ホーム > 政策情報 > 事業概要 > 民有林との連携 > 国有林発・フォレスター活動便り > 機械力に応じた低コスト作業システム構築の取組(後志森林管理署)


ここから本文です。

 

国有林発・フォレスター活動だより

地域課題に取り組む国有林フォレスター 

北海道森林管理局では「民有林と連携した地域の課題解決に向けた取組」を推進しています。

各森林管理署・支署では民有林との連携強化や技術的支援を具体化させるため、北海道の振興局、森林室との打合せを通して地域林業の現状把握と課題の共有を行っています。

そして、その中から各森林管理署・支署ごとに地域に貢献できる課題を絞り込み、テーマを設定しています。

「国有林フォレスター」は各地域において、これらの課題解決に向けた方策の検討を中心となって進め、具体的な施策の実施に結びつくよう取り組んでいます。  

 

機械力に応じた低コスト作業システム構築の取組

【後志森林管理署

後志森林管理署では、民有林と連携した森林整備を行うとともに、林業の低コスト化を推進するため高性能林業機械等を効率的に稼働させることを目指して「機械力に応じた低コスト作業システム構築」に取り組んでいますのでご紹介します。

地域課題の背景と取組の目的

後志森林管理署管内では、北海道、市町村、森林組合、当署等による「市町村森林整備計画実行管理推進チーム」を設置し、森林施業の集約化や林業技術の普及などに連携して取り組むとともに、合同で会議を開催し地域が抱えている課題の共有に努めています。

また、後志地域の課題解決に向けては、北海道の出先機関として民有林への様々な指導を行ってきている後志総合振興局林務課(以下 林務課)、同森林室(以下 森林室)のフォレスターと、当署の国有林フォレスターが連携して取り組むこととし、定期的に打ち合わせを行っているところです。

 

林務課及び森林室の民有林担当者と打ち合わせしている写真

            林務課及び森林室の民有林担当者との打ち合わせ

 

これまでの打ち合わせの中で、

  1. 近年、民有林においても列状による搬出間伐が取り入れられてきている
  2. ハーベスタなどの高性能林業機械の導入は徐々に進んでいるが、効率的に活用しきれていない
  3. 小規模の森林所有者が多く、森林整備の低コスト化のためには集約化が必要

といった地域の現状を共有し、 事業体等が所有する高性能林業機械等を効率的に活用することにより伐採搬出にかかるコストの縮減に繋がると考え、低コストな森林施業を目指して「機械力に応じた低コスト作業システム構築」に取り組んでいくこととしました。

 

ハーベスタによる造材作業の写真

                  ハーベスタによる造材作業

 

取組の内容

低コスト作業システム構築を目指して、平成26年度に間伐現場見学会、功程調査、功程診断書の作成と事業体への改善提案を行いました。

 

  国有林の間伐現場見学会の開催

管内の森林組合や林業事業体に効率的な森林整備のイメージを掴んでもらうため、高性能林業機械を活用した北海道型作業システム(車両系)により間伐を実施している国有林の現場を見てもらい意見交換を行いました。

参加者からは、「規模が大きく民有林にそのまま応用できないが、国有林の現場を見ることができて意義深い」「国有林は制約が多いイメージだったが、事業体が伐採列や作業道の選定をするなど簡素化が進んでいる」などの意見を聞くことができたと同時に、低コスト化を図る必要性を共有しました。

 

国有林の間伐現場を見学している写真

               国有林の間伐現場を見学している様子

 

事業体の功程調査の実施

低コスト作業システムを構築するためには、事業体における搬出間伐の現状を把握する必要があるため、林務課、森林室と連携し民有林において、高性能林業機械による搬出間伐の功程調査を行いました。

調査内容は機械別、作業種別の稼働・待機時間、出材量の計測で、この結果から1日当たりの功程を算出しました。

作業地の状況に応じて効率的に作業を行っている現場がある一方で、伐倒が終わるまで木寄せのためのグラップルが待機しているなど林業機械が効率的に稼働していない実態も見えてきました。

 

ハーベスタによる伐倒作業の功程調査をしている写真

              ハーベスタによる伐倒作業の功程調査

 

功程診断書の作成と事業体への提案

低コスト作業システムを事業体に普及するためには、現状を評価し具体的に数値を示すことが効果的と考え、功程調査の結果と公表されている労賃や機械経費により生産功程を算出しました。

さらに現状の分析と功程アップのための改善点、改善後の作業功程、生産経費などを記載した功程診断書を作成しました。

 

功程診断書について
 
  • 現状評価

功程診断書の画像1

実際に民有林の現場で搬出間伐の功程調査を行い、その結果を元に現状を評価
  • 提案した改善案

功程診断書の画像2

現状評価を踏まえ、改善点を事業者へ提案


功程診断書により現状と改善後の功程を比較することで、わかりやすい提案を実施

 

この功程診断書を使い、事業体に作業システムの改善を提案したところ、「生産性を向上させたいと思っているが、工程管理を行うことや作業システムの変更まで意識はなかった」「数値での表示は分かり易く作業従事者の功程アップへの意思向上に役立つ」など好意的に受け止めていただきました。

民有林の場合、国有林とは違い小規模分散した作業地ですが、工程管理を行うことにより現有の作業機械で生産性向上が可能なことが明らかになりました。

 

工程診断書を使い事業体に作業システムの改善を提案している写真

          功程診断書を使い事業体に作業システムの改善を提案

 

 低コスト作業システムの普及に向けた工程管理システムの作成

功程診断書を使い現状の評価と改善点を提案し、事業体に対し低コスト作業システムの普及を行ってきましたが、これまでの取り組みから、「小規模な民有林でも作業システムの改善により効率アップが期待できる」「工程管理による無駄の把握に至っていない」点に着目し、事業体自らが工程管理に基づく効率的な作業システムを検討できるように工程管理システムを作成しました。

 

工程管理システムの概要

工程管理システムの作成にあたって、入力内容が複雑・多岐になると使用する事業体等の負担が大きくなることから、「誰でも」「簡単に」を主眼において作成を進め、最初に基本情報として入力するもの以外は、事業体が作成している「事業日報」の内容とすることで、日々の入力は数分で終わるように工夫しました。 

 

事業日報より3つの項目を入力

作業日報入力画面の画像 

事業体が日々作成している事業日報から作業時間、使用機械、作業種の3項目を功程管理システムの作業日報入力欄に入力するのみ。

 

入力項目を元に直接事業費を計算し、生産性とコストを具体的に把握するための「作業功程」と「経費」、作業システムの検証を行うための「機械別の作業功程」を算出する構成にしました。

   

功程分析表の出力

作業状況の評価を行うためには分析結果をわかりやすく表示することが重要です。

作業現場の基本的な情報や機械の稼働状況・経費などの工程を分析するのに必要な情報が一覧となるよう、功程分析表を出力できるようにしました。 

 

工程管理システムで出力できる功程分析表

 

工程分析表の見本画像1

 

ア)基本情報

20160413工程分析表の見本画像2

ア)功程分析を行うために必要な、作業地の立米廻り(立木1本あたりの平均材積)や傾斜、平均集材距離等が表示される。

イ)機械別作業日数・経費

20160413工程分析表の見本画像3

イ)機械ごとの作業日数、人件費や機械経費が集計される。

ウ)作業功程・経費

20160413工程分析表の見本画像4

ウ)生産性(作業員一人が一日に生産できる丸太の量)や、生産単価(丸太を1立方メートル生産するために必要な経費)が算出され、同時に算出結果に基づくコメントが表示される。

エ)工程別機械別功程

20160413工程分析表の見本画像5

エ)作業工程別に機械ごとの生産性が表示される。

 

功程分析表を使用した作業状況の評価

功程分析表を使った作業システムの改善方法について説明します。

 

ア)基本情報

作業の功程を最も大きく左右するのは作業地の条件です。本表では林地傾斜や立米廻り、平均集材距離など最低限必要な情報を表示するようにしていますが、植生や石礫の有る無しなど把握できるものはメモなどしておくと分析に役立ちます。

 

イ)機械別の作業日数・経費

作業日数は各機械の総稼働日数を表し、1台あたりの作業日数が他の機械に比べ少ない場合は、現地に運びながら休ませていることになります。

機械経費は経費の大半を占めることから、機械を休ませずに効率的に活用することが重要です。

本表では、人件費を含む機械毎の経費と1日当たり単価も表示し、コストが一目で分かるため、事業体等のコスト削減意識が高まり人員や機械配置の見直しをするきっかけとなります。

 

ウ)作業功程・経費

作業功程(生産性)や経費(生産単価)は、林地傾斜や立米廻りなどの作業地の条件を勘案し、作業システムの効率性を判断する目安となります。

生産性は、生産事業の効率性を確認する際の指標として一般的に使われており、本表では北海道が設定している目標値に応じてメッセージが表示されます。

 

エ)工程別機械別功程

工程別機械別功程では作業種別に機械ごとの生産性を表示し、人員や機械数を勘案することで作業効率の低い機械・作業種が分かり、作業配置の検討に役立ちます。

生産性の高い機械が常時稼働するように他の機械の生産性を上げる工夫や、生産性の低い機械はその原因を調べ機械の配置を見直す等、処理能力の最も大きい機械を中心に作業システムを検討することで、作業の効率化が進み低コスト化につながります。

 

注)本表では、同じ機械で複数の作業(例:ハーベスタで伐倒、造材、木寄せ)を入力した場合、主な作業(伐倒)に集約されることから、作業種毎に集計するためには日報を作業種毎に整理する必要があります。

  

今後の取組

後志地域の林業事業体を対象に工程管理システムの使用方法、活用方法等について説明会を開催し、試験的に使っていただきました。

説明会では事業体から、「他の機械の工程計算も追加してほしい」「工程別の計を追加してほしい」などの要望をいただき、システムの改善を行いました。

今後は、多くの事業体等に使用してもらうため、道や他の森林管理署に協力をお願いし全道的な普及を行うとともに、意見・要望等をいただいて、より効果的なシステムへ改良していきたいと考えています。

なお、本システムは当署のページ(ページ最下部にリンクがあります。)でも公開しておりますので、自由にダウンロードして活用し、意見等をお知らせください。

多くの林業事業体等が本システムを利用し工程管理を行うことにより、作業システムを見直すきっかけとなり、間伐作業の低コスト化が図られることを期待しています。

 

平成27年度 林業普及指導事業報告会での質疑応答の写真

 平成27年度 林業普及事業報告会での質疑応答の様子(松田地域林政調整官)

 

国有林フォレスターとして

平成27年度に、「北の森林・技術交流発表会(北海道森林管理局主催)」、「林業普及指導事業報告会(北海道主催)」で本工程管理システムの概要について報告を行いました。

「林業普及指導事業報告会」では、当署と同様の課題に関する取組の報告があり、今後は当該振興局と情報交換を行いながら取り組むこととしました。

後志地域を中心に民有林と連携した取組を行っていますが、同じ課題に取り組んでいる地域があることを認識し、広域的な連携も重要であると強く感じているところです。

豊かな森林資源を持ちながら林業活動が盛んとは言えない後志地域ですが、国有林フォレスターとしてこれまでの経験・技術を活かし、大規模な森林を管理している国有林がどのように連携していくか考えて取り組み、地域林業の活性化に貢献できればと考えています。

国有林フォレスター写真

国有林フォレスター    

  後志森林管理署

    森林技術指導官 小林 大樹 

(写真右)

    地域林政調整官 松田 清

    (写真左)

 


 

後志森林管理署

北海道虻田郡倶知安町北二条東2丁目

電話:050-3160-5805

ホームページ:http://www.rinya.maff.go.jp/hokkaido/introduction/gaiyou_syo/siribesi/index.html

管轄区域:倶知安町、京極町、喜茂別町、洞爺湖町、留寿都村、神恵内村、共和町、岩内町、島牧村、泊村、黒松内町、寿都町、壮瞥町、室蘭市、登別市、伊達市、豊浦町、真狩村、ニセコ町、蘭越町


 

このコラムのトップへ前の記事へ次の記事へ 

 

お問い合わせ先

森林整備部技術普及課
ダイヤルイン:050-3160-6285
FAX:011-622-5235