平成29年度 技術開発成果発表会を開催（平成29年10月30日）

  森林・林業における研究成果を広く知っていただくため、技術開発成果発表会を森林総合研究所北海道支所・林木育種センター北海道育種場、北海道立総合研究機構森林研究本部（林業試験場・林産試験場）、森林技術・支援センターの共催で、10月30日に旭川市にある林産試験場を会場に開催しました。

  本発表会は今年で4年目を迎え、当日は林業事業体、市町村の林務担当職員、振興局森林室職員などの民有林関係者の他、国有林職員を含め約80名の参加があり、会場が一杯になるほどの盛況となりました。

  開催に当たり北海道森林管理局石原森林整備部長、会場の提供・共催としてご協力頂いた林産試験場の及川場長より挨拶があり、多くの方に来場頂いたことに対するお礼と本発表会が地域の林業・林産業など、森づくりに関し貢献出来ることを期待している旨の挨拶がありました。

  成果発表では、最初に森林総合研究所林木育種センター北海道育種場の花岡主任研究員より「ケニア共和国におけるMelia volkensii(メリア ウォルケンシイ)育種の紹介」と題して、国際協力機構(JICA)が実施した今後の気候変動に適応した林木優良品種開発に必要な育種研究能力と農民への普及システム強化を目標とした技術協力プロジェクトへ森林総合研究所林木育種センターから多くの短期専門家を派遣し、精英樹の選抜から採種園造成、検定林造成までをわずか5年で達成した林木育種の手順について、実例の紹介がありました。


花岡主任研究員

  道総研林業試験場からは今主査より「カラマツ育種種子の生産の現状と課題」と題して、林業の収益性の向上には、成長や材質が遺伝的に優れた育種種苗による造林が必要であるがカラマツでは育種種苗の普及が進んでいないことから、カラマツの球果採取の現状分析から、カラマツの育種種子の確保に向けて提言がありました。


今主査

  当森林技術・支援センターからは山嵜森林技術専門官より「北海道国有林におけるコンテナ苗の効果の検証」と題して、コンテナ苗に期待されている効果として、初期成長・活着・植栽効率がよく、いつでも植栽可能であり省力化や低コスト化、事業の平準化につながると考えられていたことから、全道各署で収集したデータ(70箇所)を基にコンテナ苗と裸苗を比較し、特にデータの多い植栽後2年時点のトドマツ・アカエゾマツの結果について発表しました。


山嵜森林技術専門官


  森林総合研究所北海道支所からは古家主任研究員より「ドローン活用による森林・林業の省力・迅速・高度化」と題して、森林は「広域に分布」「多様な林相を持つ」「アクセス困難地にも立地」などの特徴あるが、木材の安定供給に向けた持続的林業システムの構築や森林の多面的機能の高度発揮のためには、きめ細かなモニタリングが必要であることから、機動性のあるドローンの活用による森林・林業現場の作業の効率化など利用の可能性について発表がありました。


古家主任研究員

  総研林産試験場からは秋津研究主幹より「低質カンバ類の利用拡大に向けて」と題して、道産カンバ類の多くがチップ用として利用されていることから、小径木や曲がり等の欠点があるカンバ類の効率的な加工による高付加価値化のための用途・技術開発について発表がありました。


秋津研究主幹

参加者からのアンケートでは、

〇ケニアにおける早生樹の生長の早さに驚いた。北海道におけるシラカンバ、ハンノキ等の造林・育林技術に関する新たな知見・技術を期待。
〇カラマツ育種種子生産について、低コストで採種できるように採種園の改良や造成が急務であることを感じた。
〇コンテナ苗が低コスト造林に有効であることが分かった。今後も客観的な情報発信を。
〇ドローン活用による森林に関する情報収集の省力化に繋がるような手段の定着化、今後必要となる技術であることからさらなる技術開発に期待。
〇人工林の間伐の際にもともと多くのカンバ類が出てくるので、もったいないと感じていたが加工によっては高値で売れるようになることは好機ととらえた。

  などの感想を頂きました。

  今後も、森づくりに係わっている方々に対し、参考になる技術情報等について、発表会等を通じて発信して行きたいと考えています。

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