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国有林発・フォレスター活動だより

地域課題に取り組む国有林フォレスター 

北海道森林管理局では「民有林と連携した地域の課題解決に向けた取組」を推進しています。

各森林管理署・支署では民有林との連携強化や技術的支援を具体化させるため、北海道の振興局、森林室との打合せを通して地域林業の現状把握と課題の共有を行っています。

そして、その中から各森林管理署・支署ごとに地域に貢献できる課題を絞り込み、テーマを設定しています。

「国有林フォレスター」は各地域において、これらの課題解決に向けた方策の検討を中心となって進め、具体的な施策の実施に結びつくよう取り組んでいます。  

上川中部地域における地域課題の解決に向けて

【上川中部森林管理署

上川中部森林管理署では、森林・林業に関する課題解決に向けて上川総合振興局と連携しながら取組を進めており、国有林フォレスター2年目となった私の平成27年度の取組をご紹介いたします。

地域の紹介

 

 

上川中部森林管理署の管理区域は、北海道のほぼ中央部、石狩川の上・中流部に位置し、旭川市・鷹栖町・東神楽町・当麻町・比布町・愛別町・上川町・東川町・美瑛町の1市8町にまたがっています。

当署管内西部の旭川市内には外国樹種見本林があり、観光名所や市民の憩いの場として親しまれており、四季折々の森の景色などを楽しむことができます。

東部には美瑛岳、十勝岳などの石狩山地南西部の火山峰が連なっており、大雪山国立公園の一部となっています。

当署管内は針葉樹と広葉樹が混じり合う国内有数の針広混交林が広がっており、森林面積は25万1千ヘクタール、国有林はその内の約63パーセントを占める15万9千ヘクタールとなっています。

森林面積の約27%を占める約6万8千ヘクタールは人工林であり、9齢級をピークとした山型の齢級構成となっていることから、今後主伐期を迎えるとともに出材量が増加していくことが想定されます。 

上川中部署管内の森林面積円グラフ

管内の森林面積

上川中部署の齢級別人工林面積の棒グラフ

            当署の齢級別人工林面積

外国樹種見本林の写真

外国樹種見本林

雪の残った美瑛富士から十勝岳までが写った写真

美瑛富士から十勝岳まで

 

地域の現状と課題 

北海道では各地で大規模バイオマス発電施設が建設され、順次稼働している状況です。

上川地域でも木質バイオマスのエネルギー利用が盛んに行われており、当署管内では旭川市をはじめとした4市町で14台の木質バイオマスボイラーが導入されてます。

大規模バイオマス発電施設だけでなく、地元での木質バイオマスのエネルギー利用に対する林地未利用材をはじめとした木質バイオマス原料の安定供給が重要となっています。

このほか、地域の人工林が主伐期を迎え、伐採量や主伐後の再造林面積が増加すると予想されるため、現状の伐採・造林方法を、生産性やコスト削減を重視した施業方法に転換していく必要があると考えます。

このため、北海道型作業システムの普及や列状間伐の推進、小規模分散している民有林と大規模な国有林で団地化を進めることで施業の効率化を図るなど、民国連携して取り組んで行くことが求められています。

大規模発電施設と上川地域の位置図

大規模発電施設と上川地域の位置図

 

署の取り組み

木質バイオマス資源の安定供給

昨今、「再生可能エネルギーに大きな注目」がされていることや、「上川管外でFIT制度(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)を活用する大規模発電施設が稼働予定」の状態にあることから、今後木質バイオマス原料の需要が高まることは必至であり、資源の安定供給が課題となっています。

これは上川地域全体の課題であるとして、平成25年度に上川管内の市町村、森林組合、研究機関、事業者、北海道及び森林管理署で構成される、「上川管内木質バイオマス安定供給協議会」が設置され、「木質バイオマスを安定的に供給するための仕組みづくりを目指した検討や取組を行う」ことを目標にしています。

協議会では、目標達成のため「どうすれば林地残材や林地未利用材を効率よく搬出し、有利販売できるか」についてそれぞれの機関で取り組み、取り組み状況の共有と意見交換を行っているところです。

まだまだ試行錯誤しながら進めているところですが、木質バイオマス原料の安定供給及び儲かる販売方法を確立し、地域に貢献していければと考えています。

上川管内木質バイオマス安定供給協議会の写真

上川管内木質バイオマス安定供給協議会

 

 

北海道型作業システムの普及

北海道森林管理局では、生産性向上を目指して「北海道型作業システム」の確立に向けて取り組んでいます。

北海道型作業システムとは・・・

  1.  北海道の、傾斜が緩やかで地形が複雑ではないという特性を活かす。
  2. 効率的な路網配置によって細部路網となる森林作業道を減らして集材距離を短縮し、林業専用道の密度を上げることでトラック等輸送能力の高い車両を活かして速やかに材を運搬。
  3. ハーベスタやフォワーダが、林内に入って伐倒・造材・集材を行う。

といった、緩傾斜地を中心に高密度で効率的な路網配置と高性能林業機械の活用によって高効率・低コスト化を目指すシステムです。

 

高性能林業機械(ハーベスタ)が造材している写真

             高性能林業機械(ハーベスタ)による造材

 

当署管内の美瑛町にある国有林には、北海道型作業システムを試行的に実施するため147ヘクタールに及ぶ「北海道型作業システムモデル地区」が設定されています。

北海道型作業システムでは路網の配置が重要であり、路網計画等は有識者及び署や局の職員で構成される「北海道型作業システムモデル路網整備計画検討委員会」によって、フォワーダ等林業機械による森林作業道の運搬距離ができるだけ短縮され、かつ集材等が効率的に行えるような林業専用道の配置を検討し、平成26年度に4路線の7.3キロメートルが作設されました。

 

作設された林業専用道の写真

               作設された林業専用道の写真

 

平成27年度はこの作業システムで間伐を実施しました。

山土場を使用せず、森林作業道や林業専用道上でハーベスタが造材した材を林業専用道脇に集積し、トラックで搬出することでコストの縮減を図っています。

当署はこのモデル地区を現地検討会のフィールドとして活用しており、間伐事業の実施前や実施中に「生産性の向上を目指した作業システムの実証」を目的として、民有林をはじめとした林業関係者へ現地説明を実施しました。

現地説明では、路網の配置、高性能林業機械による施業及び土場を作らない施業等について説明を行いました。

参加者からは「林業専用道の狭いT字路部分で旋回が可能か」、「林業専用道の伐開幅については除根しているのか」などの質問や、「路網作設担当者は地形を見て検討するが、伐採関係者は伐採する木を見ながら検討する」といった視点の違いなどの意見が出されており、北海道型作業システムに対する参加者の関心の高さが伺え『作業の効率化・低コスト化』に向けた国有林の取組を普及できたと感じています。

今後は、バイオマス集荷にも適した施業方法の検討が必要であると考えています。

  

現地説明会で参加者が現地を確認している写真

               現地説明会写真 

 

列状間伐の推進

人工林における間伐の効率化、低コスト化の方法として列状間伐が上げられます。

しかし、当署管内の民有林では列状間伐が普及していないため、道有林と国有林が連携した普及活動が必要となっています。

そこで、上川総合振興局林務課の民有林担当者と打ち合わせを行い、当署管内の各市町、森林組合、民有林関係者、上川総合振興局、森林管理署等の林業関係者をメンバーとして組織されている、「市町村森林整備実行管理推進チーム(以下 推進チーム)」を活用して普及活動に取り組むこととしました。

上川中部地区の推進チームでは年に数回、会議と研修会を実施しており、平成27年度に研修会の目的を「上川中部地方の一般民有林における施業の低コスト化による計画的な森林整備の推進に向けて列状間伐に関する事例や技術の普及」として、市町村、森林組合、指導林家等を対象に2回実施しました。

 

1回目は上川町内の道有林で行われ、一般民有林における現状について室内研修を実施した後、6条植えの人工林でどのような伐採方法を選択するかについて研修を実施しました。

現地では今後初回間伐をどのように実施するかについて検討し、列状間伐の有効性や、今後の施業の参考になる等の活発な意見交換が行われました。

その後、場所を移動し上川町内にある、木質バイオマス利用施設「ウッドチップス」で、木質バイオマス用のチップ原料生産の状況を視察しました。 

ウッドチップスは間伐材を含む林地残材等の地域未利用材を収集し、木質チップを発電用、燃料用、オガ粉用として生産する施設であり、木質バイオマス資源を有効活用するための施設として期待されています。

 

2回目は美瑛町内にある国有林をフィールドとして活用しました。

初回や2回目の列状間伐における伐採列の方向や伐採幅など、列状間伐のイメージを室内研修で説明した後、現地へ向かいました。

現地では、

  1. 今年度実施した初回の4メートル伐採列状間伐実施箇所
  2. ハーベスタを使用した2回目の列状間伐箇所

を見ていただき、1回目及び2回目の列状間伐箇所の、伐採前後の蓄積を初めとした現況や伐採によって得られる効果等について、民有林で一般的に実施されている定性間伐と比較説明をしながら現地研修を実施しました。

 

室内研修の写真

室内研修

現地研修

現地研修

 

この2回の研修会に延べ94名の林業関係者が参加され、「小面積の私有林では、列状間伐が難しい」、「列状では残存列に不良木が残り、伐採列の優良木が伐採されるので、間伐効果が不明である」という根強い意見が出された一方で「列状間伐を見て理解が深まった」、「初回間伐では、列状を検討してみたい」という意見も出され、列状間伐の普及に向けて一歩前進しました。

今後においても、民有林と連携する中から間伐推進に向けた取組を実施していきたいと考えています。

 

民国連携したその他の取り組み

平成25年6月に北海道知事と北海道森林管理局長との間で締結された「北海道の森林づくりに関する覚書」に基づき、これまで上川総合振興局と木育活動について連携を図りながら実施して来ております。

平成25年12月、木育活動を推進することを目的に、北海道森林管理局(旭川事務所、上川中部森林管理署、空知森林管理署北空知支署)、上川総合振興局、旭川市、林業関係団体等により「木の町あさひかわ」木育を進める会を発足しました。

平成27年度は、木の良さを実感していただくために以下の活動を実施し、参加者等から好評を得ており、ます。

  1. 「保育士等を対象とした森林・林業体験会」:子供たちに教える保育士等を対象に、樹木博士認定、樹高測定や丸太切りなどの林業体験実施。
  2. 「本物の木でクリスマスツリーの展示」:間伐材の先端部分を利用し、市内の保育園等に本物の木を使ったクリスマスツリーを提供。
  3. 「木のプール貸出」:冬期間利用していない、旭川市及び林産試験場の木のプールを市内の保育園等に貸出。
  4. 「木育講座」:子供たちに教える保育士等を対象に、木育マイスターによる木のおもちゃを利用した講座実施。

 

樹木博士認定会の写真

樹木博士認定会

クリスマスツリーの写真

クリスマスツリー

木育講座の写真

木育講座

 

 

 

国有林フォレスターとして

平成27年度の1年、上川地区地域林政連絡会議での意見交換、情報共有及び現地検討会等を実施するなど、道の森林総合監理士等との連携及び市町村担当者との関係構築を中心に取組を実施してきました。

今後は、地域の課題解決に向けた取組を署内の民有林サポートチームと実施していくため、チームメンバーの得意分野、苦手分野を考慮して役割分担を行い、地域課題の種類に応じて柔軟な対応ができるように準備し、チームワークを活かして課題解決に向けた取組を進めていきたいと考えています。

また、平成28年5月に閣議決定された、「森林・林業基本計画」に基づき、国産材の利用割合や需要を高めるための施策等の推進をテーマとして、上川総合振興局等との連携を深めていくとともに、自分の苦手な分野である路網整備等について、近隣署の現地検討会への参加や同様の地域課題を抱えている他署の国有林フォレスターに確認することにより、自身の国有林フォレスターとしての知識・技術を高め、上川総合振興局と連携して各市町や民有林に対し技術的な支援ができるよう、地域の森林・林業関係者との交流を深めながら進めていきたいと考えています。

 

地域林政連絡会議の写真

        地域林政連絡会議

 

国有林フォレスターの写真

 

国有林フォレスター    

  上川中部森林管理署

    地域林政調整官 塚田 恭久

 

 


 

上川中部森林管理署

北海道旭川市神楽3条5丁目3番11号

電話: 050 - 3160 -  5745  

ホームページ:http://www.rinya.maff.go.jp/hokkaido/kamikawatyubu/

管轄区域:旭川市、鷹栖町、東神楽町、当麻町、比布町、愛別町、上川町、東川町、美瑛町

 


 

 

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お問い合わせ先

森林整備部技術普及課
ダイヤルイン:050-3160-6285
FAX:011-622-5235