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北海道森林管理局

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    地域における木材利用・木質バイオマス利用の拡大に向けて

    網走中部森林管理署(平成29年3月)

    網走中部森林管理署では、地域材の利用拡大に向けた様々な取り組みを行っているのでご紹介します。

    地域の概要

    網走中部森林管理署は北海道の北東部にある置戸町に位置し、管轄区域は北見市・置戸町・佐呂間町・訓子府町の1市3町で森林面積は約17万2千ヘクタール、森林率は約67%となっており、そのうち北見市・置戸町・佐呂間町の1市2町の国有林約10万6千ヘクタールを管理しています。

    当署を含むオホーツク総合振興局管内は林業経営が活発な地域で、人工林率は国有林で30%、民有林で46%となっており、北海道内平均27%に対して人工林の比率が高い地域です。

    また、木材加工も活発に行われており、管内の製材生産量は、道内全体の4分の1を占める約23万7千立方メートル(平成26年度)となっています。

    当署管内の人工林を見ると、国有林・民有林を合わせ約7割が9齢級以上を占め、その内、カラマツ人工林の多くが主伐期を迎えており、トドマツ人工林についても今後、主伐が増えていくことが見込まれます。


    木材が集積された土場

    地域の課題の解決に向けて

    地域材の利用拡大に向けた取り組み

    多くの人工林が主伐期を迎え伐採量の増加が見込まれている当地域では、民有林と連携して人工林の効率的な伐採・搬出を推進し、木材を安定的に供給する体制の構築が重要だと考えています。

    また、木材産業が活発な当地域の特性を活かし、今後供給量が増加する木材を有効に活用することが地域の活性化にもつながると考えており、当署では地域の課題として人工林材の利用拡大に向けた取組を推進しています。


    地元の集成材工場

    地域への理解促進を目指した木材利用見学ツアーの実施

    当署では、森林・林業に対して広く一般に普及を図るとともに、地域における木材の利用を推進させるための取組として、平成27年から置戸町・新生紀森林組合との共催で、伐採された木材が製材工場で加工されて建築材料となるまでの一連の流れを実際に見る一般市民向けの「置戸の森林見学会」を実施しています。

    平成28年は、地元の森林で伐採された木が地元で加工されて実際に使われるのを見学してもらうことで、参加者の方に地元の木材を使いたいと思って頂くことを狙いとして、置戸町の民有林・森林組合の製材工場・当署の木造庁舎を見学することとし、10月29日に13名の町民の方にご参加いただきました。

    民有林では伐採を行っている現場を見学し、「ハーベスタ」と呼ばれる高性能林業機械による作業の実演を見学していただきました。

    伐採・枝払い・玉切りを行えるハーベスタを初めて見た参加者からは、「林業のイメージが大きく変わった」、「林業の仕事がどのように行われているか知ることができてよかった」などの感想をいただきました。


    ハーベスタを見ている参加者

    製材工場では丸太が工場で製材となっていく工程を見学し、伐採された木が無駄なく利用されていることを実感していただきました。


    工場見学している参加者

    その後、当署の木造庁舎を見学していただきました。

    当署の庁舎は、集成材をジョイントとした丸太立体トラス工法(三角形を基本単位としてその集合体で構成する構造形式)により平成5年に建築されたもので、参加者には大型施設を木造で建築することが可能となっていることを実感していただきました。

    また、木材を多く利用できることから公共施設等を中心に大型木造建築物が増加していることも紹介しました。


    地域で加工された木材を使用した留辺蘂消防支署建築現場

    見学会の最後には、参加者から「森林について興味を持った」、「木について深い親しみを持った」等の意見をいただき、成長した1本の木が伐採され木材として利用される過程を知り、林業や木材利用の重要性を学ぶ貴重な機会としても高評価をいただいており、今後も継続開催して木材利用の重要性を伝えていきたいと考えています。

    地域材の安定供給に向けた取り組み

    • 木材生産の低コスト化

    当地域では今後、伐採量が増加することが見込まれているため、低コストで効率的な木材生産を推進することで生産性を高め、安定的な林業経営を図っていく必要があります。

    国有林における伐採・搬出の作業システムは、従来までの「チェーンソー・トラクタ・グラップル」から「ハーベスタ・フォワーダ」を主体とした機械作業へ大きく変わり、林業の低コスト化・効率化の一つとして国有林で伐採作業を行う林業事業体を中心に普及してきていますが、当地域の民有林関係者にはあまり普及していないようです。

    そこで、当署では木材生産作業の低コスト化・効率化を推進させることを目的として、森林組合や民有林で伐採作業を行う地域の林業事業体に呼びかけて現地検討会を実施しました。

    現地検討会は国有林の列状間伐作業地をフィールドに、間伐の状況やフォワーダによる集材等の作業を確認しながら、作業の効率性などについて意見交換を行いました。

    列状間伐は、森林作業道(伐採した木材を集める集材作業で使用するための、林業機械が走る簡易的な道)との組み合わせにより効率的に搬出ができ、労働災害が発生しやすい「かかり木」が少なく安全性の向上にもつながります。

    意見交換では「効率的に作業するには機械の配置を工夫する必要があると感じた」、「森林作業道によって集材作業がスムーズにできる」等の意見が出され、参加者は現地検討会で作業現場を見学したことにより効率的な作業の必要性を共有できたのではないかと感じています。


    現地検討会で列状間伐について説明

    • 工程管理システム

    「工程管理システム」は、後志森林管理署が作成したもので、作業功程、生産コスト、機械ごとの作業功程が算出されるエクセルソフトです。

    同管理システムは事務処理の負担を招かないよう、使用者が簡易に工程を管理できるよう工夫されており、また、誰でも使用できるよう後志森林管理署のホームページで公開されています。

    当地域の林業事業体の生産性を向上させるためには、このシステムを普及することが効果的と考え、地元の森林組合、事業体を対象として説明会を行いました。

    同管理システムの入力方法や活用方法を周知するため、実際にシステムを操作し入力項目や内容を説明しながら、功程が算出される一連の流れについて説明しました。

    現状を数値で見える化できる同管理システムが普及することで、林業機械の作業功程を算出して分析を行い、作業システムを効率化して木材生産の低コスト化を進める林業事業体が増えればと考えており、作業システムを見直す際の参考としてもらえるよう関係者へ働きかけを行いました。


    「工程管理システム」説明会

    木質バイオマス利用に向けた現状と課題

    近年、各地において木質バイオマスの利用に関心が高まっており、全国と当地域の現状等について国有林フォレスターの立場からご紹介させていただきます。

    全国の木質バイオマス利用の現状

    木質バイオマスについては、『エネルギー基本計画』において、「大きな可能性を有する未利用材の安定的・効率的な供給による木質バイオマス発電及び木質バイオマス熱利用等について、循環型経済の実現にも資する森林資源の有効活用・林業の活性化のための森林・林業施策や農山漁村再生可能エネルギー法等を通じて積極的に推進し、農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギーの導入を推し進めていく。」(平成26年4月一部抜粋)とあり、再生可能エネルギーとして全国的に利用を推進していくこととされています。

    主に未利用木材を使用する木質バイオマス発電施設は、全国で70箇所程度が設備認定手続きされ、うち30箇所程度が稼働しています。

    また、木質バイオマスは熱利用としても使用されており、木質資源利用ボイラーは製材工場などを中心として2000基以上が設置され、最近では公共施設や温泉施設、農業施設における導入も進んできています。

    木質バイオマス利用に関する事例紹介

    平成28年7月に林野庁森林技術総合研修所(東京都八王子市)で「木質バイオマスのエネルギー利用」の研修が開催され、地方公共団体職員や国有林職員など全国から集まった37名の一人として参加しました。

    この研修は、木質バイオマスのエネルギー利用による山村の振興と木材利用の需要拡大を図るため、国内外の先進的な取組事例等から木質バイオマスのエネルギー利用に関する知識を習得し、地域に適応した木質バイオマスのエネルギー利用を指導できる者を育成することを目的として行われたものです。

    研修の中で群馬県吾妻郡東吾妻町にある木質バイオマス発電所と木材チップ工場を見学する機会がありましたので事例として紹介します。

    • 木材チップ製造工場

    木材チップ工場では、地域の間伐材等を使って同じ地域で稼働している木質バイオマス発電所の燃料となるチップを生産しています。

    このチップ工場は、林地残材の有効利用と林業の活性化を目的として、異業種も含めた地元企業6者で組織する協同組合によって運営されています。

    チップ製造は平成26年4月から開始され、現在は1日に約50トンのチップを製造、木質バイオマス発電所へ出荷しています。

    原料は針葉樹(スギ)を中心として、大径材や枝、端材などを扱っているほか、広葉樹も含めて広く受け入れしており、地域の林業者、森林組合、県有林、国有林などから広く集荷しています。

    間伐材については受入・納入伝票に間伐材等由来の木質バイオマスであることの証明書を添付しトレイサビリティを確保していました。

    木質バイオマス発電所からは燃料供給の要望が強く、原料集めには苦労しているとの話もありました。


    木質バイオマス研修で見学したチップ工場

    • 木質バイオマス発電所

    平成23年9月より営業運転を開始した木質バイオマス発電所で、木質バイオマスを高効率で電力に変換し、石油や石炭、天然ガスなどの一次エネルギー使用量の低減に貢献するとともに、廃木材の適正処理及びサーマルリサイクル(焼却の際に発生する熱エネルギーを回収・利用すること)による発電を行うことを目的として建設されました。

    木質チップ専焼の火力発電所で再生可能エネルギー発電設備の認定を受けており、発電規模は1万3,600キロワットで燃料となる木質チップは1日に約380トン、年間では約14万トン使用しています。

    建設廃木材や剪定枝に加え従来活用が進んでいなかった間伐材も利用し、地域の森林整備の推進につながっています。

    「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)」において間伐材等由来の木質バイオマスは売電時の価格が一般木質バイオマスと違うことから、燃料はトラックごとに厳格に計量され伝票、証明書で量を管理し、比率によって売電の価格を計算しているとのことです。

    現在、燃料のうち間伐材等の未利用材の比率は約10%で、それ以外は一般木材を燃料としていますが、発電所では間伐材等由来の木質バイオマスの比率を上げていきたいとのことであり、この地域の森林・林業において、木質バイオマス発電所は非常に大きな存在であると感じました。

    オホーツク地域の木質バイオマス利用状況

    森林資源が豊富なオホーツク地域においても、資源を有効活用するため木質バイオマス利用を積極的に進めています。

    当署から約100キロメートル離れた紋別市では、オホーツク地域の未利用木材を主燃料とした「バイオマス発電所」が建設され、平成28年12月に営業運転が開始されました。

    国産材を主燃料とした発電施設としては国内最大規模で、発電規模は5万キロワット、燃料は木質チップのほか石炭・ヤシ殻を混焼で使用し、木質チップは年間約22万トンを使用する予定となっています。

    また、発電所に併設するチップ工場のほかに、100キロメートルの圏内にある宗谷管内枝幸町と当署に隣接する遠軽町生田原の2か所に関連のチップ工場が建設され、原料の集荷が始まり地域における木材の利用状況にも変化が起きようとしています。

    当地域では早くから間伐材等を製紙用材や農業用敷料チップ等として活用しているため、現状では木質バイオマス発電所の稼働によって既存の需要先である製紙用材や農業用敷料チップ等他産業への影響が懸念されること、末木枝条等林地未利用材を活用するためには集積・運搬コストの問題があるなど、様々な課題があり、今後、地域で連携して課題を解決していく必要があると考えています。


    遠軽町にある燃料用チップの工場

    木質バイオマス利用における今後の課題

    全国的に木質バイオマスのエネルギー利用が進んでいる中、北海道においても紹介した紋別市をはじめとして江別市、苫小牧市、白糠町など各地に発電規模の大きな木質バイオマス発電所が建設され、本格的に運転が始まってきています。

    また、地域においても木質バイオマスを熱利用しているところもあり需要が増えていますが、安定供給体制の構築が課題となっています。

    今回研修で見学した本州の木質バイオマス発電所では、未利用材の比率は低くなっているところですが、森林率の高い北海道においては、多くの木質バイオマス発電所で間伐材等の林地未利用材を活用させていくことを主眼に建設がされています。

    このような中で間伐材や林地残材等の未利用材を有効に活用していくためには集荷や輸送、チップ加工までをいかに低コスト化させていくかが大きな課題であり、地域において低コスト木質バイオマス供給システムの構築を図る必要があると考えます。

    また、木質バイオマス利用に対する需要側の要求に対して国有林が民有林と連携を図って供給側としてどのように取り組みを進めて行くかが今後の課題であると考えています。


    遠軽町にある燃料用チップ向けの原木が集められた土場

    フォレスターとして

    当地域には木材の利用拡大や木材生産の低コスト化の推進、木質バイオマスの安定的供給等様々な課題があります。

    これら地域の課題解決に向けて、これまでご紹介した木材利用見学ツアーをはじめとした取り組みを地域で連携して進めており、今後も継続して取り組んでいきたいと考えています。

    当署では地域の課題解決に向けた取組を進めるため、署内に民有林支援サポートチームを設置して職員が協力しながら課題に向き合っています。


    当署の民有林支援サポートチーム全体会議の様子

    また、市町村森林整備計画実行管理推進チームや林政連絡会議等の各種会議や現地検討会等の機会を通じ、地域での課題の共有や情報交換等を行い、関係者と連携を図り、課題の解決に向けて取り組んでいます。

    平成28年8月、オホーツク総合振興局管内の北海道・地方公共団体・国有林の森林総合監理士(フォレスター)が集まり組織の垣根を越えて協力し、情報共有等を中心に連携の促進を図るとともに、管内の林業課題の解消等に向けた活動を目的として「オホーツクフォレスターズコミュニケーション」が設立されました。


    フォレスターズコミュニケーション設立総会の様子

    こうした活動を契機として民有林と国有林が一層連携を深め地域の林業振興に尽力する必要があると考えています。

    今後もフォレスターとして地域の森林・林業の現状と向き合い、国有林だからこそ取り組めることなどにチャレンジし、その結果を地域の関係者と共有することを通じて、地域の森林・林業・木材産業の活性化に向けて尽力したいと考えています。


    網走中部森林管理署
      森林技術指導官  林 裕之






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    お問合せ先

    網走中部森林管理署

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