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国有林発・フォレスター活動だより

地域課題に取り組む国有林フォレスター 

北海道森林管理局では「民有林と連携した地域の課題解決に向けた取組」を推進しています。

各森林管理署・支署では民有林との連携強化や技術的支援を具体化させるため、北海道の振興局、森林室との打合せを通して地域林業の現状把握と課題の共有を行っています。

そして、その中から各森林管理署・支署ごとに地域に貢献できる課題を絞り込み、テーマを設定しています。

「国有林フォレスター」は各地域において、これらの課題解決に向けた方策の検討を中心となって進め、具体的な施策の実施に結びつくよう取り組んでいます。  

民有林との連携強化に向けて

【網走西部森林管理署】

網走西部森林管理署は、北海道の出先機関であるオホーツク総合振興局西部森林室遠軽事務所と連携し、地域の森林・林業の再生に向けて取り組みを行っているので紹介します。

遠軽・湧別地域のあらまし

遠軽・湧別地域は遠軽町と湧別町の2町で構成されており、両町の総面積の79%を占める約14.5万ヘクタールが森林であり、そのうち72%が国有林です。

国有林の森林面積、約10.5万ヘクタールのうち29%が人工林でトドマツが主体となっており、民有林の森林面積、約4万ヘクタールのうち人工林は60%で、トドマツ、カラマツが主体となっています。

 

森林が広がっている芭露(ばろう)地区の写真

                緑豊かな湧別町芭露(ばろう)地区

 

地域の現状と課題

これまでは民有林、国有林それぞれで森林施業を行っており、連携した路網の整備等の対応はほとんどありませんでした。

当地域の基幹産業のひとつである林業の再生を図っていく上で、施業の集約化や効率的な森林整備等を、民有林と国有林が一体となり地域全体で取り組んでいく必要があることから、まずは民有林への様々な指導等を実施しているオホーツク総合振興局西部森林室遠軽事務所(以下 遠軽事務所)や遠軽町、湧別町の林務担当と、これまで行ってきた森林施業の考え方や現在行っている事業の内容等について、情報共有を行いお互いを知ることが重要だと考えました。

これまで様々な会議や打ち合わせを重ねる中で、今後必要な取り組みとして、次の4点が見えてきました。

 

 

今後の取組内容
  1. 連携強化のため地域の林業振興組織の一本化
  2. 森林整備コスト縮減のため現地検討会等の実施
  3. GISによる森林情報の見える化
  4. スキルアップに資する各種勉強会の実施等

 

これらについて、それぞれ具体的な取組が進めておりますのでその内容について報告します。

 

具体的な取組内容

連携強化のための地域の林業振興組織の一本化

当地域には、当署が主催している遠軽町の林業関係者が参画する遠軽町・木材産業活性化懇談会と、遠軽町、湧別町の民有林の林業関係者が参画している遠軽地区林業推進協議会があります。

どちらも地域の森林・林業振興等を目的としていますが、別々に活動していたため重複して参画する林業関係者には負担となっていました。

そこで、二つの組織を統合し広い視野で効率的に地域の森林・林業振興に貢献できるよう、平成28年度からの一本化を目指し準備を進めています。

これにより、国有林に関係のある林業事業体だけではなく、遠軽町・湧別町、森林組合、林業事業体、森林所有者等の幅広い林業関係者と連携や情報共有・発信ができる体制ができ、より効果的な民有林との連携を図ることが出来ると考えています。

 

遠軽町・木材産業活性化懇談会での会議風景の写真

        遠軽町・木材産業活性化懇談会の様子 

 

森林整備コスト縮減のため現地検討会等の実施

当署と西部森林室は、民有林・国有林森林施業技術交流会(以下「技術交流会」という。)を毎年交互に主催しています。

平成27年度の技術交流会は当署が主催となり、国有林が取り組んでいる森林整備のコスト縮減に向けた技術の普及等を目的に9月8日、生田原国有林にて現地検討会を実施しました。

地域の森林・林業振興と民国連携強化を図るため、民有林関係者を主体に参加を呼びかけた結果、町職員や森林組合職員だけでなく、指導林家、青年林業士等にも来ていただき、約70名(スタッフ除く。)の参加を得ることができました。

本検討会は、伐採から植付まで一貫して作業する「一貫作業システム」の手法や「コンテナ苗」を活用した植林方法、木材搬出のための「路網の配置と作設」をテーマに開催しました。

検討会は、事業実施の際に現場で苦労してきた森林官や、作業に当たった事業体の現場代理人に、伐採や植付作業の作業状況や、一貫作業システムの利点等について、数枚のカードにまとめてポイントを強調したプレゼンテーション(KP法)を行い、苦労した点や配慮すべき点等を交えて発表してもらい、現場の「生の声」が伝わりやすいように工夫をしました。

意見交換では「コンテナ苗の活着率」「一貫作業の契約方法」「コスト縮減について」等の質問があり時間が不足するほどの盛り上がりを見せ、国有林が取り組んでいる施業コストの縮減等について、より深い理解が得られたと手応えを感じています。

 

現場で苦労したポイントを話す現場代理人と、パネルを持って補助している森林技術指導官の写真

KP法を活用して地拵え、植付作業にあたり、苦労したポイントを説明する現場代理人(写真中央)

 

 GISによる森林情報の見える化

地域で様々な連携をしていく上で重要となるのは、民有林と国有林の森林や路網の位置や地形ですが、図面の縮尺や表示等が統一されていないため、お互いの森林の具体的なイメージが掴めないという問題がありました。

この問題はGISを使えば解決できるのではないかとの意見から、平成26年からGISによる民有林との図面の体裁の共通化、見える化について、遠軽事務所の担当者と連携して進めてきており、平成27年度からは町、森林組合、林業事業体にGISを普及していくことにしました。

平成27年10月2日に1回目の勉強会を遠軽地区森林組合会議室で実施したところ、遠軽地区森林組合と林業事業体から12名の参加をしていただきました。

勉強会は、GISとはどんなもので、どう活用できるのかについて行い、参加者からは「使いこなせれば業務の軽減になる」「施業の履歴も記録できる」等の意見が出てGISの活用に興味を持っていただけました。

中には既に操作に詳しい方もいて、これからは詳しい方にも講師になっていただく等、形にとらわれず進めて行く予定です。

今後活用が進めば、今まではわからなかった隣接所有者の森林や林業専用道の配置等が見えるようになるため、森林の集約化により有利販売等が期待できる共同施業団地を設定しやすくなる、民有林と国有林の林業専用道を接続する等の効率的な路網整備が検討できるなど、具体的な民有林と国有林の連携が進むものと期待しています。

  

 

GIS勉強会の写真

GIS勉強会の様子

民有林と国有林を同時に表示したGISの画面

民有林と国有林を同時に表示した図面

スキルアップに資する各種勉強会の実施等

民有林連携・支援を推進するため、当署職員を対象とした勉強会の実施や、民有林主催の講演会等へ参加し、自分自身も含めた当署職員のさらなるスキルアップを図っています。

 

カラマツハラアカハバチ勉強会

近年、帯広・北見方面の里山を中心にカラマツの葉が赤く変色する被害(カラマツハラアカハバチによる被害)が夏場に多く見られる状況から、当署の職員のスキルアップを図るため勉強会を開催しました。

講師には、カラマツハラアカハバチ被害を継続調査している遠軽事務所にお願いし、平成27年3月に座学で被害状況や調査方法及び生態等について、6月に生田原国有林でハバチの羽化前の調査等について勉強会を開催しました。

6月の勉強会ではカラマツハラアカハバチの食害の傾向、その年に伸びた枝の葉は食べないことや実際の調査方法等を学び、職員からは「30×30cmのプロットの中でカラマツハラアカハバチの繭の数がこんなにあると思わなかった。」「調査方法は非常に参考になった。」等意見が出されました。

この勉強会には当署職員が多数参加しており、これをきっかけとして民有林連携の理解がさらに深まり、署全体で取り組むきっかけになればと思っています。

 

カラマツハラアカハバチの繭を指さして説明している遠軽事務所の専門普及指導員の写真

カラマツハラアカハバチの繭を説明する遠軽事務所の専門普及指導員(写真手前)

 

森林林業の情報化と機械化・システム化による新たな林業事業

「森林林業の情報化と機械化・システム化による新たな林業事業」の講演会が、遠軽地区林業推進協議会主催により、遠軽町役場にて平成27年7月27日に開催され、自分自信のスキルアップのために参加したので報告します。

東京大学准教授 仁多見先生から最新のGISシステムと森林資源情報管理と、森林作業用の小型機械の紹介や使用事例等について、北海道立林業試験場 対馬道北支場長 からは急傾斜地における田邊式森林作業道作設事例等について講義がありました。

現在進めている「GISによる森林情報見える化へ」の応用や、普段は知る機会の少ない民有林で行われている技術や工夫について興味深く聞かせて頂き大変勉強になりましたし、これまで地域の中で、こういう機会が少なく、もっと増やしていく必要があると感じています。

 

対馬支場長が講演している様子の写真

    対馬支場長による田邊式森林作業道の講演の様子

 

機械化を前提とした造林地の造成技術開発に係る現地検討会

オホーツク総合振興局西部森林室主催による「機械化を前提とした造林地の造成技術開発に係る現地検討会」が平成27年9月18日、雄武町内の道有林で開催されたので参加させていただきました。

内容はグラップルを改良し、伐根起こしと植え穴堀用の機能を付加したもので、機械によるデモンストレーションを見ながら意見交換を行いました。

現時点では実証段階ですので、今後さらに改良を加えるとのことですが、従来のグラップルを改良することで経済的負担が少なく、人力作業よりも作業効率が良いことから、造林作業の機械化に有効だと感じました。

今後主伐期を迎える人工林が増加し、伐採後植栽する面積の増加への対応が懸念されています。造林コストの縮減は民有林、国有林共に直面する課題であり、相互で行われた事業実績や試験研究等の情報共有を図り、地域で連携して課題解決に向けて取り組みたいと考えています。

 

20160115改良したグラップルを多くの検討会参加者が見学している写真

         改良されたグラップル

 

国有林フォレスターとして

国有林が一般会計へ移行し地域の様々な課題解決に向けて取り組む中で、着任当初は以前から取り組まれていた「民有林・国有林森林施業技術交流会」「市町村森林整備計画実行管理推進チーム」以外は何から始めてよいのか分からず手探りの状況でした。

こうした中、「准フォレスター研修」を受講し、施業や路網等技術的知見の外、フォレスターの取るべき行動等、参考になる勉強をさせていただきました。

また、同じ業務と志をもつ仲間が出来たことも大きな財産となっており、遠軽事務所の民有林担当者とはこの研修を契機として、様々な情報交換を行うなど良好な関係を構築することができました。

地元町や森林組合からの相談等も増え、署内では若手職員を中心に民有林との連携について、どのように対応していくか考えるきっかけとなり、民有林連携に関する様々な取り組みに対する署内の協力体制が出来てきています。また、日頃の連携を通じて醸成される地域との信頼関係や人間関係の構築が重要だと実感しています。

今後も自分自身のスキルアップに努め、署全体で民有林支援に取り組み、遠軽事務所をはじめ地域との連携を強化して、地域の課題解決に向けて取り組んでいきたいと考えています。

森林技術指導官写真

国有林フォレスター

 網走西部森林管理署

  森林技術指導官

佐々木 英樹

 


 

網走西部森林管理署

北海道紋別郡遠軽町大通北4丁目1-1

電話:050-3160-5760

ホームページ:http://www.rinya.maff.go.jp/hokkaido/introduction/gaiyou_syo/abasiriseibu/index.html

管轄区域:遠軽町、湧別町


 

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お問い合わせ先

森林整備部技術普及課
ダイヤルイン:050-3160-6285
FAX:011-622-5235