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第10回森林再生小委員会議事要旨

「第10回森林再生小委員会」が平成22年10月28日(木曜日)に釧路地方合同庁舎において開催されました。
委員会は、構成委員36名(個人8名、団体17団体、オブザーバー 4団体、関係行政機関 7機関)のうち、12名(個人 3名、団体5団体、関係行政機関 4機関)の出席により開催されました。
会議は、1.雷別地区自然再生事業の平成22年度の取組状況について、2.達古武地域自然再生事業の平成22年度の取組状況について、3.森林の再生に関する5年目の施策点検について、それぞれ協議が行われました。

会場の様子 小委員会委員長の中村北大教授 事務局から説明(林野庁) 事務局から説明(環境省)

 

雷別地区自然再生事業の実施状況について

事務局より、雷別地区自然再生事業の概要について説明が行われた後、内容について協議が行われた。

 (委員長)

雷別地区におけるセンサスの結果、エゾシカの密度が10km当たり18.7頭ということであるが、この密度に対して防鹿柵が必要ないという結論は、何か基準があって評価したのか。

 (事務局)

植裁木等に影響が出始める密度という基準に照合すると、エゾシカの密度として中密度の低いあたりである。現在、防鹿柵を設置して柵の内外の成長差を観測しているが、現時点での成長差程度であれば、直ちに防鹿柵を設置せずに被害の状況を観察していくという判断である。

 (委員長)

事業実施に伴うモニタリングの中で、2箇所の対照区が設けられているが、それぞれ何に対する対照区なのか。

 (事務局)

位置図の上の方の対照区は、地ごしらえして人工植裁をした箇所に対する対照区、下の方は地がきして天然更新させる箇所に対する対照区である。

 (委員)

地ごしらえと地がきとは何か。

 (事務局)

どちらも地表のササを除去しており、処理としてはほぼ同じであるが、その後に人工植裁をする場合は地ごしらえ、天然更新させる場合は地がきとして区別している。

 (委員長)

同じ様な作業を指しているが、ササが更新の阻害になっているので除去する為の処理で、リター層やササ層を無くするように地表を掻くだけが地がき、植裁列を作ったりもう少し丁寧に植裁する様な形が地ごしらえという。

(委員)

資料8ページの図5の2では、地がきや地ごしらえなどの5年後は、発生した稚樹の本数が大体似た様な結果になってきたということを示していると思う。最初処理しただけでは、その後リターなどが積もり、どの調査区も同じ状態になってきたのではないか。

(事務局)

地がき箇所、地ごしらえ箇所、地がきしたものを堆積させた箇所として3つの試験区を設けたが、5年目の稚樹の発生状況は3箇所とも同じ様な状況であった。

(委員)

そもそも稚樹の発生本数をどの様に計測しているかが資料からはわからない。累積だとすると、普通は地表処理をした後に実生が沢山発生して、その後はだんだん枯死したり成長したりしながら全体数が減っていく。この資料8ページの図5の2の様に、だんだん増えていく状況は理解できない。

発生した稚樹の樹種は何か。

(事務局)

本来の天然更新であれば、地がきをした翌年に多数の稚樹が発生してそれが徐々に淘汰されていくが、この試験区では翌年と翌々年位までに稚樹の発生が見られ、その後やや横ばいで推移している。本数は、調査時にあった本数である。

樹種については、ハンノキ、シラカンバ、ヤチダモ等であったと記憶している。

(委員)

本数については、当然入れ替わりがあっての数値であるということで理解した。

ハンノキ、シラカンバ、ヤチダモなどの樹種であれば、種子の散布様式が風を利用して種子が運ばれる風散布の樹種であり、集中的に多数の稚樹が発生してその後だんだん減っていくのが普通なので、この試験の結果には疑問がある。

人工植裁区、天然更新区、地がきの土をただ置いただけの試験区で同じ位の実生が発生しているということで良いか。

(事務局)

本来は何も手をつけない場所として対照区を設けるべきであったかもしれないが、この試験で設定したC区は地がきをした土とかササの根茎を堆積させた。この様な影響が調査結果に表れたと考える。

(委員)

図5の2で、発生した稚樹の平均樹高が79.9cm、44.6cm、87.4cmとあるが、地がきしてから4年目で平均樹高が80cmというのは、かなり大きいサイズであるが、実生からこのサイズになっているということか。

(事務局)

そういうことになる。従来からある天然林についても計測しているが、現地ではかなり成長が早い。ミズナラの成長はあまり良くない。

(委員長)

雷別地区では、当初から実験デザインが良くなくて、これにあまり固執していても将来的な方向として、この実験からは上手く今後の方向性が出てきそうにない。ひとまず防鹿柵を設置しなくても良さそうだということは判ったので、今実施している場所で上手くいってるかというモニタリングに集中することが良いと考える。

(委員)

資料9ページの図7で、天然林プロットでは防鹿柵内外でシカ食害の影響が認められなかったとあるが、柵内のヤチダモはシカ食害の先行性が高く、柵外の植栽木としているシラカンバとハンノキは比較的先行性がない。更に成長量に関してはシラカンバとハンノキは非常に成長が早い樹種なので、これらとヤチダモとを比較してエゾシカの影響を評価するということはよろしくない。

(事務局)

この実験区の中に天然に生えたところをプロットとして設置したという経緯があり、樹種にばらつきがある。ご指摘の内容は今後の検討の中で考えていきたい。

(委員)

シカ食害の実験区設置が2007年であり、この時すでにシラカンバやヤチダモの樹高が120cmほどなので、これは前生稚樹ではないか。

(事務局)

前生稚樹である。設置時にすでに樹高が1mほどまで成長していたものである。

(委員長)

モニタリング調査はいつから始めるのか。

(事務局)

今年プロットを設置して、データを取った。今後も継続していく予定である。

 

達古武地域自然再生事業の実施状況について

事務局より、達古武地域自然再生事業の概要について説明が行われた後、内容について協議が行われた。

 (委員)

達古武におけるカラマツの間伐試験に関して、同じ様な条件で行われる鶴居村のプラン実践事業という事業がある。最終的に天然更新に持っていくという発想と、トドマツが成林できない。集団的な保全をするということと災害にも強く、自然再生も考えるという発想が両地区に共通する部分と考えるが、委員長の意見をお聞きしたい。

 (委員長)

森林・林業再生プランという施策を知らない方も多いかと思うが、国内の木材自給率を現在の20%から10年後の50%を目標としている。全国で数カ所設定されるサイトのひとつに鶴居村が選ばれており、鶴居村ではカラマツの人工林をどういう形で管理していくかということが議論されている。

これまでは、カラマツだと40年か50年で伐採して、その後もう一度植えていくといった考え方であった。ドイツの方々が今回示されたのが、人工林を択伐林に持っていくような単木レベルのフューチャーツリーという、将来残す木を決めてそれをベースに80年、100年くらいの森の生産に持って行くという考え方である。

自然林の再生みたいな部分が釧路湿原の森林再生と似ているということが先ほどのご意見だと思う。しかし、鶴居村では生産林としてカラマツ林やトドマツ林をどう活用しながら恒続林的な思想でやっていくかという議論を行っており、達古武のカラマツ林とは、最終的に広葉樹の自然林に再生していくという点で若干違うと考える。

鶴居村で実施されつつある事業は、湿原の保全もきちんと考えて林業生産を行っていくという事業の在り方として、とても重要だと思うし再生事業の中でも是非宣伝していきたい。

達古武の実施状況について、かき起こしとササ刈りの効果はどうか。

 (事務局)

第1期施工区では、地表処理後2年間の実生の発生状況が悪い状況にあり、このままでは目標の稚樹密度に届かない状態となっている。施工区の風上の母樹林が発達していないこともあり、母樹の位置や種子生産能力が影響していると考えている。第2期施工区では、2年目となる来年度に地表処理の効果を検証していきたい。

 (委員長)

母樹の状態はかき起こしでもササ刈りでも同じであり、種子が飛んでくるのはほぼ同じと考えられる。

天然下種更新を狙う時に、実生の発生状況が悪い状態で、ササ刈りやかき起こしを続けるのかまだ決まっていないということか。

 (事務局)

来年度、母樹の条件の異なる第2期施工区の評価が出るので、それを踏まえて地表処理の試験区モデルの検証を行いたい。

 (委員長)

作業の大変さからすると、かき起こしは重機を使い、ササ刈りは人間の手でやるということで、ササ刈りの方が大変な作業である。

列状間伐や定性間伐をする時に植栽区でやろうとしているが、倒したり、集材する時に植栽木に影響を与えることがないか。

 (事務局)

今年度実施する間伐試験では、下層木となる植栽やかき起こし行った場所では行わない計画である。一箇所密度の濃い場所もあるが、昨年度植栽をしており、ここは間伐から外す予定である。

 (委員長)

巻き枯らしはカラマツでも上手くいくのか。

 (委員)

ヤツバキクイとかが出るかが心配である。十勝などでは食葉性害虫の被害があり、今年は暑かったので、釧路管内でも萎凋病が発生している。そういったものの呼び水になるか心配がある。カラマツで一番怖いのはカラマツヤツバキクイである。

 (委員長)

巻き枯らしは行う予定か。

 (事務局)

今後検討していきたいと考えている。

 (委員長)

間伐材は是非使っていただきたい。この林は丹精込めて作ってこられた林だと思うので、必ず使っていただきたい。

 (事務局)

環境省だけで使い切ることが難しい部分もあるが、少しでも有効利用が出来るように考えたい。

 (委員)

植栽に関してだが、かき起こしとササ刈りの結果がよくないとあったが、植栽したところ自体、再生できるような本数になっているのか。

 (事務局)

昨年度から植栽区域において目標とする1800本/ヘクタールという基準をもとに植えている。

 (委員)

列状間伐で1列や2列を切って植裁すると、後の上層木が下層木を痛めることも考えられるので、列状間伐のあり方も考えた方が良いかと思う。植裁も事例として試験的に密植して植えることも検討してはどうか。

 (事務局)

植裁自体はある程度散らばるような形で植えており、方法等も検討していきたい。

 (委員長)

列状で集材量を確保しておいて、その近くに植えてしまうとまた痛めてしまう心配があるので、あまり植えない方が良いと考える。天然下種更新を期待する場所で間伐でまず実験をやると、植裁が次の集材で痛むということがないので良いと思う。

  

5年目の施策の点検について

事務局より5年目の施策の点検について、雷別地区、達古武地域それぞれの事業について説明が行われた。その後委員による意見交換と検討が行われた。

(事務局)

釧路湿原自然再生協議会の全体構想の第五章に、各施策の達成状況は5年毎に点検し、10年毎に施策と評価方法を見直すとされている。次回の協議会に、5年目の施策の点検と達成状況を各小委員会でとりまとめて報告することになっている。今回の小委員会でまず各事業の実施状況等を点検評価しご意見をいただきたい。

(委員長)

そもそも5年前の全体構想に森林再生に関して何が書かれていて、この事業と何が関連しているのかチェックしていただきたい。

ひとまず今日は、実施計画が作成された雷別地区と達古武地区に関して今ある資料で議論したい。

雷別地区のモニタリング調査の部分で、修正すべき点として森林再生に伴う自然環境及び水土保全機能の変化について評価を行うとあるが、どのように行うのか。

(事務局)

実施計画の23ページに、水土保全機能について20年位の頻度で調査を行うこととしている。今後検討していきたい。

(事務局)

実施計画の8ページから9ページに記載しているが、実施計画を立てるにあたり一度評価をしており、ある程度期間が経ってから同じような手法で評価したい。

(委員長)

5年目では評価する必要がないということで、修正すべき点ではないので、書き方を修正した方が良い。

(委員)

達古武地域に関して、間伐はすでに行っているのか。間伐材を利用するアイデアは何かあるのか。

(事務局)

今年度冬季の間伐を一部試験的に予定している。間伐材の使い方として、環境省の事業として使う必要があり、環境学習の資料になるような道具を作ったり、地域の歩道整備に一部利用することを考えている。

(委員)

スライスしてディスクにして売り出すとか、このような集まりで配るなど何か面白い使い方がないか。

(委員長)

環境省の事業で使わないといけないのか。広い形で使えないか。良い木道でも何でもよいのでとにかく有効に使って欲しい。

(事務局)

国の財産であるため、寄付などは制度上難しい。

 

その他

事務局から、再生普及小委員会再生普及行動計画ワーキンググループによる森林再生小委員会の普及啓発活動について説明が行われた。その後委員による意見交換と検討が行われた。

(事務局)

今年の再生普及行動計画ワーキンググループの取り組みとして、一般市民向けに自然再生事業で今何が行われているのかということを分かり易い形で伝えていくこととした。今年度は、森林再生小委員会の取り組みをモデルケースとして普及啓発活動を行っている。

普及啓発の手段として、事業の紹介ウェブページの作成、「森林再生の今」というタイトルのブログの更新、標茶町産業まつりにおけるパネル展示、標茶町及び釧路町の広報誌への「知ってる?!釧路湿原」コーナーの掲載の4つの取り組みを行っている。

最終的には各小委員会の取り組みについて情報発信をしていきたいと考えている。この他に良いアイデアがあれば是非参考にしていきたい。

(委員長)

トキやコウノトリに関する野生復帰と自然再生の取り組みでは、人との関わりが見える再生事業ができていると感じる。トキの野生復帰に取り組む田んぼで作られたブランド米を販売し、収益の一部がまた再生事業に戻るといった、自然環境だけではなく社会経済的な歯車が上手く回るような仕組みを感じる。釧路湿原の再生事業では残念ながらそれがほとんど見えない。

実施計画にはならないが、鶴居村における森林林業再生プランの考え方が、釧路湿原を保全しながら生産行為をしていこうということであれば、釧路湿原の自然再生事業の取り組みの一つとして考えていく方が、地域に住む人達とも繋がりが持てると考える。

釧路湿原の自然再生事業の認知度が低いという原因として、日常の生活との繋がりをほとんど感じられないということがあると考える。この度の行動計画ワーキンググループによる具体的な自然再生事業の活動の普及啓発は、森林再生小委員会が初めてなので何か面白いアイデアがあったら教えていただきたい。

 

 

第10回森林再生小委員会 資料

ico_pdf12 議事要旨のPDF版(PDF:48KB)

ico_pdf12 会議資料(PDF:3,597KB)

 

ニュースレター

 ico_pdf12 ニュースレター No.10(PDF:2,322KB)

お問い合わせ先

釧路湿原森林ふれあい推進センター 
ダイヤルイン:0154-44-0533
FAX:0154-41-7305

〒085-0825 釧路市千歳町6番11号
Tel:0154-44-0533 Fax:0154-41-7305

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