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北海道森林管理局

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    地域に役立つ国有林を目指して

    空知地域の概要

      空知森林管理署は北海道空知総合振興局管内の中部、南部地域の9市9町(夕張市、栗山町、由仁町、長沼町、南幌町、岩見沢市、三笠市、美唄市、奈井江町、新十津川町、月形町、浦臼町、砂川市、赤平市、滝川市、芦別市、歌志内市、上砂川町)を管轄区域としています。管内の森林面積は約29万ha、そのうち国有林は16万ha、民有林は13万haです。人工林の面積はその31%を占め、そのうち国有林は51%となっています。
    森林面積円グラフ
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    空知総合振興局では、地域の課題の中から重要かつ緊急性を勘案し、「森林・林業に関する技術・知識の普及・定着」、「面的なまとまりのある森林経営の促進」、「木材の安定供給体制の確立等」の3つについて普及指導活動が展開されています。当署もこれらの地域の課題の解決に向け連携して取り組んでおり、その中で各種会議への参加やワークショップや現地検討会などを実施してきているところです。

    国有林の知識・技術を地域に役立てるために

      平成31年4月には森林経営管理制度が始まります。これは市町村が主体となり民有林の山づくりを推進する仕組みです。
    それらの民有林の山づくりに貢献するため、当署ではこれまで国有林が蓄積してきた知識や技術を活かした取組を実施してきましたので紹介します。

     空知の山づくりワークショップ

      当署は国有林が実施している伐採・造林一貫作業システム及びコンテナ苗の活用などの取組を紹介し、民有林に活かしてもらうため、市町の林務担当者を対象とした「第1回空知の山づくりワークショップ」を実施しました。
      これまでも、振興局主催の森づくり勉強会等において、国有林で実施している誘導伐(更新伐)における作業仕組みや収支について説明し、現地見学を行う機会がありましたが、事後のアンケートではこの説明に対する理解度が低かったことがわかりました。理由として説明不足やPR不足から参加者の方々が主伐作業のイメージをあまり持てなかったことが考えられました。こうした反省から、まずは国有林の森林整備について知って欲しいと考え、国有林主催の現地検討会などの開催を計画しました。
      実施内容については6月に開催された「市町村森林整備計画実行管理推進チーム会議」において実施した事前アンケート、普及指導員室を訪問して実施した聞き取り調査の結果を反映しました。
      ワークショップは2部構成で行いました。午前の部は、芦別市頼城多目的研修センターで、「経営計画・木材生産・造林事業・木材販売」の4つの分野で現状や課題を整理し、実施している取組について紹介しました。


    1 経営計画
      経営計画については、人工林は本格的な利用期を迎えており、森林資源を活用しつつ、再造林を確実に実施して循環的に山づくりをしていくことが求められていることなど林業の課題や方向性を確認しました。
      山づくりはどのような森林を目指して、いつ、どう伐るかなどを計画的に実行していく必要があることや、計画を立てるときには調査によって地況と林況を把握する必要があり、その結果をもとに木材利用なども考えながら決定する必要があるという考えを説明しました。



    2 木材生産
      木材生産については、伐倒、木寄せ、玉切り、集材、巻立、検知という一連の作業からなり、それらの機械化が進んでいることについて説明しました。伐倒、玉切りなどにはハーベスタ、木寄せや巻立にはグラップル、集材にはフォワーダといった高性能林業機械を使用した作業システムが実施されていることなどについて事例をもとに紹介しました。

    3 造林事業
    造林事業については、造林未済地の解消が地域の課題となっているなかで増加する再造林を確実に実施するため低コスト化が求められており、解決策としてコンテナ苗の活用や一貫作業システムの導入を進めている現状を説明しました。
    コンテナ苗については根鉢が小さく植え穴が小さくてすむことや活着率の高さ、専用の器具を使うことで簡単に植栽することができることなどの特徴を紹介しました。
      一貫作業システムでは生産と造林を一括発注することにより伐採後すぐに植栽をすることが可能となり作業が効率化されること、生産事業で使用した重機をそのまま使用できるため、輸送費が削減できることやこれまで作業員が人の手で行っていた作業を機械で行えるようになるため労働環境の改善に繋がることなどについて紹介しました。
      具体的な例として集材・運材に使用したフォワーダで苗木を運搬、巻立に使用したグラップルにレーキを取り付けて地拵えに使用した事例を紹介しました。さらに大型機械地拵によって周囲の植生の根を除去することにより下刈回数の削減に繋げる取組や、これと合わせてコンテナ苗と緩効性肥料を使用することにより、周囲の植生が回復する前に成長させることで下刈作業の省略にも繋げる取組事例などを紹介しました。

    4 木材販売
       木材販売では国有林で行っている丸太の仕分け等について紹介しました。トドマツの一般材は3.65mで、低質材は羽柄材として3.65m、合板向けに4m、カラマツは合板向けに4mと、需要や用途に応じて素材を生産していることや、近年、低質材の価格が上昇傾向にあり、その背景には道内で発電規模の大きいバイオマス発電が続々と稼働し原料材の需要が高まっていること、広葉樹について、銘木市では広葉樹の供給量が不足している状況で30cm前後のカバやシナを銘木市に出品した事例では、トドマツの一般材の3倍の値が付いた例もある、などの市況や需要について事例を交えて説明しました。
     
      午後の部は、「伐採・造林一貫作業システム」、「コンテナ苗」を導入した現場を見学し、伐倒作業、高性能林業機械による伐倒・木寄せ・造材・集材・巻立といった作業、生産事業で使用した高性能林業機械を活用した地拵作業と一貫作業システムの一連の流れを確認してもらいました。
    その後、コンテナ苗の植付を体験してコンテナ苗の特性やメリットを実感してもらい、第1回目のワークショップを終えました。


    高性能林業機械の実演


    コンテナ苗の植栽体験



     ≪結果と今後の展開≫
      ワークショップにおける質疑応答などから、市町は森林整備のための実践的な知識と作業方法を習得する場や、国有林が推進する新たな森林整備の取組を共有することを求めていることが把握できました。
      また、今後扱って欲しい内容などをアンケートで聞いたところ、グラフのとおり森林調査に関する事項(GPSの活用方法、樹種判別の仕方、林分の調査方法、施業方法の判断等)が半数を占め、林地台帳整理のための森林調査に利用できる技術を必要としていることがわかりました。
      こういった要望に対して、国有林の技術で応えていきたいと考えており、今後のワークショップでは、「GPS・QGISの講習会」、「収穫調査の方法」、「ドローンを活用した森林被害の把握と処理方法」など森林調査の手法、「造林木の特性及び材価」などのメニューを検討していくことになりました。

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    この他の民有林への支援活動について

      当署は「市町村森林整備計画」の作成や実行管理を行う「市町村森林整備計画実行管理推進チーム」に参画しています。
    第1回目の会議では、平成30年度の取組の進捗状況、伐採届出の情報共有、市町村森林整備計画変更作業、林地台帳整備、森林環境譲与税(仮称)、森林経営管理制度に係わる取組の進め方などが主な議題となったところです。
      市町等からは民有林所有者へ意向調査した後の対応や森林経営の委託先、森林経営管理制度の中での事務について意見があり、具体的な進め方が議論されています。
      その中で事前準備として、空中写真などを利用した林況把握方法に関する指導をお願いしたいとの要望がありました。国有林には空中写真の判読等に必要な技術があることから、平成31年度以降の活動メニューの1つとして具体的な実施内容やスケジュール等を検討していくこととなりました。
      このように国有林の技術を民有林に活かしていただけるよう取組を進めていく考えです。


    国有林フォレスターとして

      当署の管轄区域には多くの市町村があり、森林・林業・林産業の抱える課題は多岐にわたります。その中で様々な取り組みが進められている状況です。これまでの2年間「エゾシカによる農林業被害の減少をめざした民有林との連携」や「民国で取り組む低コストな森林づくり」をテーマとしての重点的な取り組みを進めてきた他、地域林政連絡会議や市町村森林整備計画実行管理推進チームなどへの参画など様々な活動に取り組んで参りました。その経験から、一度に全ての課題を解決していくことは困難なことから、実現出来そうな課題から一つ一つ取り組んで行くことが課題解決への近道ではないかと感じています。さらに、その結果や成果を積み上げ広めていくことで、他の地域の役に立つのではないかと考えているところです。
      先日、ある自治体の林務担当から、国有林と連携した森林づくりを進めたいとのご相談をいただきました。こうした声を一つ一つ取り上げ解決に向けて取り組んでいくことが重要と考えています。具体的には「森林整備協定」や「共同施業団地」を設定し、団地化して効率的な森林整備を推進していきたいというもので、協定締結に向けて進めているところです。近年、各地で進められている共同施業団地での取り組みについて、路網を連結し木材の搬出経費が削減された事例や、共同土場の活用による事業の効率化が図られた事例などがあり、様々な事例から地域に合った進め方を取り入れることにより、実現出来るのではないかと考えているところです。
      この森林共同施業団地での森林づくりにおいては効率的な森林現況の把握、効率的な路網や土場の作設、低コストな作業システムの導入、原木供給情報の地域共有、川下と連携した木材の安定供給、共同した事業の発注や木材の販売など、川上の森林・林業から川下の木材産業まで一体的に考えていきたいと思います。また、この取り組みを「モデル地域」として、問題点や課題、その解決の手法などの流れを整理し他の地域へ広めて行ければ、様々な課題解決へのキッカケになると考えています。
      この取り組みには、地域の皆様と一緒になって進めていく必要があります。沢山の"アイディア"や"夢""思い"を出し合いしっかりとした議論をしながら進めていく考えです。
      これからも地域の声を大切にしながら、地域とともに話し合い、汗を流すことで、地域のお役に立てる国有林フォレスターとしての役割を果たしたいと思っています。



    森林技術指導官  中川  誠



    お問合せ先

    空知森林管理署

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