| 国際森林年を記念して平成23年11月22日、長野県小諸市の安藤百福記念 自然体験活動指導者養成センターにおいて、同センター所長の岡島成行氏と当局の城土局長が国際森林年にちなんだ対談を行いました。 |

環境ジャーナリスト、大妻女子大学教授、(公社)日本環境教育フォーラム理事長、自然体験活動推進協議会代表理事など。
1944年1月生まれ 神奈川県横浜市出身

中部森林管理局長
1956年1月生まれ 大分県中津市出身
局長
今日は、国際森林年にちなんだ中部森林管理局の取組の一環として、森林と環境保全や自然保護等との係わりについて日本環境教育フォーラム理事長であり、永年、環境記者として活躍されてきた岡島成行さんとお話をしていきたいと思います。
去年が国際生物多様性年、今年は国際森林年、そして来年は国際協同組合年となっており、国連では毎年テーマを議決して国際年というのが設けられており、特に国際森林年は1985年に続いて、初めて2回目の設定となりますが、その背景としてここ20年間で日本国土の面積の3.6倍の森林が消えており、なかなか地球規模での森林減少に歯止めがかかっていないということがあります。今から2年前の平成21年12月、菅内閣の時に森林・林業再生に向けたプランを作ったわけですが、森林・林業分野での構造改革をやって、我が国の森林資源の活用を図る必要があるということと、他方で海外から木材を輸入して、その木材が違法伐採であった場合に輸出国の環境破壊につながるのは困るということで、自給率を50%以上にするという大きな目標をたてて10年ごしに実現することとしています。
今年が国際森林年ということでこれを契機として、今後どうやって行くか考えていかなければいけないと思います。
まず、はじめに岡島さんの環境とのなれそめについてお聞きしたいと思います。
岡島
私は、横浜で生まれ育ち、町中でしたが、小さいころからトンボや蝉をとるのが好きでした。当時は、戦争による焼け野原の後で原っぱもたくさんありました。丹沢にいくと鹿がいたり、山の出来事が珍しく感じました。中学に入ってから、今は中津渓谷ダムができていますが、中津川などを友達と歩いて、キャンプをしたりしていました。中高一貫校だったので山岳部に入り、中学時代は丹沢が中心で高校に入ると奥秩父と八ヶ岳が中心になりました。夏には、北アルプスにも足を延ばしたりしていました。その流れで大学も山岳部でした。大学では、ドイツ語かフランス語を勉強すればヨーロッパアルプスに行けると思い、ドイツ語を選んだくらいです。大学では山にばかり行ったおかげで7年間も大学に通い、卒業後は読売の新聞記者になりました。就職して最初の10年近くは事件記者で、浅間山荘事件を担当したり、ロッキード事件を担当して、田中角栄元総理の取材も担当していました。
その後、当時の環境庁の担当になりましたが、環境庁の中に自然保護局があり、山が好きな人が多く、仲良くなりました。当時の鯨岡大臣も江戸っ子で山が好きでよくしてもらいました。結局20年間環境担当新聞記者をやったんですが、気がついたら、子ども達が自然に行かなくなりまして、1987年に環境教育フォーラムの前身となる清里フォーラムを開催するため、全国に手紙を出し、自然学校を作ろうと呼びかけました。
冒頭にお話したように私は、自然が小さい頃から好きだったんですが40代の頃に子ども達が自然体験をしていないのに気がついてなんとか戻さないと行けないと思い、NGOを集めだしました。
その頃、平行して注目していたのが森林問題です。1969年に新聞記者になったんですが10年くらいして日本中の森が壊れていることに気がつきました。驚いたのが北八ヶ岳の真ん中の麦草峠が大きな道路になっていてバスが通り、ハイヒールで北八ヶ岳を歩いたりしているんです。みんなが行けるようになったのは良いのですが、少し違うのではないかと感じて調べてみたら、あちこちの綺麗な自然がめちゃくちゃになっていました。ダムを造ったり、道路を造ったり、もう少し自然を大切にしたらどうかと感じました。
そのうちに、全国の国有林で森林問題より借金問題が出てきました。いい森を作るための林野庁ですが、約9万人いた職員が1万人を切るという勢いでした。
林野庁が赤字になった理由は、儲かった時に独立採算を維持する努力をしなかったことにあり、もう少し慎重にやらなければいけなかったと思いますし、世論も森林問題より借金返済に頭がいっており、林野庁は国有林の仕事を民間の森林組合に任せていくようになったんですが、材価も低迷したままで計画から生産まで一貫しなかった部分があり、なかなか赤字は減らなかったと思います。
局長
私が入庁した昭和54年頃はいろんな自然破壊の話があり、国有林の特別会計が赤字を計上するようになってきた時に、アウトソーシングを進める中で事業の担い手となるべき森林組合や林業事業体を育ててきたわけですけど、残念ながら30年近く経っても経営体質が期待通りにはなってない森林組合もあります。
我々が担い手に求めていることは、仕様書どおりにきちんと仕事をして、工程管理や安全管理もしっかりして税金を無駄使いしない担い手を作ることがメインで、場合によっては、地域の雇用につながっている土木関係者が森林の仕事に入ってきて、間伐や森林の管理等してくれても問題はないと感じています。
岡島
国有林の問題については、これまで政治が何もしなかったと感じています。
私が「林野庁解体論」という本を書いた時に総理の橋本龍太郎さんが本を読んでくれ、彼は林野庁と環境庁自然保護局と河川局の3つを統合しようとしました。
実際に林野庁と河川局との統合って話が出た時に河川局あげて、あるいはOBの代議士あげて大反対がありました。第二次橋本内閣をつくった時に佐藤孝行さんを入れて、ロッキード事件の後遺症みたいな部分で内閣がだめになって、結局、3局統合はできなかったですね。
統合ということは、環境省にとっても悩ましいと思います。自然保護をとってしまうと今度、原子力汚染対策を所掌するようになってアメリカのEPAみたいに、原子力と公害と人体に危険を及ぼす薬の管理を行う役所になって、本来の環境省ではなくなってしまいます。
私は今でも、林野庁と環境省自然保護局、国土交通省河川局と統合して、国土保全省みたいなものを作って、そこで国土保全及びレクリエーションを統括してやるのがいいと思っています。
局長
組織の統合に関しては、私自身、平成13年に文部省と科学技術庁の統合・改組を経験していて、評価はいろいろあると思いますが、文部科学省になって文教面でも科学技術面でも結果的に良い方向で施策が展開されている点もあると感じています。
岡島
環境省と林野庁はそれぞれプロパーがいますし、もちろん国交省河川局にもいます。
その意味で単純に環境省全体と一緒になるより自然保護局と一緒なって、国土保全省とした方がこうしたプロパーという人材を活かせる思います。国土の保全や災害対策がメインの大切な省庁になると考えます。
ところで、国有林の借金の現状はどうなっていますか。
局長
平成10年の国有林抜本改革に当たって、累積債務3兆8千億円のうちの2兆8千億円を一般会計に継承してもらって、残り1兆円抱えていまして、その後、借り換えしたりして、若干、膨らんで1兆3千億円くらいになっています。
昨年10月の蓮舫行革相の下での事業仕分けの結果、林野庁が国有林を一般会計の下で一元的に管理する中で1兆3千億円については、今までどおり林産物収入で返しなさいということになっています。
岡島
林野庁は、森を守るという大義があります。国有林は今、癒しの森であるし、国民にとっての大切な森になっていると思います。
基本は、国民に森を好きになってもらうのが一番大きいと思います。みんなが日常的に森にキャンプに行ったりしているアメリカでは、森林保安官に憧れる子どもが多いのです。日本でも森に対するイメージチェンジが必要だと考えます。
最近、日曜大工の仕事をやらなくなったので若い人は、何の木なのか知りません。木に触る機会を増やすために小さいころから学校で工作をやらせればいいのではないでしょうか。私たちの世代は、プラスチックの木よりヒノキが良いと感じますが、今の人たちは木の良さを肌で感じていないと思います。
国民は、「森林は誰かが管理してくれているだろう。」という感覚で、私たちが子どものころ好きだった森というイメージがありません。遠回りかもしれませんが、森の中に人を入れる工夫をした方が良いと思います。
本当は森というのは国家が管理しなければいけないし、林野庁で林学を学んで来た人たちが、借金のことばかり考えるのではなくて、もっと森のことを考えてもらいたい。その意味で森に対する国民の支援の声が足りないという気がします。
局長
私が東京の事務所長をやっていた頃の経験を申し上げると、現在、環境大臣を務めていらっしゃる細野豪志さんを地元・静岡の山にお連れして間伐の現場にいった時、細野議員から「林道は舗装されていないのか。」と尋ねられました。次代を担うとマスコミに評されている細野議員でさえ、スーパー林道のイメージがあったためなのか、林道は舗装されていると思っていました。国民と森林の距離が遠い、一つの証左だと考えます。
岡島
1つのアイデアとして、林野庁が自然学校をつくればいいと思います。機構改革で廃止になった営林署が山の中にあるので、そういうところに学校を作って運営をある程度NPOに任せる。具体的には、森林環境教育事業室として全国10ヶ所に「林野学校」とか「フォレスタースクール」等の名前を付けて、それをNPOに委託して任せて責任分担して森をよくする学校をつくればいい。
文部科学省の外郭団体が運用している「子どもゆめ基金」というのがあって、年間の予算が30億程度あるので、このうち1億を10ヶ所に1千万ずつ拠出してやってみるのも良いと思います。
局長
今、おっしゃった「子どもゆめ基金」をベースに、いろんなアイデアを出してもらい、審査をして、それに1億円を使うというやり方もあると思います。
岡島
現在の自然学校には2種類あって、ボランティアで青少年教育(ボーイスカウトやガールズスカウト)をやっている人達と、もう一つはビジネスでやってきている人達がある。ボランティアでやっている人とビジネスとしてやっている人とは全然違っていて、ビジネスの場合、マネジメントができている。
だから、林野庁の周りに集まっているボランティアは大切にしながら、自然学校を運営する時には、自然体験活動推進協議会(CONE)に加入している人たちを使うとうまくやれると思います。
森林のボランティアの人は楽しく、お役に立ちたいという人たちなので単発に終わるケースが多い。日本環境教育フォーラム等のビジネスにできるNGOの人たちにやらせた方がいいと思います。
あるところは、ボランティアで林野庁がお金を入れて継続的に活動していく、別のところは、先ほどの基金を活用して、それでもずっとではなくて期限をきってやってみてはどうですか。
そうなれば、国有林をフィールドとした自然学校連盟みたいなものができるし、その活動を通じて国民に森を好きになってもらうことが一番だと思います。
CONEに関係して自然体験活動推進議員連盟というのがあり、100名くらいの国会議員が参加しています。林野庁でも森林教育推進議員連盟等を作って、応援してくれる代議士を増やす努力をして、都市型の環境派と山の関係者とをくっつける工夫が必要だと思います。
局長
一般会計になってからの国有林への対応分野を考えた場合、一つは水の問題ともう一つが森林セラピーのような森林療法への取組があると考えています。
将来的にドイツみたいに健康保険の対象となるようになればと期待していますが、森林に入るだけでナチュラルキラー細胞が活性化されたり、血圧が安定することが分かってきており、結果として医療費が減ると思います。これからますます高齢化社会になりますが、森林療法は予防医学になると期待されています。
岡島
たしかに、これから高齢化社会で予防医学は大きな分野だと思います。うまく動き出せば病院から看護師と栄養士も同行して、夫婦で1週間滞在して食事管理の下で日常の生活をやってみる。こういう生活をすると10年長生きするとか、血圧が下がるとかやってみたら、人気が出るのではないでしょうか。夫婦セットのがいいと思います。
局長
今、長野県ではセラピードックという名称で森林療法をやっています。
岡島
森林セラピーは1週間以上にして、1週間の栄養メニューは栄養士、あと血圧測定等は医師に行ってもらう。森林セラピー基地に滞在型の施設はありますか?
局長
あるところとないところがあって、地域の民宿と契約してるところがあります。
岡島
民宿は「癒しの森の宿」とかの名前にしたほうがいいと思います。
局長
国際森林年国内委員会を長野県信濃町で開催した時に、アファン財団のニコルさんと話をする機会があり、アファンの森と我々国有林で一緒に隣接する国有林をフィールドとした様々な取組を来年から始めることにしています。
岡島
私もニコルさんのアファンの森を正当に評価すべきだと思います。日本人がアファンの森みたいなことを10人やったら、ずいぶん森はよくなります。ニコルさんは、20年かけて自分たちであれだけ綺麗な森にしたことは素晴らしいことだと思います。
局長
日本人が誰もやらない荒れた里山に手を入れたことはすごいことだと思います。
岡島
間伐をたくさんやっていたら、なぜ、林野庁は木を切るのかと言われたり、国民と、森林や林業との間に距離があると思います。その意味で人気があるので、ニコルさんに登場してもらうのは良いと思います。
第二のアファンの森を作る人はいないのかとニコルさんに訴えさせて、荒れた里山を1つ買って、アファンの森みたいなものを団体や個人でやる計画を立てて、必要な経費の半分を国が支援するといったようなシステムを作れば、大きな連携協力が出ると思います。
局長
一般会計になった場合、学校や仕事を通じて学んだ森林生態等に係るノウハウを生かすために里山再生も大きなテーマだと考えています。
岡島
里山再生は、5年計画10年計画という長期計画にして、ニコルさん辺りがテレビに出て訴えてもらうアイデアが良いのではないでしょうか。森は国家の柱だとできるだけ多くの人に分かってもらうことが大切だし、あと、森を政治の舞台で重要な位置づけにすることが必要なので、理解のある代議士を増やすことも大事だと思います。
局長
私が平成16年に宮崎県に出向していた時に全国植樹祭があって天皇・皇后両陛下を巨人軍の室内練習場になった「木(こ)の花(はな)ドーム」にご案内した時に「ここは、都市の森ですね。」と皇后陛下がおっしゃったことが印象に残っています。
岡島
天皇陛下も生物がお好きですね。林野庁が作った「緑の文化賞」と「みどりの学術賞」の表彰式があって天皇陛下のところに行ってお話を聞く機会があったけれども、森のことにとてもお詳しいのでびっくりしました。昭和天皇もお好きでしたね。
ある意味その森の中核となっている国有林の借金が3兆8千億になったことを内外に明確にすることによって、その原因が林野庁だけの責任だけじゃないことが国民の皆さんにも分かると思います。
国有林は、特別会計をやめて、借金返済の林政ではなく、攻めの林政にしたらどうか。そういう時期にきていると思います。次の50年でどういう展開をするのか、きちっとしたビジョンを示していかないといけないのではないですか。
局長
現状では木材の自給率を高めるということに重点があり、再生プランは山から木材を低コストで生産する明確な処方箋となっていますが、これからは青少年を対象とした森林環境教育や高齢者を対象とした森林セラピーを行うことも考えていく必要があると思います。
岡島
基本的な問題は、日本の森林をどうやって手入れしていくのか、その本筋をはっきりさせることが大事です。そのための方法として、森林環境教育の展開やアファンの森を手本とした里山再生などを考え、大きな流れをつかむことを考えて欲しい。今まで林野庁は借金返済に重点があって、結果として大きな流れをつかめないでいました。
局長
確かに国有林は今まで独立採算の下で借金返済や必要な事業経費の確保に必死になってきた側面はあると思います。
岡島
今こそ、30年から50年後の森をどうするのか。森林環境教育の問題、里山再生、応援団となる代議士を増やすこと等たくさんあるが、行く先をきちっとつかむことが大切です。
良い森を国内に残しておくというのは日本国民にとって大切なことで、そういうことに対しては、税金を使えばいいし、採算なんてあわなくてもいい。国家の基盤となる森のために税金を払ってもおかしくはないと思います。
これからの日本の森林の行く先を考える場合にニコルさんのような人をとか何人か集めて好きなことを言わせる場や考える会みたいのを作って、方法論等を聞いて協力してもらうことも一つのアイデアだと思います。
林野庁の中に森林ガイドはいないのですか。
局長
制度としては、森林セラピーや森林インストラクターがあります。
岡島
森林インストラクターみたいに森のことを細かく知っている人より森を楽しめるメニューを作った方がいいですね。
例えば、森の企画等は、女子大生が考えるとか、若い女性など対象者の幅を広くしたりとかいろいろ考えた方がいいし、森林レクを担当する民間団体の宣伝広報担当を民間から公募して決めるとか民間を入れることによって組織が活性化する。
長野県の森林セラピーがとてもいいと聞いているので、セラピーの実施に当たって、どんどん民間の人に入ってもらったり、東京のNPOに参加してもらって、そうした人達との接触を通じて林野庁の専門家を育て、国民と一緒になって考えることが大切ではないかと考えます。
局長
これからの国有林は、国民の皆様から税金を払っただけの仕事をしてると認められるよう、常に事業の成果を明確にしていかなければならないと考えています。
岡島
森づくりにしても、応援団づくりにしても地道の努力が必要だと思うし、そうした活動を通じて、森林をしっかりさせてほしい。日本は森林国で森は宝であり、粗末にしてはいけないと考えますので、頑張ってください。
局長
今日はお忙しい中、貴重なお話を有難うございました。
以上
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