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北海道森林管理局

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    釧路・根室地方の林業・林産業の活性化に向けて

    根釧西部森林管理署の取り組み

    根釧西部森林管理署は釧路市、釧路町、厚岸町、浜中町、標茶町、弟子屈町、白糠町、鶴居村の1市6町1村に広がる約18万2千ヘクタールの国有林を管理経営しています。
    当署ではこれまで、市町村森林整備計画推進チームや地域林政連絡会議、釧路根室地方森林・林業活性化を推進するための連絡会議(以下 連絡会議)に参加する中で、路網の連携や防風林の管理、現地検討会等様々な地域の森林・林業の課題に取り組んできました。
    地域の方々と様々な取り組みを進めていく中で、連絡会議の幹事会より要請があり、森林・林業の技術的な部分に関して講演する機会がありましたので、その内容を中心に紹介させていただきます。

    連絡会議での講演

    連絡会議には、構成する団体として東北海道木材協会、根室釧路地区森林組合振興会、根室・釧路(総合)振興局、市町村、そして根釧西部森林管理署が参加しています。
    毎年、連絡会議の総会が開かれ、平成28年度(第17回目)は活動計画として、

    1. 森林・林業・林産業の振興施策に関する調査及び研究を行うこと。
    2. 連絡会議を構成する各組織が幅広い情報交換を行い森林・林業・林産業の活性化に向けた予算確保、施策の実現に向け各組織が取組みを強化すること。
    3. 流域内森林・林業・林産業の振興と、釧根(地域)産材の需要の拡大に取組むこと。
    4. 森林の持つ公益的機能の維持・増進を図り、豊かな北海道の森林を次世代に引き継ぐことを目的とした森林環境税(仮称)の導入については、林活議連をはじめ構成団体と連携し取組むこと。

    を採択し活動を進めてきたところです。

    釧根地域では、「合板・製材生産性強化対策事業」等を活用して、森林施業を低コストに実施するための路網の整備や高性能林業機械の導入、伐採された木材を有効活用するための木材加工施設や木質バイオマス施設の整備、加工された木製品の利用拡大するための木材公共施設の整備など、川上から川下に至る総合的な取り組みに対して助成等を行い、地域の特性や現状と課題に対した取り組みを進めています。
    平成29年2月20日、連絡会議が開催した研修会に講師として参加し、この釧根地域の取組みをふまえ「根釧西部森林管理署の取り組み」の中から、エゾシカ対策、造林の省力化関係では、管内雷別地区で実施した天然力を活用したトドマツ人工林の新たな施業タイプの開発のほか、特に省力化に繋がる路網整備に重点を置いて説明したところです。



    研修会の様子

     

    エゾシカ対策に関する取り組み

    釧根地域ではエゾシカによる農林業被害が深刻化しているため、平成27年度に上尾幌国有林でモバイルカリングを、平成28年度に上尾幌国有林で囲いワナによる捕獲事業を実施しました。
    また、平成27年度に釧路市で、平成28年度に厚岸町で、それぞれ国有林が林道除雪やエゾシカの誘引を行い、市町村は捕獲と回収を行う協定を締結し、役割分担をしながらエゾシカ対策に取り組んでいます。



    車両で移動(モバイル)しエゾシカの個体数管理(カリング)を行う

     

    造林の省力化・低コスト化に関する取り組み

    一貫作業システムにおける機械地拵え

    造林における従来の作業方式は伐採後、翌年以降に地拵え、植付を行うこともありますが、一貫作業システムは従来の作業方式と異なり伐採と地拵えをほぼ同時に行い、その後すぐ植栽する作業システムとなっています。
    この作業システムによっての効果は

    1. 素材(丸太)の生産で使用した大型機械を流用することで機械経費の縮減が期待される
    2. 今まで人力で行われていた地拵えを機械化することにより作業の省力化が期待できる
    3. 地拵え時に植生の根茎を切断、除去することで下刈り回数の低減が期待できる

    等です。
    また、地拵えの機械化には、大型機械に取り付ける様々なアタッチメントがあります。



    グラップル+バケット



    グラップルレーキ

    釧根地域の森林は緩傾斜地が多くあり、大型機械による作業が期待できます。

    当署では、平成29年度に一貫作業システムの実施を予定しており、大型機械による地拵えを行うこととしているので、結果を地域に発信していきたいと考えています。

     

    森林作業道の必要性

    森林作業道は間伐等の森林作業のために継続的に用いられる簡易な道であり、林業機械の走行や林内作業を考慮して作設します。
    北海道では、平成23年度より森林作業道作設指針が示され、森林作業道の規格や仕様が定められています。
    縦断勾配を18%(10度)以下で作設し、フォワーダ等林内作業車両を活用した効率的な集材により、生産性・安全性の向上に繋がります。
    釧根地域の森林地形は緩やかなところが多く、列状伐採であればハーベスタ等が林内走行して伐倒・木寄せ等の作業を行うことが可能であり、森林作業道も必要最小限の幹線のみの作設で作業が可能になります。
    この幹線を、「雨天時に森林作業道自体が水の通り道となってしまい、集まった水が濁水となり、林道等に流れ込み災害を起こす恐れがあり、緩やかな排水が可能となるように林道から森林作業道への取り付け部分を作設するなど森林作業道が林道に与える影響」を考えることや「傾斜に向かって縦に森林作業道を配置すると、水の通り道となって森林作業道が壊れやすくなり、更には集材作業が非効率になってしまう」ことなどに留意し、今後継続して造林作業にも使用することを意識して丈夫に作設することで、小型車等の走行が可能になれば、造林作業時に機械等の運搬や通勤路として活用することができ、造林作業の低コスト化に繫がることが期待されます。



    造林作業に森林作業道を利用

    民有林、国有林ともに人工林の主伐期を向かえ、造林事業の拡大が見込まれていますが、造林事業は厳しい条件で行われる人力作業であり、その担い手も減少傾向となっています。
    釧根地域では、比較的平坦な地形から造林作業における機械化が一層期待出来る地域であり、機械化によって造林事業の軽労化を進めることで担い手不足の解消に繋げる等、釧根地域が造林の情報発信基地として十分可能性を持っていることを結びとして終了しました。

    森林作業道作設のポイントについて

    連絡会議では、釧根地域の森林の特徴である緩傾斜地での森林作業道の活用について考えてきましたが、一方で中傾斜地や急傾斜地が多くある地域もありますので、国有林での森林作業道の作設時に注意すべきポイントについて紹介します。

    森林作業道とは

    「森林作業道」の考え方は、林野庁に設置されていた路網検討委員会で作成された「森林作業道作設指針」(平成22年11月17日付け林野庁長官通知)に基づいています。
    木材を伐採し運び出すための道で従来は「集材路」「搬出路」等と呼ばれていました。
    大きく変わったのは、「簡易に作設し繰り返し利用する」という考え方が加わったということであり、そのために簡易に丈夫な作り方を考えていくこととなったものです。

    路網計画と路線選定

    伐採搬出の対象地の森林施業を見据え安全かつ効果的な作設が必要とされており、使用する作業システム(伐採と搬出に使う林業機械と人員配置)や、林地傾斜などの林地条件に応じて必要最小限の幅員で作設することが肝要とされており、留意点は以下のとおりです。

    1. 林業機械が効率よく移動や作業が出来る必要最小限の路網密度と循環型の路網配置を検討する。
    2. 幹線は尾根部等傾斜のゆるい箇所に作設し、支線は等高線に沿って作設する。
    3. 周辺環境への影響を予測する。





     

    縦断勾配

    縦断勾配は、木材の搬出作業を行う車両が木材を積載しても安全に走行ができることを基本として、作業を行う車両の自重、木材積載時の荷重バランス、エンジン出力などのほか、路面の固さ、土質による滑りやすさ、勾配が急になるほど路面侵食が起きやすくなること等を考慮して計画されており、縦断勾配の目安は概ね10度(18%)以下で作設することが基本です。
    失敗事例として、急勾配が長く続く森林作業道を作設した結果、森林作業道に雨水やわき水等が集まって多量の水が流れ、流速が早まり川のように深く洗掘されることがあり、森林・林業関係者でこの状況を見たことがある方は多いと思います。

    純粋な土構造

    作設時に表土(堆積有機物層含む)の有機物が混じると腐葉等により路体が脆くなり、崩壊します。
    このことは従来の搬出路等で多く見られた現象で路面のクラックや崩落などを引き起こす原因の一つと言われています。


     

    森林作業道は土構造であるため、作設の際には表土部分をしっかりとはぎ取り、階段状に掘削した上で堅く締め固めることが長持ちさせるためには重要なポイントであり、路体をより強固な物にするため掘り下げて出てきた礫質土を路面側に使うこともあります。
    表土は作設後の盛土法面にふりかけて緑化を促します。

    カーブの作設

    カーブの選定は、傾斜の緩い尾根部に計画し作設しますが、尾根部に作設出来ない場合は、やむを得ず、盛土により平坦な作業機械の旋回スペースを設けたスイッチカーブを作設します。
    カーブは作業車両が何度か走行しているうちに履帯の撹乱によって路面が掘れ、大変危険で急なカーブになってしまい、集材の効率が下がって搬出コストが上がってしまいます。
    繰り返し使用する前提に立つと、作設コストがかかったとしても、しっかりとしたカーブの作設によって安全性や作業効率が向上するのであれば検討すべきことだと考えています。



     

    現地発生材の利用

    簡易に森林作業道を作設するには現地で調達できる資材の利用も効果的であり、3つの事例を紹介します。

    1. カーブでの工夫

      現地にある木材を丸太にしてカーブに埋設することにより、作業機械の内側履帯を材の上で滑らせて旋回させることで、路面の撹乱を防ぎ保護安定させる方法です。


    2. 路面排水の工夫

      排水溝で集めた水を横断させるため現地にある丸太を使用した事例です。
      排水溝は開渠が基本です。湧水などがある場合には側溝で水を集めてその場で排水することが重要であり、水量を十分に考慮し路体の決壊を防止するために必要により水たたきの設置が必要になります。

      【洗い越し工】湧き水を側溝で受け丸太部分で流します


    3. 沢渡りの工夫

      洗い越しを施工する際に、現地で石材が発生した場合、それを利用することもあります。
      施工の際のポイントは、上流部に池を掘る等により一端水を集め流速を弱めて面で排水することです。
      水の流速を抑え面で排水することにより、一カ所に流水が集中することが押さえられ浸食を軽減することが出来ます。


    地形に合わせて作設する

    森林作業道の線形は、尾根部では出っ張り、沢部では引っ込む屈曲線型にすることで、切土高が抑えられ、林業機械のキャビンが旋回しやすくなり、チェーンソーマン等の作業者が林内にアプローチし易くなります。
    また、森林作業道の作設時の土工量の軽減にもつながります。
    重要なのは屈曲線型にすることで、雨水をカーブ部分で路面排水させ、路帯への被害を軽減しています。



    切土高を押さえた作設

     

    その他の留意点

    その他の留意点として

    1. 既設路を再利用する場合には、縦断勾配が急な既設部分は使用せず、縦断勾配が緩くなるように新設路を作設して結ぶ。
    2. 林道等に森林作業道から水が流れ出さない様に、直線距離が長い真っ直ぐな道は作設しない。
    3. 事業終了時は必ず道を均す。

    などがあります。



    壊れにくい森林作業道の検討


    これまでの経験から、森林作業道の作設には様々な留意点がありますが、地形や土質、傾斜などの条件により様々な作設方法も考えられることや、森林作業道作設指針は、森林作業道を作設する上で考慮すべき最低限の事項を目安として示されたものであることなどを踏まえ、地域の森林施業にあった道作りを考えていかなければならないと考えています。
    今後も作設した森林作業道の検証や、現地検討会を行うなど技術の向上・普及に努めたいと考えています。

    フォレスターとして

    地域林政調整官として、ここ釧路市にある根釧西部森林管理署に着任してから三年目を迎えました。
    着任当初は自分の業務があまり理解出来ず釧路総合振興局との取組みだけを行う形になっていましたが、地域林政調整官としての本来の業務を知り、十勝・根室地域林政連絡会議や現地検討会に積極的に出席することで新たな理解が深まりました。
    振興局とも交流が深まる中、地域が共通する課題(防風保安林の機能を維持した更新方法)や釧路、根室地域の森林の特徴である平坦な地形を生かした施業など、森林施業の共通の取組みの形がやっと見えてきたと思っています。
    当署で今年度開催する現地検討会は、「様々なアタッチメントを使った大型機械地拵え」や「伐採と地拵えを一貫作業で行う事業の紹介と造林で使える森林作業道」等を予定しており、地域の課題に合った現地検討会になるのではないかと期待しているところです。
    また、造林の拡大が想定されるところですが、過酷な条件化の中人力作業で行うことが多い造林作業者は担い手不足にあり、一刻も早く機械化が進めばと考えているところです。
    国有林も植付け機械を使った現地検討会を予定しており、北海道(振興局)でも、下刈りの機械化テスト現地検討会を開催するなど、その一歩は始まりかけています。
    地域における森林・林業に関する様々な課題の解決に向け、振興局・森林室や民有林関係機関と連携を図り、森林・林業の活性化のためにも国有林フォレスターとして貢献していきたいと考えています。



    根釧西部森林管理署
    地域林政調整官  藤原  寿一

    お問合せ先

    根釧西部森林管理署

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