計画の見直しについての話し合いを行いました。
(会議の様子)
当ブログの投稿者は、この会議に初めて出席しましたが、傍聴してみて、世界自然遺産とは登録されることがゴールではなく、登録されてからがスタートであると感じました。
知床が世界自然遺産に登録されて13年が経過しましたが、海域と陸上が密接に繋がった知床ならでの生態系のバランスを崩すことなく、維持し続けるためには多くの方の議論と努力が今も現在進行形で積み重ねられています。
我々も管理組織の一員として日々業務に精進してまいりたいと思います。
8月21日(火曜日) 野生生物観測調査(以下、自動撮影調査)夏の部終了!
6月上旬~8月上旬にかけて実施していた自動撮影調査が一段落しました。
今回は、調査結果をほんの一部ご紹介します。
斜里町と羅臼町の国有林林道に計11箇所カメラを設置し、それぞれ約1ヶ月ずつ撮影を行ったところ、
野生生物は395回撮影されました。
最も撮影された動物は言うまでもないかもしれませんが、エゾシカです(188回撮影)。
今年の角が生え始めたオスジカ。食べながらカメラ目線です。
獲物を捕まえたキタキツネ、3時のおやつでしょうか。
昼夜を問わずヒグマも撮影されました。
ハプニングもありましたが、
撮影されていると迫力があり見応えがあります。
基本的に夜行性のため、普段あまり見ることのできないエゾクロテン。
こちらも夜行性のコウモリ類(現在種の確認中、コテングコウモリでしょうか?)
さて下の写真、どこに動物がいるかわかりますか?
(クリックで拡大)
正解はここ。アカハラという鳥が写っていました。
どこかに動物が写っていないか一枚ずつ慎重に確認します。
壊れたカメラの修理やデータの整理を行い、9~10月の二回目の調査に備えます。
次回も多くの野生生物が撮影されると幸いです。
8月7日(火曜日) ヒグマ個体群トレンド調査、一段落
6月より実施していた今年度の「ヒグマ個体群トレンド調査」が8月をもって終了しました。
これから各機関で収集したデータをもとに、知床ヒグマ対策連絡会議により解析されます。
ここでは、調査をひと通り終えてみての所感を述べたいと思います。
(1)糞カウント調査
林道コースを車両で低速で走行し、ヒグマ糞を発見したら記録していく方法で行いました。
糞がどのくらい経過したものなのか、また、どのようなものを食べているかをチェックしました。
林道にはオオブキの葉やほかの動物の糞など紛らわしいものも多く、
じっくり目をこらして糞を探します(クリックで拡大)
(※この写真に糞は写っていません)
当局では知床半島の5コースの林道を担当しましたが、林道ごとのバラツキが大きく、まったく糞が見当たらない林道もあれば、1kmあたり5個と頻繁に確認できた林道もありました。
糞の内容物は草本類がメインで、この時期のヒグマはオオブキやイラクサなどを食べて過ごしていることが推察されます。これからサケの遡上が始まり、さらにドングリやサルナシの実など秋の食物源が実ることから、糞の内容物も変化していくことでしょう。
(2)自動撮影カメラ調査
各林道に自動撮影カメラを設置して動画を撮影しました。
当ブログ用に動画の一部を切り取ってご紹介します。
ヒグマはどの個体も同じように見えて実は個性が豊かです。
顔だけではなく、体毛の色や月輪の有無などさまざまな手がかりをもとに個体を識別することができます。
(クリックで拡大)
とあるオスグマは木の幹に背中をスリスリしていました。
この行為は「背こすり」と言われるマーキング行為の一種です。
自分のにおいをこすりつけることで、自分の強さをほかのオスやメスにアピールしているそうです。
メスはにおいを嗅ぐことで強いオスかどうか分かるようです。
(クリックで拡大)
約1ヶ月後に同じ木でまた別のオスグマによる背こすりも見られました。
光により分かりづらいですが、先ほどのオスグマにはあった月輪がありませんので、別のオスグマと言えます。
母グマと子グマ2匹(クリックで拡大)
親子連れもいました。
子グマは1才ぐらいと思われます。
なお、撮影によるヒグマの出現数と先ほどの糞カウント数に相関があるのではと思いましたが、糞が見当たらなかった林道でもヒグマが多く撮影されており、一概にそう言えませんでした。
この調査は来年以降も継続して実施予定ですので、どのような結果が得られるのか期待が膨らみます。
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