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北海道森林管理局

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    地域の林業・林産業の活性化に向けた取組

      上川北部森林管理署では、地域の林業・林産業の活性化に向けた様々な取組を行っています。今回は、森林整備推進協定による民国連携した路網や共同土場(ストックヤード)の整備及び造林の低コスト化等の取組について紹介します。

    上川北部流域の概要

      上川森林管理署のある上川北部流域は、名寄盆地を中心とし、その周りを函岳、ピヤシリ山、天塩岳などの標高6001,500mの山々に囲まれ、これらの山地を水源とする大小の河川が合流する日本最北の大河「天塩川」が貫いています。
      当署管内は、士別市、名寄市、和寒町、剣淵町、下川町、美深町、中川町、音威子府村の2市5町1村からなり、天塩川の清らかな流れの下、稲作・畑作・酪農・林業を中心とした第一次産業が盛んです。流域内の土地総面積は約42ha、そのうち森林面積はその約77%の32.4haです。その内訳は図1のとおりで国有林は50%を占めています。

    天塩川の源「天塩岳」
    図1
    図1

    民有林と国有林が一体となった効率的な森林整備の推進

      当署は、地域の林業・林産業の活性化に向けた取組の一つとして、下川地域森林整備推進協定(下川町)と中川地域森林整備推進協定(中川町)の二つの森林整備推進協定(森林共同施業団地)を締結しています。
      これらの二つの協定は、森林の多面的機能の高度発揮と資源の循環利用を図るため、間伐や路網等の森林整備の事業計画や森林経営に関する事項等を定めており、民有林と国有林が一体となって効率的な森林整備を推進することを目的としています。

    下川地域森林整備推進協定(下川地域森林共同施業団地)

      下川地域森林整備推進協定は、平成2212月に下川町と上川北部森林管理署が、「森林・林業再生プラン」を推進していくための設計図である「森林・林業の再生に向けた改革の姿」の実現に向けて、効率的かつ持続的な森林経営を推進するとともに、適切な森林整備の推進と併せて森林資源の循環利用を促進する目的で締結しました。平成245月には、当時の「森林・林業基本計画」において、林業の持続的かつ健全な発展を図るため、国有林においては民有林と国有林が一体となった森林共同施業団地の設定をすることなど、施業の集約化等を推進する方針が示されました。これを踏まえて協定区域を拡充し、国有林14,784ha、町有林3,767haとなりました。(図2)
      さらに平成303月には協定を更新し、下川地域森林共同施業団地として森林整備の年次計画を定め、現地検討会や会議等の開催を通じ、合意形成を図りながら効率的な森林整備を進めています。
    図2
    図2

    町有林と国有林の路網を接続

      効率的な森林整備には、路網の整備が重要であり、路網が接続されることで森林整備の効率化が図られます。
      これまでの取組では、町有林と国有林が隣接する箇所において、路網整備として国有林(3,859m)、町有林(389m)の林業専用道を接続し、下川町と契約している分収造林地での保育作業や間伐等の実施で路網の相互利用を行えるようにしました。それにより作業現場までの通勤や木材輸送の距離が短縮されたり、これまでアクセスが難しかった場所での利用間伐が可能になったりと効率的な森林整備が促進されています。

    国有林と町有林を接続した路網の位置図
    ※画像をクリックすると別ウィンドウでより広域の図面が開きます

    林業専用道の接続箇所

    中川地域森林整備協定(中川地域森林共同施業団地)

      中川町内の森林の多くが、河川を挟む両岸の斜面に位置していることから、町有林・国有林が一体となった森林整備を進めるためには、林道等の路網整備を効率的に整備することなどが課題となっていました。
      中川地域森林整備推進協定は、中川町と上川北部森林管理署が相互に連携した路網整備を推進し、協力して森林整備や木材生産に取り組むことによって、一層の地域林業の活性化を目的に、平成255月に協定を締結しました。平成303月には、さらなる施業地の集約化と効率的な路網整備の推進を図るため、協定区域を従来の約6割増となる2,415haを拡充し、6,375ha(国有林5,614ha、町有林761ha)としました。(図3)
      また、新たに同区域を中川地域森林共同施業団地に設定し、森林整備の年次計画を定め、町有林と国有林が一体となって効率的な森林整備を推進し、地域の林業・林産業の活性化に向けた取組を進めています。
    図3
    図3

    民国連携した共同土場(ストックヤード)の活用による供給体制の整備

      中川地域森林整備推進協定区域の佐久地区において、国道から数百メートルと利便性が極めて良い町有地に、平成2811月に森林管理署がフェンスや門等の整備を行い、0.55haの民有林材と国有林材の共同利用を目的とした共同土場(ストックヤード)を開設しました。

    民国連携した共同土場(ストックヤード)

      国有林と町有林から出材する原木の協調出荷により、山元と工場の間の中間土場に原木を集め、ロットを纏めることで、いろいろな材種の丸太を用途に合わせた多様な買い方ができるようになり、販売機会の拡大に繋がっています。平成28年度から平成29年度までのストックヤードを利用した丸太の材積は、トドマツなどの針葉樹の一般材、低質材等を主体にメジロカバ、セン等の広葉樹の一般材から原料材まで、国有林材2,400m3、町有林材1,100m3となっています。今年度も継続して共同土場(ストックヤード)を活用しており、町有林と国有林が連携し、安定的・効率的に木材を供給する体制の整備を進めています。

    低コスト造林の実践に向けた取組

      戦後植栽された人工林はこれから本格的な利用期を迎え、多くの人工林で主伐が実施されます。主伐後は森林を将来にわたり維持し持続的な林業を確立するため再造林を行う必要があります。今後増加する再造林を確実に行っていく上で造林の低コスト化を推進することが重要な課題となっています。当署では、伐採から植栽までを一貫して行う「一貫作業システム」や低密度植栽など低コスト造林の実践に向けた取組を行っており、今回はコンテナ苗の調査・検証について紹介します。

    コンテナ苗の調査・検証

      コンテナ苗を利用することによって期待される効果として
    1. 初期成長が良いことから下刈回数の低減
    2.生存率が良いことから植付効率の向上
    3.植栽時期を選ばないことから植栽時期の拡大による事業の平準化
    が挙げられていました。これらの有効性を検証するため、平成25年度から、同一箇所に植栽したコンテナ苗と裸苗の比較対照プロットを設定して調査・検証を行っています。
      これまでに、当署管内3地区においてトドマツ、エゾマツ、アカエゾマツのコンテナ苗と裸苗について、植栽時から1年毎の成長量(苗高、根元径)及び生存率をそれぞれの樹種毎にトータルで620本の調査を実施しデータを収集しました。
      また、トドマツコンテナ苗を植栽した1地区においては、植栽時期の違いによる成長量や生存率を検証するため、7月~10月に植栽したそれぞれ50本のプロットを設定しています。

    アカエゾマツコンテナ苗の生育調査

    平成25年度から5年間の調査の結果では、トドマツ普通苗(10月植)と比較してトドマツコンテナ苗(7月植~10月植)の生存率が高い状況となっています。
    生存率

    今後もコンテナ苗の調査・検証を継続して実施し、
    1. 初期成長や生存率が良いことから、低密度植栽による造林コストの低減
    2.秋植を取り入れた「一貫作業システム」との組み合わせによるトータルコストの削減
    ができることの検証と情報発信を行い、地域において、コンテナ苗の導入促進が図られることを目指していきます。

      造林コストの低減に向けてはこのほかにも、天然更新も有効な手法の一つであることから、グラップルレーキによる地拵を実施し、日陰となりやすい林縁部でトドマツの天然更新の可能性を期待し、天然更新の状況を経過観察することにしていました。これについては、平成26年度の「北の国・森林づくり技術交流発表会」で「道北における一貫作業システムの充実に向けて」というテーマで発表しています。現在も継続して調査を実施しているところですので、今後、これらの検証結果も地域に示したいと考えています。

    地域課題の解決に向けて

      地域における森林・林業に関する様々な課題の解決に向け、まず、地域の課題やニーズを把握することが重要であり、これまでも管内の市町村や地元総合振興局と林政連絡会議等を個々に開催して意見交換を行っています。
      このような意見交換を通じて、管内では、主伐期を迎える人工林が増加する中、この資源を伐採・利用することにより林業の成長産業化につなげること、そして伐採後の再造林を確保し、資源の循環利用を確実なものにしていくことが重要となっています。しかし、主伐後の再造林費用、特に植栽や保育といった初期段階のコストが高く、加えて、林業従事者の高齢化や担い手不足という問題を抱えている市町村が多くあり、再造林を進めるうえで、造林の省力化と低コスト化が課題となっていることが分かってきました。こうした状況を踏まえて今後は下刈作業の低コスト化や軽労化に向けた乗車式草刈機に係る現地検討会を開催し、伐根や起伏に対応した走行性をどのようにできるかなどの検討を重ね、今後の実用化に向けて取り組んで行きたいと考えています。

    国有林フォレスターとして

      把握されたこのような地域の課題やニーズに対して、どのように解決していくかがポイントであり、解決のために、署の担当等を含めたチームで一丸となって粘り強く取り組んでいくことが、地域との信頼関係につながると考えています。また、課題解決に向けて、国有林フォレスターとして何ができるかを考え、それを行動に移すこと、そして、地域と連携した取組のなかで中心となるべき役割を担っていることを自覚して行動することが不可欠だと思っています。そして取組を推進していく上では、具体の成果をイメージしつつ、市町村、地元総合振興局等の民有林関係機関と連携を深めながら前進し、実績を出していければと思います。
    今後も、地域の実情を把握し、地域の皆さんの理解と協力を得ながら、林業・林産業の活性化のために、国有林フォレスターとして貢献していきたいと考えています。

    上川北部森林管理署 森林技術指導官 海野 勝也

    お問合せ先

    上川北部森林管理署

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