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第15回森林再生小委員会議事要旨、会議資料等

「第15回森林再生小委員会」が、平成27年11月20日(金曜日)、釧路地方合同庁舎で開催されました。小委員会には、委員45名のうち、17名(個人5名、団体8団体、関係行政機関4機関)が出席しました。今回は、雷別地区と達古武地域の自然再生事業の実施状況について説明が行われ、両地区事業について総括的な意見交換が行われましたほか、達古武湖自然再生事業における森林に対する普及啓発及び釧路湿原達古武地区におけるエゾシカ対策についての報告も行われ、これらについても活発な意見が交換されました。

 第15回森林小議事要旨用写真1 第15回森林小議事要旨写真2 

議事要旨

議事1:雷別地区自然再生事業の実施状況について

  資料をもとに事務局から説明。

 (委員長)
 今の説明からは今年度の事業の実施内容や、実施理由、現状等の全体像が掴めない。何が課題であるためにこのような取り組みをしているのか。ノウサギによる被害については今後どうしていくのか説明を願う。

 (事務局)
 昨年の森林再生小委員会で。更新が上手くいっていないことや、エゾシカの食害が多いという問題が指摘された。更新の状況は、資料の12頁「処理区別の更新指数」にあるが、笹地10のようにツリーシェルターによるエゾシカ食害対策を行ったうえで植栽すれば更新指数は1となり、良好な状況に変化していくことが判っている。天然更新については、笹地13においてケヤマハンノキの実生の発生及び成長が見込まれていることが判っている。これまではエゾシカによる食害がかなりあったため、鹿侵入防止柵を周囲に設置したことから、エゾシカからの被害を避けられると考えていたが、新たにノウサギによるものと推定される食害が確認されたため、今回報告させていただいた。

 (委員長)
 笹地10について、植栽することで更新指数が上がったということであるが、どのような場所で植栽を行い、どのような場所で天然更新を狙っていこうとしているのか。

  (事務局)
 天然更新については、食害が少ない等の状況からケヤマハンノキを利用する考えである。しかし、笹地11、笹地12では天然更新があまり上手くいっていないところもあり、その部分では植付けの作業が必要である。その際に樹種をどうするのか考えているが、ケヤマハンノキ以外の樹種を利用する場合、エゾシカやノウサギからの食害を防ぐ方法を考えなければならない。

 (事務局)
 笹地10については全てを植栽区域にする予定で進めてきている。植栽と同時にツリーシェルターをかけることにより、エゾシカや副次的にノウサギの食害も防げており順調に成長している。笹地13については近くにケヤマハンノキの母樹があり、図(資料10頁)の笹地13のD地区及びH・I地区には近くにケヤマハンノキの母樹がたくさんあり、更新指数の高い区画が多い。笹地11、12及び13の残りの区域では、今後ケヤマハンノキを植栽して全体的に更新指数を高めていく。更新指数については全体で0.7となっているが、ばらつきがあることから植栽で補っていく考えである。

 (委員長)
 更新指数はどのように求めるのか。

 (事務局)
 低木であれば本数が必要で更新指数は低くなり、高木や太い木になると係数による重み付けがされて本数が少なくて更新指数が高くなるということである。小さな木だと10,000本必要だが、50から60センチメートルの木だと3,000本で良いというような考え方である。

 (委員長)
 今後の資料中に数式を記載いただきたい。森林再生していくための笹地の特徴は、天然更新、植栽を行う場所、シェルターや鹿柵を設置している場所など多様である。これまでの経緯がわかりやすいように、それぞれの笹地の特徴、課題、経過等を話していただきたい。
 ノウサギについての課題はどのように解決していくのか。

 (事務局)
 物理的に排除するか、食害の少ないケヤマハンノキを主として植える方法がある。

 (委員長)
 物理的に排除するというのは柵を作るということか。それとも、木の周辺を何かで覆うということか。

 (事務局)
 ツリーシェルター等の利用が考えられる。

 (委員長)
 ケヤマハンノキだけ植えていて、目標とする森林に戻していけるのか。

 (事務局)
 遷移的にミズナラやヤチダモが生える状況になると思う。

 (委員長)
 母樹が無ければならないのではないか。

 (事務局)
 母樹は極めて少ない状況である。平成21年に地表処理を始めて6年経過したが、遷移後期種であるミズナラやヤチダモの実生は発生してこない状況。昨年10種程度を植樹したが、実生や山引きにより植えた先駆性樹種であるケヤマハンノキの苗はみごとに残っている。まずは笹地をケヤマハンノキで林冠をカバーすること、森林の機能を高めていくことが重要であり、その後に遷移後期種の発生が期待できるのではないかと考える。自然の推移に委ねながら自然再生を進めていくことが重要であるというのが、これまでの6年間で出た結論である。

 (委員)
 今の意見が一番良いと考える。私は、トラストサルン釧路の活動で、全く木の無いササ地に植林を始めた。ミズナラ等の色々な樹種を植樹したが、ハルニレ、アオダモ、ヤチダモはほぼ壊滅的であった。自然界を見ていると、ケヤマハンノキが残る確率が非常に高い。比較的苗が作りやすいことから、かなりまとめてケヤマハンノキを植えた。現在、樹齢は10年を超えているが、樹高15メートルぐらいの林地になり、約300から400本の林になっている。エゾシカやネズミの被害の多い場所では、食害を受けない樹種を選択して林地にするということも必要である。ケヤマハンノキ林を支柱代わりにして防鹿ネットを張り、その中に10種程度の多様な樹種を入れて順調に3年経過した。このようにすれば自然林に誘導していくことができると考える。シラカンバは、裸地になった場所に自然に種子が落ちて大量に発芽した。2、3年の間はエゾシカの食害にあったが、今では樹高1メートル程度に成長した。地がきによって発生したシラカンバは強く、森林化が可能ではないか。

 (委員)
 色々な畑やハンノキ林を見てきた経験から、樹高が小さいうちはネズミなどの食害にあうため、植林する場合には樹高1メートル以上のものを植えると良いと言える。

 (事務局)
 大苗を植えているが被害を受けている状況である。

 (委員長)
 エゾシカによる被害か。

 (事務局)
 エゾシカ及びノウサギによる複合的な被害だと考える。

 (委員)
 森林再生を行うためには、防鹿ネットなしでは不可能という状況がある。ケヤマハンノキの他にも食害を受けにくい樹種があると考える。樹種の組み合わせで、防鹿ネットを使用しなくても森林再生に誘導していくような手法を確立していただきたい。

 (委員)
 ドロノキを利用できないか。癖のある木で臭いもあり、エゾシカやネズミの食害も無いようである。

 (事務局)
 笹地10では、平成24年にエゾシカへの食害対策を行わず試験的に色々な樹種を植栽した。苗がササに隠れることでエゾシカの食害を防げるのではないかと試みた。しかし、冬に雪でササが倒れ、植えた大苗は雪の上に出てしまい、逆にエゾシカから見つけやすい状況となってしまった。現在はほとんど残っていない状況である。このような試みも行っている。

 (委員長)
 次回の会議では、事業の全体像や森林再生が着実に進んでいるというのがわかるような資料を作成していただきたい。

 

 議事2:達古武地域自然再生事業の実施状況(10年目の振り返り含む)について

 (平成27年度(2015年)の達古武地域自然再生事業について)

 資料をもとに事務局から説明。

  (委員長)
 モニタリング結果として植栽した苗木の樹高の高いものは成長量が大きい傾向が出そうだが、今後は、大型の苗木を植えていくことになるのか。

 (事務局)
 基本的には苗畑で大きく育ててから植栽したい。

 (委員長)
 資料25頁の歩行性昆虫指標値の結果を上下のグラフで示しているようだが、図の見方を教えて欲しい。

 (事務局)
 上のグラフは指標密度の絶対値を示している。今年度の結果を比較するため相対値にして見易くしたものが下のグラフである。

 (委員長)
 上のグラフが密度を表していて、下のグラフは全体に占める割合ということか?。相対値とは何に占める割合なのか。

 (委員)
 上のグラフは2004年から今年までの年変動を表している。自然林でも年によって変動が大きく、2004年に多かったものが徐々に減ってきているように見える。今年は全体的に少なめでカラマツ林と差がないように見えるが、自然林を1とすると、カラマツ林と自然林との間に差があるということがわかる。

 (委員長)
 理解した。間伐については全体の計画が終わったということか。それとも一区切りを付けただけか。

 (事務局)
 平成24年度に作成した計画では、今年度の間伐が終了すれば完了である。

 (委員長)
 これまでの間伐によってカラマツ林の林冠が空いており、植栽もしくは地表処理による更新ができるような状態になっているので当分は様子を見るということか。

 (事務局)
 そうである。

 (委員長)
 資料22頁の平成27年度における間伐後の植栽試験地の追跡調査の結果を見ると、エゾシカの食害による影響があるようだが、植栽木は防鹿柵を設置している区域か。

 (事務局)
 苗木の植栽地は、全て防鹿柵を設置している。エゾシカが入った箇所は、倒木によって一時的に柵が壊れた箇所であり、修復までの2週間の間でエゾシカの食害を受けたということである。

 (委員)
 環境省も防鹿ネットなしで森林再生できる方向性を事業の中に位置づけてもらいたい。現在、苗木の生産は樹種が全然足りていない。流域には50種ほどの自生種がある。最近、トラストサルン釧路の森林再生地の近くでも自然林が伐採されており、カラマツ林の造成が進められている。何キロにも渡って防鹿ネットが設置されている。この2、3年で自然林のハルニレ、アオダモの被害がとても増えていると感じる。防鹿ネットは自然林を破壊する副作用やリスクがあるのではないか。国道など道路沿線の防鹿柵の設置費用も膨大であると思う。国道や農地、造林地に設置する柵の費用を、エゾシカの個体数を抑制する費用に回す方が効果的ではないか。自然林を切って人工林にしていくことについても、森林再生小委員会で検討して提言を出していくなどしていただきたい。

 (事務局)
 確かに防鹿柵無しの取組という考え方もあると思うが、柵外稚樹の被食状況調査による稚樹の採食状況にもあるように、現在のところ何もしなければ苗木が食べられるというは明らかである。苗木の育成にも税金を使っており、ますは保護しながら確実に育てていき、食害を受けないような大きさに成長すればネットを外すということも検討したい。

 (委員長)
 エゾシカの密度が高くなると嫌っていた種類の植物を食べ始めるということが、洞爺湖の中島や他の地区でも確認されている。先ほどいただいた意見は、流域全体のマネジメントについての意見であると思う。自然林を伐採してカラマツを植えた時に防鹿柵が張られる。所有者からすると当然の作業であるが、結果として他の場所でエゾシカの密度を高めてしまう。張れば張るほど張らない場所に圧がかかるということになる。個人が森林を守ろうとすることはよくわかるし、環境省としては自然林化する場所を守りたいということもよくわかる。やはりトータルな議論もしなければいけない。ひとつに達古武地域の自然林を伐採する自由も所有者にはあるし、一方で実はここはこういう場所であり、湿原の保全上大事な場所である。協議会や森林再生小委員会の取組みを何らかの形で知ってもらった上で、伐採を自制していただく。そういうアクションを起こすべきではないか。もちろん選択肢はあくまでも所有者にある。環境省で達古武流域の土地を新たに取得したようだが。

 (事務局)
 第3種特別地域の中で、達古武地域の上流部に再生事業地を下支えをする自然度の高い保全すべき森林があり、達古武地域の再生事業地として約300ヘクタールを取得した。また、達古武湖自然再生事業の取組みで、面積負荷対策として森林所有者への普及啓発を呼びかける取組を行っている。それについては達古武湖自然再生事業の中で説明したい。

 

(達古武地域自然再生事業 10年目の振り返りについて)

  資料をもとに事務局から説明。

 (委員)
 標茶西地区水保全隊では、樹高2メートル50センチから3メートルのサクラを植樹しているが、これをとてもエゾシカは喜んで食べている。枝を角で折る場合もある。樹高2メートル以上になったところで防鹿柵を外すというのはどうか。試験的にやってみるのはいいが、一度に全部外すと全て被害を受ける可能性がある。

 (事務局) 
 防鹿柵を取り外す目安を樹高2メートルと考えていたが、撤去した後の比較検証ができる方法も考えていきたい。

 (委員長)
 予想よりも稚樹の発生が少なかったということだが、当初、天然下種更新で尾根沿いに残った広葉樹からの更新に委ねようかという議論をしていたが、実際調べてみるとそれほど稚樹が更新していなかったということか。その理由とは何だったのか。

 (事務局)
 調査結果より、母樹が種子を供給するのに十分な大きさではなかったというのが結論である。

 (委員)
 実生の発生数自体が少なく、発生後に枯れて減るという二つの問題があるが、減り方は最初に行った試験区とほとんど変わりない。最初に出てくる発生数が少ないので、種子の供給量が制約要件にかかっていると思われる。

 (委員長)
 実施計画を作成時に種子の供給量を調べていたのでは。発芽がうまくいってないのか。

 (委員)
 母樹といてもいろいろある。試験区で調査を行っていたところの発生数は良かった。事業を実施する場所によって母樹の発達度、樹種構成が影響してくる。実際の事業地の隣、特に風上側にある母樹が稚樹の発芽に影響してしまう。また種子の豊凶と地がきのタイミングが合わないと難しい。

 (委員長)
 先ほどあった議論だが、達古武湖流域の自然環境の推移の中で、民有林の伐採が続いているという事は事務局では分かっているという事だが、後から説明があるということで良いか。

 (事務局)
 湿原再生小委員会からの議事と関連しているので、現状の状況と含めて後ほど説明したい。

 (委員長)
 民有林の伐採はどのくらい続いていて、年代と共にどの程度変化があったというデータはあるのか。

 (事務局)
 空中写真の判読の結果から、伐採された箇所を抑えたデータはある。空中写真なので、毎年ではないが2003年から2014年を比較すると、面積として自然林は192ヘクタール減少した。

 (委員長)
 192ヘクタール伐採されたということか。我々が自然再生事業を行っているのは何ヘクタールなのか(約150ヘクタール)。伐採された森林は民有地なので地主の権利は当然あるが、自然林の保全について考えた方が良い。伐採された192ヘクタールという面積は大きい。民間が所有している森林についても、先ほど発言があったように何かアクションを起こさないといけない。

 

参考:達古武湖自然再生事業における森林に対する普及啓発について 

 
  資料をもとに事務局から説明。

 (委員長)
 達古武の湖沼に関して自然再生の色々な議論を行ってきており、林地からの土砂流入等の負担軽減が重要であることから、森林再生事業地だけではなく。周りの民地の所有者にも考慮していただくためのパンフレット(案)を作成した。森林所有者にも色々な事情があるため、道筋をつけて森林組合等へ相談に行ってもらうことを促している。伐採した後は植樹することが基本となっているが、森林組合に入らない所有者は、木を伐採しても天然更新により蘇るからと言い管理を放棄してしまっている。この状況を今後は避けたい。何らかの形で森林に戻して欲しいが、結果的には人工林となってしまい、広葉樹林への森林再生という目で見ると少し課題があるかもしれない。そういった問題を防いでいこうという意図である。

 (委員)
 大変悩ましく、解決するのは大変である。このようなパンフレットを作成することも有効である。しかし、所有者にとっては、天然林を維持しても何もメリットがない。補助金が出ることから自然林を伐採してカラマツ林にするのである。環境省や林野庁、民間で自然林を保全しようとしても追いつかない。自然林を保全するためには、保全することで森林所有者にメリットがあるような仕組みを作らなければ解決できない。

 (委員長)
 自然林を伐採しないように強制することはできない。森林所有者が木を伐採する場合に、なるべく達古武湖に影響を与えないようにするにはどうすべきかのメッセージが上手く伝わらなければならない。このパンフレットだと、環境省が打ち出す生物多様性保全についての目標が達成できるのかと疑問を抱く。

 (委員)
 私たちが持つ山では、自然林があることにより、昨今の暴風雪から守られている。しかし、山ばかり抱えていてもそこからお金は生まれてこないという現実がある。自然林を残すための何らかの事業や方向付けが無ければ、木を伐採して売ることになってしまう。

 (委員長)
 自然林が192ヘクタール減少した(資料36頁)ということが気になっている。環境省が買い上げた土地も100ヘクタール程度ではなかったか。

 (事務局)
 達古武地域森林再生事業地として取得した人工林が約150ヘクタールで、昨年度取得した達古武川上流部の自然林は約300ヘクタールである。

 (委員長)
 約150ヘクタールの人工林に対して色々な事業を行い、徐々に自然に戻していこうとしている一方で、約190ヘクタールの土地で木が伐採されていたということである。自然林を保全するための森林所有者へのメリットなどについての良いアイデアはないか。今の法制度の中では難しいか。

 (委員)
 現時点では(今の法制度の中で具体的なメリットを示すことは)難しい。環境省では今年から「森里川海」を結びつけ、まとまりとして守っていこうという考えを広めようとする一方で、将来的には自然を保全するための少額の税金のようなものができないかと考えている(今夏報道されたとおり)。新税ができた際には半分またはそれ以上を温暖化防止の観点からも重要な「森林」のために利用すべきとの意見もある。うまく進んだとしても実現は数年後になり、今回のパンフレット作成等の流れに乗せられる話ではないが。

 (委員長)
 多くの都道府県で既に行っている水源税のようなものは利用できないか。本来であれば、人工林の保育・間伐などは所有者が責任を持たなくてはいけないものだが、例えば神奈川県の丹沢のように税金を投入し防鹿柵などを作って森林を管理している事例がある。税金を投入するのが良いか悪いかや、市町村レベルか北海道レベルかの議論はあると思うがそのようなことも考えられる。森林再生小委員会でどうするという話ではないが、保全している所有者に対して公益的機能の補償として、お金が回るような仕組みができれば良い。

 (委員)
 人工林と天然林を分ける定義は何か。人工林以外の森林を自然林とするのには違和感がある。人工林でも適切に管理を行っていれば、土砂の流出防止や水質の浄化などの機能は十分持っている。管理が行き届いていないから問題になるのであって、人工林であるから問題だということは理解できない。また、192ヘクタールの自然林が伐採されたことを問題としているが、伐採された森林がどのようなものであり、また、伐採した後の状況がどのようになっているのかを把握することが大切ではないかと考える。

 (委員長)
 機能論として土砂をどれだけ防げるかというのは、森林を適切に管理することで達成できると考える。しかし、カラマツやトドマツの人工林は、生物の観点から見ると相対的に多様性が低くなってしまう。これまでの研究からも、天然林の生物相から比べると人工林の多様性は明らかに低くなる。林野庁でも雷別地区での多様性に富む森作りを掲げており、環境省でも生物多様性の視点を持っていなければいけない。土砂を防ぐという機能論的な問題と、生態系サービスや生物多様性保全の両面で保全することをアピールすることが必要である。人工林が良い悪いという価値観の問題ではなく、自然再生の目的の大きな特徴の一つに、生物多様性保全がある。

 (委員)
 私は、再生普及小委員会を担当している。望ましい森に誘導するように努力しているその隣で、同じぐらいの森がどんどん切られている。それは単純に無力感を感じるようなことである。何度か近くを偶然通りかかったが、林道の横に膨大に伐採された木が積み上げられており、景色がまるで変わっている場所を時々確認する。補助金が問題の根本にあると思っている。現状では答えがすぐに出ないことも良く判った。しかし、地域の方々に少しでもわかりやすい形で知っていただくための普及啓発や再生普及のための努力として、再生普及小委員会との協力で一歩踏み出したアピールをしていくのも良いのではないか。森林所有者へのお願いやアピールをすることも大切ではあるが、森林とはそれほど関わりのない普通の住民の方たちにも知識を持っていただくようなことを、今年または来年ぐらいの計画として協力してやっていくことを考えてはいかがか。

 (委員長)
 その方向で進めていただきたい。

 (委員)
 釧路湿原の周りに山を持ち、林業、森林整備の会社を営んでいる。カラマツ材は少しお金になるとは言いながら、下刈りなどに相当な負担金がかかる。その7割を補助金としてもらうわけだが最終的には赤字である。森林組合に加入している人は、山に愛着を持ち適正に管理を行っている。自然林が皆伐されてそのままになっているというのは、ブローカーにより森林が伐採され、そのまま放置されている状態なのだと思う。経営計画により伐採したら植える仕組みがある状況の中で、自然と再生するからといって放置されることがないように、皆で見守っていくことが良い。

 (事務局)
 機能論としては、伐採されたところが人工林で適切に管理されている森林は問題無いと考える。また、天然林、二次林を広い意味で指す「自然林」を保全されていることの大切さについての伝え方が不十分であるため、今後検討する。土地所有や皆伐後の状況については、ヒアリングによりどのような問題があるか把握しているが、所有の形態により関係機関がどこまで踏み込んだ指導ができるかという問題がある。森林伐採については規制があることや、森林計画に則った作業をしなければいけないこと、1ヘクタール以上は林地開発の行為に当てはまる等、パンフレットに入れられるものを紹介していきたい。

 (中村委員長)
 パンフレットの内容は森林が持つ機能論に偏っているため、生物多様性に関する部分を入れるべきである。パンフレットについての意見を、今後も事務局の環境省に直接お知らせいただきたい。

 

参考:釧路湿原達古武地区におけるエゾシカ対策について

 

 資料をもとに事務局から説明。

 (委員長)
 エゾシカは増えていると考えて良いか。

 (事務局)
 北海道の調査結果では、道東地区では減少に転じている。

 (委員長)
 資料47頁、「冬期の食痕出現頻度と積雪深の経年変化」の表では、採食箇所数が増えているようだが、これは個体数をそのまま反映していないということか。積雪深が大きいと草本の餌がとれなくて樹木を食べ、逆に積雪深が大きいと雪に被われていてあまり食べられないという意味か。

 (事務局)
 積雪が深い所はエゾシカが選択をしない。普段は低い位置で食べられる種類を食べる。そういう場所も雪が多い年は食べられなくなるので雪から出ている樹木等を食べる傾向がある。

 (委員長)
 積雪が多いと餌がないから樹木を食べるということで理解した。

 (事務局)
 道東のエゾシカは減っているようだが、感覚的には非常に多いと感じている。

 (委員)
 捕獲試験を行って将来的にどうするのか。囲いわなをあちこちに作り、エゾシカも大量に捕るのか、そうした場合の処理はどのように考えているのか、どうゆう方向にもっていくのか。捕獲をやめるとまたすぐ増えることは明らかである。捕獲施設を作ったカラマツ林のところでは確かに減ったようだ。しかし、他の場所では50頭近くの群れがいたりもする。

 (事務局)
 現時点ではまず達古武地域の自然再生事業と組み合わせて、達古武地域の森林への負荷を抑えるという考えで進めている。今の指摘のように長期的には周辺地域についても考えていかなくてはいけない。持続的にどのように続けていくのか、その場合は加工や肉としての流通・販売などもシステム的に考えなくてはいけない。北海道でも事業加工流通の事業をやっており、これらとどのように調整して進めていくかは、長期的な課題と考えている。環境省では、まずは試験的に釧路湿原における捕獲手法の検討を進めているところであり、釧路湿原で獲っているエゾシカは有効利用している。

 (委員長)
 昔と比べるとエゾシカ肉を流通させるシステムは構築されてきたと感じている。本州でもエゾシカの肉が食べられるようになった。

 (事務局)
 民間の捕獲者も含めた継続的な捕獲体制が出来ていくと、行政コストも下げられる。民間で流通させられるということも、将来的には見据えていきたい。

 (委員)
 獲ったエゾシカを流通にのせる専門の会社があると以前新聞で読んだ。

 (事務局)
 釧路管内でも専門業者があり、知床でも管内で獲ったエゾシカを流通させている会社がある。

 (委員長)
 北海道大学の卒業生も本州へエゾシカの肉を流通させる仕事をしている。植物に対する過度な影響がなくなる程度にエゾシカの個体数をコントロールできれば良い。

 

 <閉会>

 

第15回森林再生小委員会 資料

 adobe pdf 議事要旨のPDF版(PDF:413KB)

   adobe pdf 会議資料(表紙、名簿、目次)(PDF:668KB)

   adobe pdf 会議資料P1-P18(「雷別地区自然再生事業」)(PDF:2,482KB)

   adobe pdf 会議資料P19-36(「達古武地域自然再生事業(10年目の振り返りを含む)」)(PDF:3,136KB)

   adobe pdf 参考資料P37-P42(「達古武湖自然再生事業における森林に対する普及啓発について」)(PDF:1,306KB)

 adobe pdf 参考資料P43-P57(「釧路湿原国立公園達古武地区におけるエゾシカ対策について」)(PDF:2,985KB)

 

ニュースレター 

  adobe pdf ニュースレターNo.15(PDF:2,693KB)

 

お問い合わせ先

  お問い合わせ先
林野庁 北海道森林管理局 釧路湿原森林ふれあい推進センター
電話:0154-44-0533
FAX:0154-41-7305

環境省 北海道地方環境事務所 釧路自然環境事務所
電話:0154-32-7500
FAX:0154-32-7575

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