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国有林発・フォレスター活動だより

地域課題に取り組む国有林フォレスター 

北海道森林管理局では「民有林と連携した地域の課題解決に向けた取組」を推進しています。

各森林管理署・支署では民有林との連携強化や技術的支援を具体化させるため、北海道の振興局、森林室との打合せを通して地域林業の現状把握と課題の共有を行っています。

そして、その中から各森林管理署・支署ごとに地域に貢献できる課題を絞り込み、テーマを設定しています。

「国有林フォレスター」は各地域において、これらの課題解決に向けた方策の検討を中心となって進め、具体的な施策の実施に結びくよう取り組んでいます。

 

 

 

 

林業の低コスト化に向けて~列状間伐施業の推進 

【十勝東部森林管理署】

列状間伐を行った森林

列状間伐を行った人工林

十勝管内の民有林ではかつて植栽された人工林が成長、資源としての利用段階に移行しつつあります。

近年、森林整備には高性能林業機械の導入と林内作業路網の整備による生産性の向上と費用の縮減、そして作業のさらなる安全性の確保が求められています。

このような中、人工林の成長過程で必要となる「間伐」作業をいかに低コストで進めていくかが重要な課題となっており、十勝東部森林管理署では国有林で積極的に採用し取り組んでいる「列状間伐」という施業方法を管内の民有林において普及、推進していきたいと考え、国有林フォレスターが中心となった積極的な取り組みを進めています。

間伐とは?

間伐とは、次のようなことを目的に、人工林の成長の過程で過密となった立木の一部を抜き伐りし、立木の密度を調整し、成長を促す作業です。 

 

  • 樹木の成長促進により風雪害や病虫害に強い健全な森林を作る
  • 林内の下層植生の繁茂により地表の浸食や流失を抑制する
  • 多様な動植物の生育・生息が可能となり、生物多様性の保全に寄与するなど、森林のもつ多面的機能を発揮させる
  • 残存林分の成長促進や間伐材の販売による林業収入を確保する

 

間伐の方法

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一般的な間伐の方法

現在、民有林での間伐は、林分密度・樹高・直径等から伐採率・伐採量を決定した上で、立木の形質・形状や隣接木との関係を現地で確認しながら伐採木を単木的に選定する定性的な「点状間伐」が一般的です。

この間伐方法は、森林の状況ごとにきめ細かな保育が可能であるなどの利点を有していますが、選木・伐採・集材に高度の技術と手間を要するため、熟練技術者の減少や木材価格の低下等により、実施が困難な場合もみられます。

列状間伐とは?

このような中、生産性の向上と費用の縮減を図る間伐方法として、植栽列や斜面方向等に沿って、選木にとらわれず規則的に直線的に伐採するのが「列状間伐」です。

列状間伐は、伐採列数と残存列数の組合せにより、例えば1列を伐採し3列を残す場合を1伐3残と呼びますが、伐採率により1伐3残又は1伐2残が多く行われています。

列状間伐は、選木の手間が省け、伐採・集材が容易になるとともに、高性能林業機械を用いた作業システムの導入により、生産性を高めやすいという利点があります。

 

高性能林業機械による高効率で安全な間伐作業

高性能林業機械による高効率で労働安全性の高い列状間伐作業

 

生産性や残存木の損傷等の点で点状間伐よりも有利となっており、また、列状に伐採することにより、労働災害の大きな原因の一つであるかかり木を減らすこともできる、安全性が高い作業方法です。

一方、列状間伐では、形質等に関係なく立木が一定の割合で伐採されるなどの欠点もあることから、列状間伐の特徴を十分に認識した上で取り組むことが必要です。 

十勝管内の民有林の間伐作業の現状

列状間伐の普及、推進を進めるにあたり、管内の民有林の現状を調べると次のようなことがわかりました。

 

  • 一般民有林では優良木生産を目的としている場合が多く、定性間伐が支持され、列状間伐のニーズがない
  • 作業の効率性や安全性の向上について関心が低い
  • 定性間伐では採算性が悪く、間伐が遅れている
  • 定性間伐ではかかり木となりやすく、労働災害の発生につながりやすい
  • 作業方法は現状維持でよしとしている事業体が多い
  • 事業の規模が小さい林業事業体が多く、高性能林業機械の導入に消極的である
  • 林業従事者の高齢化により、高性能林業機械のオペレーターのなり手が少ない  

地域の課題

地域の現状から次のような課題が浮かび上がってきました。

 

  • 間伐の遅れなど民有林の間伐実施状況を詳細に調査できていない
  • 定性間伐に対する列状間伐のメリットの普及啓発が進んでいない
  • 効率性、採算性の向上、安全性向上に向けた普及啓発が進んでいない
  • 間伐遅れによる成長不良、風倒被害が見受けられる
  • 高性能林業機械の導入や効率的な作業システムの確立が進んでいない
  • 事業の集約、大規模化が進んでいない
  • オペレーターの養成が遅れている  

課題解決に向けた具体的な取組

 このような課題を解決していくために十勝東部森林管理署では次のような取組を行っていきます。 

 

  • 地域の間伐実施状況を詳細に調査し、改善点を洗い出し、的確なデータを提供するなど列状間伐のメリットの普及啓発に努める
  • 広く民有林関係者に呼びかけ、国有林での列状間伐の事例紹介、勉強会、現地検討会を開催し、列状間伐への知識と理解を深めてもらう
  • 民有林関係者との意見交換を行う場を継続的に設け、国有林ができる支援を行う体制を構築する
  • 列状間伐の推進とあわせて、効率的な作業システムが進められるよう、丈夫で簡易な森林作業道等の路網整備が推進できるよう、現地検討会等を通じた作設技術を持ったオペレーターの養成支援を行う

 

列状間伐の現地検討会

民有林関係者のみなさんと連携し、列状間伐の現地検討会

まとめ

これらの取組を、道有林及び地域の民有林関係者の皆さんと連携しながら進め、国有林フォレスターとして中心的な役割を担い、積極的に情報交換の場を作るなどの取り組みを進め、列状間伐を核とし、高性能林業機械による作業システムを活用した、低コストで高効率、そして安全な作業環境をつくり、地域の森林・林業の再生、振興につないで行きたいと考えています。 

 

中田 森林技術指導官

国有林フォレスター

十勝東部森林管理署 森林技術指導官 中田 忠行 


十勝東部森林管理署

足寄郡足寄町北3条2丁目3 - 1  

電話: 050 - 3160 - 5790

ホームページ:http://www.rinya.maff.go.jp/hokkaido/introduction/gaiyou_syo/tokatitobu/

管轄区域: 足寄町本別町陸別町池田町浦幌町  


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