ホーム > 森林管理局の案内 > 森林管理局の概要 > 管内各センターのご紹介 > 釧路湿原森林ふれあい推進センター > 業務内容 > 釧路湿原自然再生協議会 森林再生小委員会 > 第8回森林再生小委員会 議事要旨
「第8回森林再生小委員会」が平成20年 7月 4日(金曜日)に釧路地方合同庁舎において開催されました。
達古武地域の試験結果及び平成20年度の事業について事務局より説明があり、その後意見交換が行われた。
(委員)
母樹からの播種の距離は、斜距離か水平距離か。
植栽はヘクタールあたり 1,600 本と設定しているが、どの様な根拠か。
(事務局)
距離は斜距離。
1,600 本の根拠について、今回再生をしようとしている事業地に隣接する自然林の密度がヘクタールあたり 1,800 本。植栽に関しては、稚樹よりは生存率がいいだろうということを考えて減らして 1,600 本と設定した。
(委員長)
地表処理の内容の確認だが、「かき起こし」は重機を使い表土を剥ぐのに対し、「地がき」と「ササ刈り」は人力で作業をするということか。
試験区では、「地がき」は良い効果が得られなかったのか。
(事務局)
地がきは、ササを刈ったあとに人力で表土を引っ掻くなどした。
地がきの効果は、ササ刈り程度にはあった。実生の発生数は、同程度が発生しているが、地がきよりササ刈りの方がコストが安いため、ササ刈りを採用している。
(委員長)
母樹からの距離はどのように処理しているのか。
東斜面の調査結果には何故かき起こしがないのか。
(委員)
母樹からの距離について説明すると、N = 20 とあるのは、1m × 1mの方形区が20個ずつという意味。20個は距離ごとに 10m に 2個、20m に 2個というように設定にしている。そのため処理間の比較は距離の影響がなく、同条件で比較できるようになっている。
東斜面は急なので、かき起こしの重機が使えず、かき起こし処理はしていない。
(委員長)
林冠層の調整についてはどのように考えているか。
(事務局)
林冠層の調整について、間伐率を変えた試験区を 3つ設定して試験をしている。そこで稚樹の成長量を観察しており、この結果を見て間伐について検討していきたい。
(委員長)
植栽の後に間伐作業をすると傷めてしまうことはないか。間伐してから植栽の議論をしたほうがいいのでは。
(事務局)
今年度は植栽をしないが来年度は予定している。それまでには間伐率の結果が出ると考える。
(委員長)
種苗生産などがうまくいかなかったようだが、何故うまくいかなかったのか。種が生り年でなかったということか、苗床のほうでうまくいかなかったのか。
(事務局)
種が取れなかったことが1番の原因。苗畑で死んでしまったというものは余り無い。ダケカンバも凶作だった。
(委員)
ササ刈りについては、いつまで行うのか。
ササの二度刈りというエリアがあるが、ササを一度刈ってそこに母樹から種が飛んできて芽が出て、 2年目も刈るということまでは考えている。 3年目に刈るかどうかは状況を見て検討する。
(委員)
間伐前後で照度の調査をしているか。
(事務局)
試験区 2、3 では、照度が20から25%程度、40から50%程度、50から60%程度に設定している。この試験区2 で見ているのは、実生の発生率というよりも、稚樹になったものが照度の関係で成長量に違いがあるか調査している。
(委員)
以前、試験区を設定したときに調べたときは、無間伐区で今20から25となっているが、これが今40年生位だが、これは管理的に丁度いい密度になっている。長伐期の場合は少し下げていくということで、大体ラインに乗っている範囲で今設定している。
(委員長)
指標のモニタリングはどうか。うまい指標というのは見つかったか。
(事務局)
哺乳類、鳥類、昆虫類でそれぞれ指標性のあるものを見つけてモニタリングしている。
(委員長)
雷別地域のほうとも情報交換して進めて欲しい。
雷別地区の調査結果及び平成20年度の事業について事務局より説明があり、その後意見交換が行われた。
(委員)
凍結によってトドマツが枯死した地区が、上尾幌、仁々志別、雷別だが、これは特徴的な箇所なのか。それとも普通に木々に覆われている植栽木も枯れた、ということか。
(事務局)
どの地区も、高齢級のトドマツ人工林。昭和の初期あたりに植栽されたトドマツの壮齢林というか、かなり太さもあるトドマツの人工林であった。
(委員長)
土壌凍結をしているため、春先に樹が水分を吸い上げられなく、組織がおかしくなり凍結が解けてから夏の水分供給がうまくいかなくなって枯れだすという仕組みのようだ。それが元々、この地域には余りトドマツが無いのではないかという議論と符号していて、樹種としてのトドマツは、特に道東のこの辺ではあまり良くないのではないか、というのが全体的な意見であった。
落下種子数や、稚樹の発生はどうか。
(事務局)
全48プロットで 1本。
(委員長)
この位の稚樹発生だとか、この種子の量というのは十分と言えるのかどうか。明らかに少ないような気がする。
(事務局)
現状では非常に落下種子数も少なく、発生数も少ない。これは18年の秋に調査区を設定し、1年後の19年度の調査結果であり、もう少し経過を見ないと分からない。現時点では非常に少ない。
(委員)
1プロットの面積は幾つか。「稚樹」には 1年生の実生も含むか。何 cm 以上とか何 cm 以下とか定義があるのか。
(事務局)
1プロットの面積は 1箇所 1平方メートル。「稚樹」には、実生も含めており、特に樹高を定義していない。ササの中に埋もれている状態なので、大きいものでも高さ30cmから50cmまでであった。
(委員)
30cm ということは、地がきの効果で発生した稚樹ではなく、地がき以前の稚樹であると考える。
(事務局)
処理区では樹高の大きなものは見当たらなかった。
(委員)
普通地がき後 1年目が最も発生数が多く、達古武もそうだが 2年目以降はガクッと落ちてくる。実生を含めてこの数字ということは、調査方法を再確認したほうがいい。
落下種子の平米 1.2粒というのは非常に少ない。これも母樹からどれ位の距離のところにシードトラップを設置しているかによって大分変わる。その情報がないと単純に評価はできない。
(委員長)
データの単位をはっきりする必要がある。稚樹の発生本数も、処理と未処理について分けて欲しい。
広葉樹の自然林の再生という議論は、まだ技術的に無いに等しい。植栽区域の施業について根拠付けを試験区のデータで言ってもらいたい。
(委員)
地表性甲虫の調査のトラップ数はいくつか。種類を樹林性・草地性に分けている根拠は何か。一般的には、ヒメクロオサムシやマイマイカブリは樹林性かと思う。
(事務局)
地表性甲虫の調査では、 1箇所に10個のトラップを設置している。樹林性と草地性の区分は調査報告書から引用しており、根拠の確認はしていない。
(委員)
達古武地域の実施計画書では、ヒメクロオサムシとエゾクロナガオサムシ、セダカオサムシ、エゾマルガタゴミムシの4種の森林性のオサムシ類を指標にしている。これは研究者の情報を参考にし、個体数が多く森林性の指標になりそうなものを選んでいる。雷別地区ではヒメクロオサムシが森林性から抜けている。
指標性の高いものは、全種類の個体数を足してしまうと余り意味がなくなってしまうので、特徴的なものを選抜して傾向を見ていかないといけない。
(委員長)
甲虫類についてどんな形で評価が出来るのかというのを考えてモニタリングをやる必要がある。全部を網羅するという議論よりは、特徴的な何かを見つけてやっていくというのが、多分指標という意味だと思う。
一番危険なのは、常にモニタリングをやり続けて、解釈が出来なくてずうっとやり続けてしまうこと。やはり解釈を前提としてこういう調査をしていけば、必ずここまでは分かる、あるときは指標性は無いという結論でもいい。その辺を区分け出来るような形で調査計画を立てた方が、どんな種がどれだけいたかということよりは意味がある。
市民参加の森づくりとしての計画などはいかがか。
(事務局)
達古武地域では、事業を行っている場所をフィールドとして、モニタリング調査の動物調査に参加してもらうとか、市民の力を借りてササ刈りをやったり、ということを考えている。
(事務局)
雷別地区では、今後苗木の植え付けあるいは地がきなども市民参加で行っていきたい。今後、試行実験区あるいはモニタリング調査にも市民の力をいただきながら取り組んで行きたい。
事務局の案内で達古武地域の事業地を視察し、その後意見交換が行われた。
(委員)
南向きは更新が悪くて、北向きと東側が良くて、西向きは更新が悪いなど、地形との関係はあるのか。
(事務局)
東斜面のほうが実生の発生数が多いということが試験の結果から分かっている。一方、発生した実生の生存率は西斜面のほうがいい。
最終的に残る稚樹の数は東斜面が多くなっている。
(委員)
実生の発生数が東側で多いのは、おそらく偏西風の影響と考える。斜面によって積雪量や、シカからの食べられやすさなど、他の要因もあり微妙だが、最終的には東斜面のほうが多いという傾向がある。
(委員)
苗畑でのシカからの食害対策として防鹿柵を設置しているが、規模によっては資金もかかることから、他の対策を考えなくてはならないと感じた。
(委員)
ミヤコザサが持つ物質が実生に対して阻害作用をするのではないか、ということについていかがお考えか。
(事務局)
試験の中では注目していない。
(委員)
ササ以外にカラマツのリターがかなり障害になるということはよく言われている。それらの影響は当然考えられたが、リター層やササの本茎が残っている状態でもかなり実生は発生しているため、化学的な影響は無いと考える。
(委員)
防鹿柵の支柱の一部を立ち木にそのまま打ち込んでいる所があり、カラマツについては巻き込みが始まっているため、改善が必要である。植栽地を広げるならば、思い切ってエリア全体を防鹿柵で一気に囲ってしまうほうがいい。
(委員)
これからカラマツ林を広葉樹林にする場合に、最終的にコストが非常に大きなウエイトを占めてくると考える。今後公開してもらいたい。
自分のところで、もしこんな事をやるのだったらどれがいいんだろう、と考えた時に、画一的に植えるだけとか、刈るだけとか、地がきだけとかではなく、そういうのを総合的に部分的にやっていくのがいいと思った。
(委員)
自然のバランスというのは非常に危ういところで取れているということを改めて感じた。今後も今日のような自然を学習する場を提供していただきたい。
(委員長)
カラマツ自体をどうして行くかという議論をすべきだと改めて感じた。今日の議論でも出たように、林冠層をどうするかということと、下層の植生をどのように広葉樹を入れながら多様化していくかという事を一緒に考えていきたい。
(委員)
カラマツを余り切らないような話もあったが、あと5年もたつともう少し暗くなる。今から樹冠粗密度的に判断して間引をやるべき。
防鹿柵で囲われているところは、アオダモやササの丈が低い。毎年刈る区域だとか、隔年で刈る区域だとか、単年度しか刈らないとか、ミヤコザサの特性を考えると少し工夫してみる時期になってきたのではないか。
3年前はミズナラの更新木が見られたが今回は現存していない。シカの食害について定点撮影などで記録してはどうか。
事務局の案内で雷別地区の事業地を視察し、その後意見交換が行われた。
(委員)
排土板を使うという話だが、ユンボで天地返しするとか、レーキとかを考えたことは無いか。事業の効率を考えるとレーキというのは非常に優れていると思う。
(事務局)
今回試行実験の中で案内した施工地は、バックホーのアタッチの先の部分を業者のほうで改造してもらい、爪のついたワニ口のような形の機械で施工した。
(委員)
稚樹が多く発生している所や逆に将来余り期待できない箇所があった。期待できないある程度大きな面積の箇所は、積極的に植え込んで、 3年や 5年手入れをしてやることがいいのではないか。
(委員)
防鹿柵は 50cm とかもう少し高くすると、シカが入り込まないのではないか。
今回のように実際に現地に来ると全体像が分かり、大変勉強になった。出来ればこういう巡検を先にやって委員会をやると、より議論も高まるのではないかと思う。
(委員)
FM の番組を持っているが、来週は今日のことを私なりに少し話したいと思う。
(委員)
マツの樹下植裁等も合わせてやったほうが早く森林に復帰するのではないか。
(委員)
植栽という形も当然必要なのかなと思うが、長い目で見れば何とかなるかなと感じた。
(委員)
草地化した部分がパッチ状にあるので、その空間を埋めればいいという感じ。評価としては、そこが森林になったかどうかよりは、森林に穴があいているところからの影響をどれだけ押さえられるかという方法に変えるべきではないか。鳥を指標として森林になったかどうかをここで評価するのは難しい。
実験区の実生について、地がき後に出た実生をカウントしているのではなく、その前からある稚樹をカウントしている場合もある。その辺は調査方法をハッキリさせるべき。
(委員長)
地がきをやる時期やその強度も変えてやるというのも一つの選択肢と思う。
現場を見た後の議論のほうが、いろんな意見を出し合えると感じた。今後もどういう形でやっていくかを事務局と検討したい。