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中部森林管理局

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    木曽式伐木運材法

    木曽の木材は安土桃山時代から江戸時代にかけて、城や寺社仏閣の建築用材として盛んに伐り出されていました。その頃から発達したのが「木曽式伐木運材法」と言われ、大正9年まで木曽谷で行われていました。
    江戸時代後期頃の木曽地方や飛騨地方で行われていた伐木や運材の技術についての絵図、「木曽式伐木運材図会」が現在、林業遺産に登録されています。「木曽式伐木運材図会」は、奥山で大木を伐採するところから、造材、搬出・集材、木曽川でのいかだによる流送、熱田白鳥木場(愛知県名古屋市)での集積、大型船による海上輸送までの様子が、絵巻物2巻(上巻10m×40cm、下巻13m×40cm)に、作業工程順に絵図と詞書で説明されています。
    「図会」の作者、製作時期、製作目的、中部森林管理局に保管されている経緯等については、それらを明らかにする文献等が見つかっておらず明確ではありませんが、岐阜県高山市で江戸時代後期に製作された絵図をオリジナルとし、林業・木材産業に関する博覧会への出展や皇族・政府高官等への説明用として、明治時代に製作されたであろうと推測されています。

    伐木作業

    伐倒

    伐倒作業は、杣仕事の中で最も危険な作業とされていました。それは、伐倒方向の不確実性や単独作業等、様々な危険と隣り合わせだからです。
    そこで先人は、「三つ紐切り」という伐倒方法を編み出しました。三つ紐伐りは、鼻緒伐りとも呼ばれ、木の幹に3方向から斧を入れ、3箇所につるを残して伐倒する方法です。この方法は伐倒方向が確実に決まるため安全で、立木が倒れるときに材への損傷が少ないことが特徴です。また、三つ紐伐りは、斧のみで立木を倒す方法で、熟練した斧を自由自在に操る技術が必要です。
    三つ紐伐りは、昭和30年代に、アメリカ製のチェンソーが導入されたことにより、次第に使われなくなりましたが、20年毎に行われる伊勢神宮の式年遷宮の行事では、現在でも「三つ紐伐り」によって御神木を伐採しています。

     
     
    伐倒作業
     
    伐倒作業風景
     
    式年遷宮

    造材

    造材作業は、枝払いと玉切りに分かれます。 伐倒後、幹から梢端部に向けて枝打ち専用の斧で枝払いをし、立木を幹だけの丸裸状態にします。
    玉切りは樹種ごとに寸法が決まっていて、竹を小割にして造った間竿によって長さを測定し、斧や鋸で切断しました。その後、楔を用いて木材を割ったり削ったりし角材や板材を造ります。また、材の前後を斧で削って丸く仕上げる頭巾巻きを行い、集材・運材による木材の割れ等を防ぎます。

     
    墨打之図(寸法取り)
     
    枝払い風景


    玉切り用鋸

    剥皮

    木曽ヒノキの樹皮は、檜皮葺で知られているように屋根にふきます。木曽では、蘭地区が檜皮葺で有名です。
    山元で木材の剥皮をする目的は、木材の滑りをよくし、運材・集材作業を楽に行うためでした。

    集材作業

    木寄せ

    木寄せ作業とは、材木を寄せ集める作業で、「ボサ抜き」と「山落とし」に分かれます。ボサ抜きは、ササや灌木、払われた枝等から材木を引っ張り出す作業で、山落としは、傾斜面を落としたり引っ張ったりする作業です。この作業は、材木が滑りやすく地表も軟らかい雨の日や雨上がりに好んで行われていました。

    修羅(しゅら)

    修羅とは、丸太を弧形に並べてその上を木材を滑らせて、後ろから壊しながら前へ前へと運んでいく装置で、ただ地表を滑らせて運ぶものは土修羅と言いました。
    「桟手(さで)」というものもあり、修羅と同様に材木を用いて流路を造り材木を下流に運ぶ装置ですが、修羅とは違い、流路となる面に板や木の枝、灌木を編んで置いたり、枝条を積み並べてその上を土砂で覆ったりしたもので傾斜が大きくなる場所に設けました。方向転換地点には木や枝、皮などを置いた「臼」を設けて、減速・転換の装置を備えていました。
    また、傾斜が急な場合は、材木が滑って転がる可能性があり、割れや折れができたり小屋をつぶす恐れもありました。そのため、危険な箇所には「留め」といい、傾斜に反対の受け装置を備えました。

     
    臼之図


    修羅

    運材作業

    小谷狩り

    「小谷(こたり)狩り」とは、木曽川本流の合流点まで、修羅や桟手を使って材木を運ぶ工程をいいます。谷に材木を組んで空いた所に木皮や草、草の根などで水を漏れないよう堰を造り、水を溜めて材木を浮かべておき、堰に連なる流導路として修羅や桟手を組み込み、水切り装置を外すと一斉に水と材木が流れ出した「鉄砲出し」が造られます。堰を外した瞬間は豪壮だったそうです。


    梁之図

    小谷狩り

    小谷狩り

    大川狩り

    木曽川本流から錦織綱場(現在、岐阜県八百津町)までの運材行程を、大川狩りといいます。川の流れを利用して材木を上手に流れに誘導する作業で、台風期が過ぎた9月以降に行われました。
    また、錦織には材木を一端止める綱場があり、その場で材木を筏に組んで1つの筏に3人乗って、名古屋にある白鳥貯木場や伊勢湾の桑名まで運んでいました。


    留綱張渡之図
    鴨桴之図

    尾州白鳥湊之図

    お問合せ先

    木曽森林管理署

    担当者:総括事務管理官
    ダイヤルイン:0264-52-2083
    FAX番号:0264-52-2582