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北海道森林管理局

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    渡島・檜山地域における低コスト施業の推進に向けた取組

    渡島・檜山地域の特徴

      檜山森林管理署は、渡島半島南西部に位置する厚沢部町にあり、渡島総合振興局南西部と檜山振興局南部の2市9町(函館市、北斗市、木古内町、知内町、福島町、松前町、厚沢部町、乙部町、江差町、上ノ国町、奥尻町)を管轄区域としています。
      管内には、自生北限とされるヒノキアスナロ、自生南限とされるアオトドマツ、日本海側においての自生北限とされるゴヨウマツが生育し、さらには道央以北ではあまり見られないスギ、キリ、ブナの生育適地となっており、その森林資源は北海道でも特異で貴重なものとなっています。
      また、管内の国有林は、急峻な渡島半島にあって、国土の保全機能や水源涵養機能、砂坂海岸林に代表される飛砂防備機能、豊かな森林が育む漁場の保全等、様々な公益的機能の発揮により地域に貢献しています。


    ヒノキアスナロモデル林


    砂坂海岸林

    民有林と連携した森林・林業の課題解決の取組

      渡島・檜山地域では、渡島森林管理署(八雲町)、檜山森林管理署(厚沢部町)の2署と渡島総合振興局、檜山振興局及び森林室により「渡島檜山地域林政連絡会議」を立ち上げ、地域の森林林業の情報共有と地域が直面している様々な現状の把握、それらの課題解決に向けた取組を民国が協力して進めてきています。
      さらに、檜山森林管理署と管内市町村との連絡会議を開催し、地域の要望・意見の把握に努め、自治体への支援や相互協力関係の構築に努めています。
      これらの取組により明らかになった様々な課題の中で、特に森林施業の低コスト化や作業の軽労化、担い手の確保等が強く求められており、当署ではこれらの課題解決に向けた取組を積極的に行ってきています。


    渡島檜山地域林政連絡会議


    渡島地区市町村との連絡会議

    低コストで効率的な列状間伐(搬出間伐)の普及に向けた取組

      管内の民有林の現状として、「森林経営が小規模・分散化しておりその集約・団地化が進んでいないため、作業効率が悪く、間伐コストが高い」「初回間伐で切り出した木材は材価が安く収益が低い」「作業路網が未整備」等の理由により、間伐した木材を林内に切り捨てている状況であり木材を販売し収益につながる「搬出間伐」が進んでいない実態があります。
      搬出間伐は、森林所有者に収益を還元できるほか、資源の有効活用も同時に図れることから、「低コストで効率的な列状間伐」の普及により、切り捨て間伐から搬出間伐へのシフトを促すため、地域林業関係者を対象に現地検討会を開催しました。


    列状間伐現地検討会の現地説明

      列状間伐はこれまで多く行われてきた定性間伐と異なり伐採する木を選ばずに行うため不安を持っている森林所有者も多くいます。現地検討会ではそういった不安を解消するため、列状間伐を実施した現地の確認と併せて、ドローンによる空撮写真を見ていただき、その間伐効果と樹冠の相関及び効率性・安全性についても説明し、理解を深めてもらいました。

     列状間伐実施後の経年変化
                            伐採直後
                               

                            1年経過
                              

                            4年経過

      参加者からは、「上空から樹冠を見ることにより、間伐効果がより実感できた」「2回目以降の間伐を考えたとき有効な手段であると感じた」「かかり木が少なく安全性に優れていることがよくわかった」等、列状間伐の安全性と効率性への理解が深まったようでした。
      実際に間伐方法をこれまでの定性から列状へシフトした森林組合からの後押しとなる意見も出されるなど、有意義な検討会となりました。
    現地検討会を実施した結果、列状間伐を取り入れる地域の増加が見られるなど、確実に一定の成果が現れてきています。

    造林コスト縮減に向けた取組

      渡島檜山地区では戦後植栽された人工林資源が充実期を迎え、今後主伐・再造林の増加が確実な状況となっています。


    渡島檜山地区人工林の樹種別齢級別面積※クリックすると別ウィンドウで拡大表示されます。

      更新・保育等の造林初期コストは、森林所有者の大きな負担となります。このコストを縮減することは地域の大きな課題となっており、その解決のための取組を進めています。

    天然力の活用と新たな地拵方法の提案
      当署では、造林初期コスト縮減を目指した試験を実施することとし、人工林の帯状複層伐箇所の伐採面において、天然力の活用を目的とした「地表処理」と下刈作業の省略を目的として新たに考案した地拵方法である「盛土地拵」の2つの試験地を設定しました。
    「地表処理」は、カラマツ人工林の更新面におけるカラマツと広葉樹の天然更新による針広混交林化を目指した取組であり、もう一方の「盛土地拵」は、バックホウにより隣地の土壌を農地の畝のように盛り上げ、植生高よりも高い位置に苗木を植栽することによって下刈の省略を目指す地拵方法となっています。


    盛土地拵のイメージ図※画像をクリックすると別ウィンドウで拡大表示されます。


    盛土地拵の実施状況 

      地表処理・盛土地拵とも、造林コストの大幅な削減が期待できることから、地域林業関係者も高い関心を持って現地確認等を行っており、意見交換では新たな取組であることから疑問点や不安要素の指摘等もありましたが、大きな期待の声も聞かれ活発な議論となりました。今回は、実施直後の初期段階での紹介となりましたが、今後各種調査を重ねながら推移を見極め、成功の可否はもちろんのこと、最善の仕様の提案等改めて地域に提案することとしています。


    地拵方法別のコスト比較※画像をクリックすると別ウィンドウで拡大表示されます。表のコスト比較は、林野庁公表の造林初期コストから、植付・下刈の経費を単純に差し引いたものです。

      また、盛土地拵については新たな地拵方法であることから、その普及・拡大に向け、森林・林業に係る技術等の情報交換の場である「北の国・森林づくり技術交流発表会」において研究成果を報告しました。詳細はこちら(PDF : 531KB)

    コンテナ苗の普及促進
      コンテナ苗については、地域の森林・林業関係者に実施したアンケート調査でも高い関心が見られ、従来使用されている「裸苗」との違いを含めどのようなメリットがあるのか等、詳しい情報提供を求める声があったことから、より詳しくコンテナ苗の実情を知ってもらうため、管内自治体の林務担当者や森林・林業担当者のほか苗木生産者を対象としたコンテナ苗の現地検討会を開催しました。


    現地での生長状況確認の様子

      現地検討会では、コンテナ苗のメリットとデメリット、コンテナ苗の研究データ等の情報提供を室内研修で行い、その後裸苗とコンテナ苗を同時に植栽した現地において生長状況の比較確認、苗木生産者と林業関係者との意見交換を実施しました。
      一方、苗木価格が裸苗に比べて高いことから、普及に向けてはコンテナ苗価格の低価格化が求められています。苗木生産者からは、「生産コストを抑え、安定的な供給を進めることにより苗木価格の低価格化が図れる」「長期の需給見通しが欲しい」との意見があり、今後国有林をはじめとして地域を挙げてコンテナ苗の普及や技術開発に向けた取組を進めていくこととしました。現地検討会の模様はこちら


    苗畑でのコンテナ苗生産の様子

      コンテナ苗普及の取組については、今後も継続して実施することとしており、今年度はクリーンラーチをはじめとした生長の早い品種の紹介、苗木の生長を促進する緩効性肥料を添加したコンテナ苗の導入、活着率等のデータやコンテナ苗を活用した低密度植栽などの低コスト化への取組等に関する情報発信を行い、コンテナ苗への理解を更に深める取組を進めていくこととしています。

    国有林フォレスターとして

      地域の森林・林業は、林業労働者の担い手不足、森林所有者の高齢化や世代交代に起因する林業経営意欲の低下による森林整備の遅れ、森林所有の小規模・分散化等、非常に多くの課題を抱えています。これらの課題解決に向けた取組を進めるためには、地元振興局や森林室、市町村等の関係機関、森林組合や林業事業体等が互いに協力しながら対策を進めていく必要があります。
      これらを確実に進めていくためには、地域からの信頼や相談しやすい環境づくり、関係機関との調整を図るリーダーシップ等のほか個人のスキルアップも重要となってきます。
      地域の森林・林業発展に向けた取組は、重責であり一朝一夕に解決できない難しい課題が山積していますが、今後も地域の皆様の協力をいただきながら一歩一歩着実に進んでいきたいと考えています。


    檜山森林管理署  森林技術指導官  橘  雅司

    お問合せ先

    檜山森林管理署

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